前回、前々回と記事にした山吹橋。

 

 

2回では書ききれなかったことが多く、補遺という形で追加します。

 

 

〇山吹橋


前回以下の記事をご紹介しました。

 

北日本新聞webun

おわら名物山吹橋「残して」 老朽化 通行止めから6年余 八尾(会員限定記事)

https://webun.jp/item/7535569

 

が、会員限定のため見ることができない方もいらっしゃるかもしれません。

さすが地元新聞だけあって私が探しきれなかった情報も載っていますので

一部抜き出します。

 

橋の歴史は1880年以前から。

1914年に洪水で流出し、木造の吊橋が架けられた。←八尾四季に詠まれた橋

1950年に廃橋となった神通橋を移設。←現山吹橋

70mを超える川幅に対して旧橋は55mしかなく、

両岸にコンクリート橋が継ぎ足された。

2012年夏通行止め。

 

なるほど、長さが足りなかったので継ぎ足されていたんですね。

 

 

机上調査で旧神通橋がどこにあってなぜここに移設されることになったのかを

調べたいんですが、

時間が取れませんので保留です。

 

 

〇八尾四季のモデルについて

 

八尾四季に詠まれた橋は山吹橋ということになっていますが、

甚九郎橋(現禅寺橋)だったという異説もあります。

 

国土交通省大臣表彰 手づくり郷土賞受賞一覧

https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/tedukuri/list/1_9list/h4.html

(ふるさとの色と光に禅寺橋があります)

 

北日本新聞webun

とやまの橋 禅寺橋(富山市八尾町西町~福島) 2012年9月17日掲載(会員限定記事)

https://webun.jp/item/2003485

 

今の時点では、どちらの説が有力かは何とも言い難いです。

ほんとうなら机上調査で八尾四季ができた昭和3年当時の八尾町の橋の状況を

調べたいんですが、

時間が取れませんので異説の紹介に止めます。

 

禅寺橋

 

 

〇山吹鉱泉

 

山吹橋の袂には、大きなホテルがあります。

おわらビューホテルです。

 

おわらビューホテル | 富山県富山市八尾owaraviewHOTEL

http://owara.co.jp/

 

 

 

近くで見るとずいぶん荒れた雰囲気でしたが、

おわら風の盆および前夜祭の時期しか営業していないそうです。

 

おわら風の盆案内ブログ(トドの戯言)

http://blog.livedoor.jp/todo_04/archives/30809619.html

 

 

 

その前はおわら観光リゾートホテルという名前でしたが、

2012年に民事再生法申請、それが認められず2013年に破産

ということみたいです。

 

北日本新聞webun

負債22億円、債権者ら申し立て おわら観光リゾート破産(会員限定記事)

https://webun.jp/item/1087230

 

更にその前は、山吹鉱泉(高熊鉱泉)というお宿があったようです。

北日本新聞の山吹橋の記事では1880年開湯となっています。

その頃は山吹橋も通行量が多かったことでしょうし、

八尾四季を作った小杉放庵も山吹橋を通って入湯したかもしれません。

続八尾町史より

 

机上調査でこの辺の推移を調べたいんですが、

時間が取れませんので放置になりそうです。

 

 

〇道路構造物ジャーナルを読んで

 

これも前回以下の記事をご紹介しています。

 

民間と行政、双方の間から見えるもの | 道路構造物ジャーナルNET

https://www.kozobutsu-hozen-journal.net/series/detail.php?id=48

 

富山市建設技術管理監(執筆当時)の植野芳彦さんという方が書いておられますが、

「橋梁トリアージ」という考え方を導入しておられ、実に興味深いです。

 

現時点で54回もの連載なので私の理解をまとめてみると

・大前提として、財政的に持続可能なインフラ計画を構築する必要がある。

・この先税収減、人材減が進みもはやすべての橋の維持管理は不可能なので、

 選択と集中が必要である。

・富山市が管理する橋は約2200橋、補修が必要なのはその1割、

 富山市の予算規模では1年に10橋程度しか補修できない。

 従って、現状でも20年かかる。

 ただし、その20年の間に補修が必要な橋はどんどん増えていく。

・補修した橋もいつかは架け替えが必要となるので、

 更に費用が必要となり、いずれは財政的に破綻する。

・そうならないよう、橋の損傷状態や利用状況を勘案し、優先度を評価する。

・優先度が低く予算的に補修、架け替えができない橋は、

 通行止めや荷重制限といった予算を伴わない対策を取る。

・近隣に代替できる橋がある、あるいはコストに見合わない橋は

 撤去も含めて検討する。

といったことだと思います。

 

