【『はじめに』より引用】
この本は、よくある「経済学をわかりやすく解説した本」ではありません。むしろ、教科書的な経済学の説明から乖離したロジックで動いているらしい現代資本主義経済のカラクリを、食べものから紹介する本です。もっともらしく語られているセオリーとリアルとでは、ここがずれている(ずらされていた)のだと、現代社会のカラクリを理解してもらえることを願っています。逆に、何がどう現実とずれているのかを知った上で経済学を学ぶと、理論の目的やその使い方をより深く理解できるようになるとも思います。現実離れした経済学の勉強に嫌気が差す若者も増えているそうですから。
今、この世界は沢山の問題を抱えています。気候危機も、パンデミックも、戦争も、そして広がる格差や「生きづらさ」も、じつはすべて、人や自然を壊してでも利潤を求め続ける資本主義のカラクリとしては当然の結果という見方もあります。だったら、この資本主義のカラクリを知ることができたら、これらの問題を乗り越える方法がもっとクリアに見えてくると思いませんか?
【引用終わり】
需要と供給の法則で考える「経済モデル」と現実の世界は違う。経済学の理論と現実の違いから、食品を題材に経済を考える本。
●売って儲けるために作られた「商品」は、売らなければ儲からないカラクリのため、企業側は売り続けるための「需要」を促し消費を増やす努力が行われている。次々と新商品を開発し、「欲しい」と思わせて「需要」を掘り起こし、市場を開拓して売り続ける。
●実際にモノの価値を決めている取引市場では、需要と供給よりも、値動きで儲けようとする「投機筋」が9割方を動かしている。
●自然の恵みや生命の糧であるはずだった農業と食料システムが、今では気候変動の一大要因となり、飢餓と肥満を併存させて、人も地球も壊す存在になっている。
●現在の経済学の課題は成長よりも格差。炭素格差、食の格差、健康の格差など。
明治維新、第二次世界大戦と、日本は経済が2回リセットされていることもあり、圧倒的な貧困格差のある欧米に比べて、日本の格差は小さい。
格差を生む資本主義を批判されているが、一方の極である共産主義も、結局は党員幹部と庶民の格差を生むだけの政治システムだった。
新しいマルクス主義としてコモンズの考え方を軸に置いた政治システムが一部では議論されているが、資本主義にとってかわれるとはとても思えない。
80億人の人間を養い、地球環境を守る新しい政治システムを、我々は生み出せるのだろうか??
「食べものから学ぶ現代社会」平賀緑(岩波ジュニア新書)
【6月15日読了】
【オススメ度★★★】