「ヨーロッパ史入門 原形から近代への胎動」池上俊一(岩波ジュニア新書) | 乱読家ぽちんの独り言

乱読家ぽちんの独り言

乱読とまち歩き、青山繁晴さんが好きなおじさんです。
コメント、フォロー、リブログはご自由に。
ただし、議論目的のコメント、意見の違いを尊重されないコメントは公開しません。




古代からキリスト教が広まった中世、ルネサンス、宗教改革(17世紀)まで、視点をグッと引いて、ヨーグルト地域を中心に周辺地域までを視野にして、国家、宗教、文化などを考える本。


⚫︎ ヨーロッパが形を整えて広い意味での文化のまとまりを持ったのは紀元1000年代前後。


⚫︎ヨーロッパ(エウロパ)という名前はギリシャ神話に出てくるエウロペと呼ばれる王女から。雄牛に変身したゼウスは、エウロペをさらってクレタ島に連れていった。ヨーロッパとは、エウロペが、ゼウスが変身した雄牛に乗って巡った西方の地域のこと。


⚫︎ヨーロッパの歴史では太古から古代に、さまざまな「人種」や「民族」の入れ替わりがあったが、それは一種の虚構であり、主観的な、そしてしばしばなんらかのイデオロギーやナショナリズムによって人工的に構成された統計的な範疇にすぎない。生物学的上の概念ではない。


⚫︎現在ヨーロッパで使用されている諸言語の起源は印欧祖語であり、それがどんどんと分化していったもの。分化の大別として、ゲルマン語派、ロマンス語派(ラテン語)、スラブ語派に分けられる。


⚫︎印欧語族を特徴づけるギリシャ文字(アルファベット)は、紀元前2000年前後に、地中海、ヨルダン川、死海にはさまれたカナンの地、もしくは現在の中東地域で作られたものを発展させたもの。ギリシャ文字により、文学、哲学など、種々の作品がギリシャで花開き後世に伝えられるようになった。


⚫︎ローマ帝国による地中海を中心とした地域支配の方法(組織、法制度、宗教による統治)は、日本を含む世界主要国の法システムに生きている。


⚫︎ヨーロッパ人に今も残る、「ヨーロッパかそうでないか」の区別は、ギリシャ・ローマの異民族を蔑む意識が残ったもの。そして、歴史の中で、ヨーロッパ以外を「他者」と定めることで「自己(ヨーロッパ)」を規定してきた。


⚫︎ゲルマン人は、自然崇拝の多神教だったが、キリスト教を受け入れ改宗した。しかし、元々の多神教がクリスマスや魔女などに表面化した。


⚫︎ローマ帝国が滅んでも、キリスト教は残った。ヨーロッパのほとんどは農村地帯であり、キリスト教の「司教」は、農村の共同体の中心でありつづけた。特にゲルマン人の立てた小国の君主には司教が顧問のように意見・教育をしてきた。


⚫︎ヨーロッパ世界が形成された4つの要素は「ギリシャ・ローマの理知」「キリスト教の霊性」「ゲルマンの習俗」「ケルトの夢想」。紀元前6世紀まで、ヨーロッパ全土に広がっていたケルト人は、ゲルマン人やローマ人におされて、大陸からはほとんどいなくなった。しかし、ケルト人が残した宗教・文化は、いまも伝説として残っている。


⚫︎ローマ帝国が滅んだ後、ヨーロッパは「フランク王国」「西ゴート王国」「東ゴート王国(後にランゴバルド王国)の三国に支配された。東ゴート、西ゴートでは、軍事をゲルマン人、行政をローマ人と職掌を分けて、二重統治を行った。



ヨーロッパの成長と一番深く関わったのは、キリスト教だと考える。イエス・キリストの原始キリスト教から、各民族の神話を取り入れながら、キリスト教も変わり続けたようだ。

本書は俯瞰したヨーロッパ史を新書二冊にまとめたものだが、キリスト教の変遷だけをまとめた本が読みたくなった。


「ヨーロッパ史入門 原形から近代への胎動」池上俊一(岩波ジュニア新書)

【令和4年8月12日読了】

【オススメ度★★★