まっとうというか、当たり前というか、

民間人からすれば実に納得できる考え方ですが、

ずいぶん苦労されたようです。

 

私は知らなかったんですが、橋の点検は建設業者ではなく

コンサルと呼ばれる設計業者がやるんでしょうか。

その方々が現場を知らずソフトに頼り切りという苦言をたびたび呈されています。

 

更に、架かっている橋は高度成長期にコスト優先で作られていて、

富山の場合はそれに施工の問題、雪害、材料の問題等があり

補修を行ってもどの程度効果があるのかということも書いておられます。

 

あと印象的だったのは、橋に愛着を持ってもらうために

住民の方に塗装してもらう(すべてではなく一部分の塗りやすい場所)

イベントを計画したところ、

「何で、橋の塗装を自分達住民がやらなければならないのか?市役所の仕事だろう」

と言われて流れたそうです。

こういう意識のところで通行止めや撤去等サービスの低下を受け入れてもらうのは

至極たいへんなことだろうなあと思います。

 

富山市でインフラに対してこのような取り組みをしているのは

恥ずかしながら知りませんでした。

植野さんは残念ながら退任されたようですが、

今後の市の施策は注視したいと思います。

 

ニュースでも取り上げられた瓶岩橋

 

 

〇山吹橋の保存について

 

行政や政治を動かすのは住民の声です。

その声をどう作っていくのか。

ちょっと考えて見ました。

 

まず、例えば「山吹橋を守る会」のような団体を作ります。

そして、

・山吹橋は戦前の技術的な特長を備えているか

・他に移設された吊橋はないのか

といった産業遺産としての価値を、できれば専門家の方と精査します。

また、

・越中おわら節の他の唄にも詠まれているか

・小説等他の文学作品にも描かれているか

・八尾の町と橋のかかわり

等の観光資源としての価値も調べます。

 

次に、

・パンフレット等を作成する

・SNS等で発信する

・新聞等に取材してもらう

などして広く知ってもらいます。

 

また、平行して

・草刈り、バリケードの点検等を行う

・見学会を行う

・山吹橋の案内看板を作る

といった実際的な活動も行います。

 

ただ要望するだけではなく

・クラウドファンディングで例えば塗装の費用だけでも集める

 特典として床板に名前を入れる

といった、お金を集める努力もしなくてはならないです。

 

将来的には、

・現在は旧町の11だけのおわらの支部を対岸の高熊にも作りお客様を誘導する

・高熊にも駐車場を整備しおわらの際使えるようにする

というような橋の利用を促すような施策も必要です。

 

 

ただ、例えば私が守る会を立ち上げてもうまくいきません。

「よそ者が余計なことに首を突っ込んできて」と反感を買うのがオチです。

やはり、地元の八尾の方が主体的に進める必要があるでしょう。

 

現在何か活動があるのかを、インターネットで調べたり

八尾の図書館や公共施設にも出向いてみたりもしましたが

情報は得られませんでした。

 

北日本新聞webun

おわら名物山吹橋「残して」 老朽化 通行止めから6年余 八尾(会員限定記事)

https://webun.jp/item/7535569

では、地元の方2人の意見が取り上げられています。

 

一人目は、

「文化的価値がある」「なくすのは簡単だがつり橋の復活は極めて難しい」

とおっしゃっています。

二人目は、

「つり橋のある景色は貴重な観光資源」「架け替え、観光橋として利用してはどうか」

とおっしゃっています。

 

共通するのは、「つり橋」に価値を見出しておられ、

「現山吹橋」である必要はないということのように思います。

 

地元の方がこういうご意見だと山吹橋の保存はずいぶん厳しいように思いますが、

当面見守るしかなさそうです。

 

 

前編

後編

 

 

2020.6.3 単独

2020.7.13 単独