お墓の裏手に何か構造物を見つけた私。

これは山吹橋では!

 

 

ビンゴです!

しかも吊橋だったようですね。予想以上に立派な橋です。

 

 

場所はこちら。

橋は表示されていませんが、地図の中央です。

 

 

では早速見ていきましょう。

 

親柱左側 井田川

 

 

親柱右側 山吹橋

 

 

リベット打ちの趣のある主塔。

 

 

主塔には、すずらん型の優美な街灯が付いています。

 

 

スポットライトのようなものもあります。

 

 

欄干には蛍光灯?が付いていたような設備もあります。

けっこう電飾系の橋だったんでしょうか。

 

 

ちょっと潜ってみました。

主塔までは短い橋になっているようです。

 

 

対岸にやってきました。

こちら側からだとルックルックですね。すぐに場所がわかります。

わざわざ難しいほうから行ってしまいましたが、

その分驚きも大きかったので結果オーライです。

 

 

正面。

まるで邸宅の入り口のような街灯が目を引きます。

 

 

親柱左側 昭和三十年十月二十日竣功

 

 

親柱右側 やまぶきばし

 

 

街灯。

お墓側にはありませんでしたが、撤去されたのかもともとなかったのかは

確認し忘れました。

 

 

主塔。

両岸ともアンカーレッジと呼べるような構造物はなく、

主索は岸に留められていました。

 

 

こちら側にもすずらん型の街灯が付いています。

 

 

床板は全て抜けていて、骨組みが見えます。

けっこう華奢に感じます。

 

 

こちら側も、主塔までは築堤とコンクリートの橋となっています。

 

 

全景。

木々に溶け込んでいます。

でもせっかくですから橋の名にちなんで山吹色でもよかったのでは。

 

 

ちょっと河童橋っぽく撮ってみました。今回のベストショットでしょうか。

こうやってみると現役にしか見えませんね。

実に美しい橋で、堪能しました。

 

 

さて、机上調査です。

 

真っ先にヒットする以下のサイトによると、

昭和5年頃竣工、昭和30年移設、長さ78mとなっています。

(別の資料によると、もともと神通川に架かっていたそうです)

また、日本の近代土木遺産2800選、とやまの文化財百選(近代歴史遺産)

にも選ばれています。

 

富山県映像センター

https://www4.tkc.pref.toyama.jp/eizou/topics_detail.phtml?Record_ID=4a62e3261e320f95d686828c523dc4ab

 

 

土木学会では、

・現存する戦前の吊橋は数少ない

・現存するものの中で移設された吊橋は他に例がない

と評価しています。

 

土木学会

http://www.jsce.or.jp/committee/hsce/2000/list_whole%20(2000)/22_toyama.htm

 

 

更に、先ほどの富山県映像センターの記事では、

「おわら名歌にも詠まれている」と

さりげなく記載されています。

 

富山市

 

富山を代表する観光行事となった「おわら風の盆

そこで踊られる「越中おわら節」は、

大正から昭和にかけて大きく改良されています。

その嚆矢にして代表作となったのが

「八尾四季」です。

 

 

揺らぐつり橋 手に手を取りて 渡る井田川 オワラ 春の風(春)
富山あたりか あのともしびは 飛んでいきたや オワラ 灯とり虫(夏)
八尾坂道 別れてくれば 露か時雨か オワラ ハラハラと(秋)
もしや来るかと 窓押し開けて 見れば立山 オワラ 雪ばかり(冬)

 

 

短いながら情感あふれる唄ですが、

この「揺らぐつり橋」のモデルとなったのが山吹橋だったと言われています。

そのため、商工会が選定した「八尾十景」の中にも入っています。

(ただし、甚九郎橋(現禅寺橋)だったという異説もあります)

 

もちろん「八尾四季」ができたのが昭和3年、

現山吹橋ができたのが昭和30年なので、

詠まれているのは先代の橋です。

それでもモデルとなった橋が吊り橋として残っているのは大きく、

保存を求める声もあるようです。

 

北日本新聞webun

おわら名物山吹橋「残して」 老朽化 通行止めから6年余 八尾(会員限定記事)

https://webun.jp/item/7535569

 

 

ですが、富山市では、トータルコスト削減の観点から否定的なようです。

(文化財的橋梁も「ない」と言い切っています)

 

民間と行政、双方の間から見えるもの | 道路構造物ジャーナルNET

https://www.kozobutsu-hozen-journal.net/series/detail.php?id=48

 

確かに、主ケーブルの破断、断面減少という致命的な損傷なので、

修理するとすれば多額の費用が見込まれます。

ただ、保存を求める声にも配慮し

恒久的措置としては未定となっているのではないかと思われます。

 

道路メンテナンス年報(令和元年8月)より

 

ちなみに、点検実施年度は平成29年になっていますが、通行止めは平成24年からです。

 

 

橋として考えるなら、通行量も少なく廃止は妥当だと思います。

私自身、衰退していく日本において選択と集中は必須だと考えています。

 

ただし、

・日本の近代土木遺産2800選、とやまの文化財百選(近代歴史遺産)

 にも選ばれたという産業遺産としての価値

・越中おわら節を代表する「八尾四季」に詠まれ八尾十景にも選ばれている

 観光資源としての価値

という、橋以外の価値なら

廃止は再考の余地があると思います。

 

 

その判断の一助として、現役時代の山吹橋の写真を紹介します。

 

SEC'S ATELIER~北陸夜景フォトギャラリー~は、

名前のとおり富山・石川・福井の美しい夜景をたくさん紹介していらっしゃるサイトですが

その中に貴重な夜の山吹橋の写真が含まれていました。

 

 

 

 

 

 

いかがでしょうか。

もちろん廃止の可否を決めるのは富山市民ですが、

ぜひ皆さんのコメントもいただければ幸いです。

 

 

前編

補遺

 

 

 

2020.6.3 単独