⚫︎紀元前に書かれた哲学書ながら、今も読み伝えられているアリストテレスの「ニコマコス倫理学」。史上初の体系的な倫理学の書物である。
⚫︎「幸福とは何か」「どうすればそれを実現できるのか」を考える(幸福論的倫理学)。
⚫︎すべてみな何らかの善を目指している。そして、最も善きものとは幸福である。
⚫︎徳を身につけることによって、性格をよりよい方向に変容させてゆき、それによって幸福を実現する。
⚫︎アリストテレスの善には「道徳的善」「有用的善」「快楽的善」の三つの意味が含まれている。義務的倫理学者のカントはそれを批判した。
⚫︎我々の生活には、三つの類型がある。「快楽的生活」「社会的生活」「瞑想的生活」。
⚫︎徳の中で重要なものは、「賢慮(判断力)」「勇気」「節制」「正義」。
⚫︎人間の性格や人柄は、習慣の積み重ねから生じる。どのような人柄を形成すれば全体として幸福な人生を送ることが出来るかを考察する学問が倫理学。
⚫︎アリストテレスの「中庸」とは、「まあまあ」「ほどほど」ではなく、ど真ん中を射抜くこと。徳のある生き方とは、両極端にある「悪徳」の「中庸」であると考える。たとえば「勇気」という徳は、「臆病」と「向こう見ず」よ二つの悪徳の中庸。「節制」という徳は、「放漫」と「無感覚」の中庸。
⚫︎愛されるものとは、「善きもの」であるか、「快いもの」であるか、「有用なもの」であるかのいずれかである。
⚫︎友愛が成立する条件は①相手に好意を抱く、②その行為が相互的なものである、③気づかれている、の3つが揃った時である。
⚫︎嫉妬とは、他者の前を悲しむこと。
⚫︎有用性に基づいた友愛と、快楽に基づいた友愛は、「自分にとって」という自己中心的な観点があり、安定性・持続性がない。人柄の良さに基づいた友愛は、快楽も有用性も兼ね備えている。
NHK100分de名著のテキストです。
この番組では、有名な哲学書を取り上げてくれることが多いのですが、難解な哲学書を噛み砕いてわかりやすく説明してくれるので、とても有益に感じています。
アリストテレスの倫理学をざっくり言うと、『人の行動は「幸福」を目指している』ということなのですが、人生を目的主義的、達成主義的に捉えているわけではなく、むしろ善き行いを繰り返すプロセスによって善き人格を目指すといったプロセス主義的な哲学のように思います。
僕自身も、結果よりはプロセスを楽しみたい人間なので、アリストテレスの本は読みやすくわかりやすいなぁと感じました。
オススメします。
「NHK100分de名著 アリストテレス ニコマコス倫理学」山本芳久(NHK出版)
【2月2日読了】
【オススメ度★★★★】