クルーシブル | メメントCの世界

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クルーシブル The Crucible

 

ご無沙汰しております。

ただいま、「クルーシブル」状態の嶽本です。crucible って「るつぼ」と訳しますが、「試練」です。

金属を溶かすツボに入ってるのではなく、まさに試練の日々です。

SNSは不正アクセスがあったため、停止中でご心配をおかけしてます。

もうしばらくしたら、対処いたします。

 

2011年に劇団BDPで上演した「彼女たち」は、アーサー・ミラーの魔女裁判の戯曲「るつぼ」を上演しようとするミッション系女子校演劇部の物語です。今年、9月にシブgekiで再演予定です。詳細はカミングすーんです。

ちょっと前まで、改稿をしていて最初の超ストイックでピューリタン的な作品から、もう少しエンタメな味わいになります。

しかし、まあ、アーサー・ミラーってどの作品もリアリズムの極致でありながら、表現としては重層的だったり、「サラリーマンの死」なんかだと、モダンジャズのような部分もある。参りました!とひれ伏したくなるものばかりです。

 

イギリスを追われたピューリタンがメイフラワー号にのって、新大陸アメリカにやってきて、開拓を始めます。

17世紀のアメリカ、既にあちこちは、あちこちの国の植民地だったわけで、国家というより自治の町があちこちにあり、イランのように宗教戒律が法律を決めるようなかなり厳しい社会が作られ、続々と白人が入植していきました。

ネイティブアメリカンとの土地をめぐる争いは、西部劇になってるし、インディアンの襲撃だ!とか、前時代的な先住民観は、昭和な私たちにはとって苦笑いを誘います。そしてマサチューセッツはネイティブアメリカンを天然痘で滅ぼして、手に入れた土地だという逸話は有名ですね。

 ボストン近郊のセイラムという町で、魔女騒ぎがあり、百名以上の住民が魔女、もしくは悪魔の契約書に署名したという容疑で、訴追されて、縛り首になる人が続出しました。

おかしなことに、魔女だと嘘でも認めて仲間の名前を言えば、懲役刑で済むのですが、あくまで潔白だ!とえん罪を主張すると、拷問の上に、縛り首になるんです。なんか、変ですが、このパターンは今でもあります。

 

アーサーミラーは、魔女裁判の記録を丹念に読み込み、道ならぬ恋ゆえに燃え上がる少女の欲望を描きだしました。

とにかく、全く色あせない戯曲です。16,17歳の揺れ動く少女たちは、集団ヒステリーで次々と大人たちを魔女だと告発します。元はと言えば、農夫のプロクターが使用人の少女・アビゲイルと一夜の関係を結び、妻のエリザベスに感づかれて、アビゲイルが追い出されたことから、始まった復讐だったのです。プロクターにのぼせたアビゲイルは、まあ、その、エリザベスを追い出せば、自分が奥さんになれると思ったんですね。男は17世紀も21世紀も変わらないもんです。

 

アビゲイルは徹底して村人を訴追していくんですが、やはり良心の呵責などから、精神のバランスを崩します。またプロクターも罪を自覚する中で、キリスト教徒としての矜持を取り戻し、絞首刑を自ら選ぶというラストです。

最初は、魔女を捌きまくって、死刑執行命令にサインをしていた牧師も、アビゲイルの真相を知り、「命を粗末にするような信仰はいらない」と教義や信仰への疑いを持つようになるのです。

 

終盤、プロクターは、嘘をついて魔女だとみとめる宣誓供述書にサインをするのですが、やはり自分の名を汚されることに耐えられず、最後のどんでん返しで、嘘の証言を拒否して、死刑が執行されちゃうんです。

奥さんは、「裁くのはあなた自身の心の裁判官」と言っちゃうし、命乞いもしないし引き留めないんです。

ここらへんが、なまくらな日本人とピューリタンの違いの最大の閾値のように思うのです。

 

決裁文書を書き換えたり、公文書を破棄したりっていう精神風土の日本では、清教徒革命なんて絶対おきないでしょうね。正義って、怖いけど、正義が死につつある日本では、誰が正義を守るのでしょう。

 

うちわネタですが、排他的な考えをもってる私の母は、一つのおばちゃん意識調査のバロメーターです。

 ある時から民主党が大嫌いになって、自民党を応援するヘイトなバアサンとなりました。そして小池百合子がしくじった後は、ついに公明党がまっとうだという考えになったんです。そして時々訪ねてくる、清教徒のようなエホバの証人の人と、玄関先で長話をしています。父の介護でストレスがたまると、エホバの人に愚痴りまくります。忍耐強く、その話を聞いてるエホバの方、今日もご苦労様でした。世の中の人はようやく、清く正しいものを欲するようになってきたのかもしれません。

まとまらなくてすみません。どうも不調な嶽本でした。