分子栄養学のススメ -18ページ目

分子栄養学のススメ

分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

脂質とは・・・
一般的に脂質とはグリセロール1分子に脂肪酸が3分子付いたグリセロールエステルというもののことを指します。こういった言葉は難しいので覚えなくても問題ありませんが、スーパーなどでアルファリノレン酸が含まれているとかリノール酸が含まれていると宣伝されている「〜酸」というのは脂肪酸のことになります。
前回のブログにも記載しましたが、脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。
さらに不飽和脂肪酸は一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸に分けられます。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いは二重結合の有無になりますが、二重結合とは他の分子(酸素など)と手をつなぐことができるかどうかの違いになります。
手をつなぐとはどういうことかというと、酸素とくっつきやすく、酸化されやすいということになります。
多価不飽和脂肪酸のように、二重結合が多いほど、酸化されやすい脂肪酸ということが言えます。


過酸化脂質とは・・・
脂質の二重結合が活性酸素により酸化された脂質のことです。
過酸化脂質は、日なたに置いたインスタントラーメン、古いかりんとうやポテトチップス、煮干し、冷凍マグロなどに含まれています。

イワシやマグロなど魚類にはEPAやDHAなどの不飽和脂肪酸を大量に含んでいます。
また、インスタントラーメン、かりんとう、ポテトチップスなどは不飽和脂肪酸を含む油で加工されています。

油を酸化する力は空気中の酸素にはありませんが、紫外線が当たると活性酸素に変身し、その活性酸素が不飽和脂肪酸を酸化し、過酸化脂質に変えてしまいます。


また、細胞を包んでいる生体膜はリン脂質でできています。すべてのリン脂質には不飽和脂肪酸が含まれています。
また、体内では常に活性酸素が発生しています。さらに、ストレス、薬剤、喫煙、炎症、疾患、過度の運動などでは大量の活性酸素が発生します。
この活性酸素が生体膜の不飽和脂肪酸を過酸化脂質に変えてしまいます。

過酸化脂質はなぜ身体に悪い?
血中や組織などの過酸化脂質は動脈硬化、肺疾患、消化肝疾患、心疾患、糖尿病、自己免疫疾患など様々な病気を発生させたり悪化させる要因となると言われています。


①食中毒の原因の一つになる
食品中に過酸化脂質が生じると、タンパク質中のメチオニンやリジンなどを壊すため、食品の品質が低下します。
この食品を食べた場合、過酸化脂質は胃や腸管を傷つけ、吐いたり下痢をしたりという症状を引き起こします。
食品の酸化を防止するために、多くの食品には酸化防止剤が添加されています。


②血液の粘度を高める
揚げ油を思い浮かべてもらうとよくわかると思うのですが、何度も使いまわしていると油の粘度が高くなってくる経験をされたことはないでしょうか?これは過酸化脂質同士がいくつもくっつき起こっています。
これと同じ現象が血管の中で起こると、血液の粘度が高くなり、血行障害の原因になってしまいます。


③生体膜の機能を失わせる
生体膜の機能はリン脂質で保持されていますが、リン脂質の不飽和脂肪酸が過酸化脂質になることにより、その機能が失われてしまいます。生体膜にはリン脂質だけでなく、酵素や受容体などのタンパク質が埋め込まれていますが、過酸化脂質はタンパク質にくっつきやすいため、酵素や受容体などの働きを失わせてしまいます。また、細胞を守っていたバリア機能が失われ、細胞内に様々な物質が入りやすくなってしまう可能性もあります。


過酸化脂質対策


このイラストは1987年に発行したメグビーインフォメーションに掲載していたものです。
難しい言葉がたくさん載っていますが、過酸化脂質の発生は活性酸素が引き金を引き、過酸化脂質が発生する一連の反応を表しています。
過酸化脂質は活性酸素の存在があって発生します。そのため、活性酸素対策が過酸化脂質の発生を抑えることができると考えられます。
活性酸素対策にはビタミンC、ビタミンE、カロチノイド、コエンザイムQ10、植物ポリフェノール、イチョウ緑葉フラボノイドなどの抗酸化物質の摂取がおすすめです。

また、過酸化脂質の分解はグルタチオンペルオキシダーゼという酵素によって行われます。
この酵素が働くにはセレンが必要になります。

よく使用する油に含まれる脂肪酸
一般的に使用されている油に含まれる主な脂肪酸量(%)について記載しました。
アラキジン酸、エイコセン酸、ベヘン酸などあまり聞いた事が無いと思われる脂肪酸については記載しておりません。
二重結合の数が多い脂肪酸が多く含まれる油は酸化されやすいため、熱をかけず、できるだけ早く使用する方が良いと考えられます。



-------------------------------------------------------
参考
脂肪酸組成
https://www.kaneda.co.jp/jigyou/oils_composition.html

 

 

 

 

 

トランス脂肪酸とは・・・
トランス脂肪酸は、脂質の構成成分である脂肪酸の一種です。
脂肪酸は構造の違いによって飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。
そして、不飽和脂肪酸の構造の違いによってシス型とトランス型に分けられます。
天然の不飽和脂肪酸のほとんどはシス型ですが、トランス型になっているものをトランス脂肪酸と言います。
下図ですと、H(水素)が同じ側(上)にあるものがシス型、同じ側にないものがトランス型になります。




トランス脂肪酸には、天然に食品中に含まれているものと、油脂を加工・精製する工程でできるものがあります。

天然にできるもの
牛や羊などの反芻(はんすう)動物では、胃の中の微生物の働きによって、トランス脂肪酸が作られます。そのため、牛肉や羊肉、牛乳や乳製品の中には微量のトランス脂肪酸が天然に含まれています。

油脂の加工・精製でできるもの
常温で液体の植物油や魚油から、半固体又は固体の油脂を製造する加工技術の一つに「水素添加」があります。水素を添加することで不飽和脂肪酸の二重結合の数が減り、飽和脂肪酸の割合が増えますが、これによってトランス脂肪酸ができることがあります。
部分的に水素添加して作られたマーガリン、ショートニングや、それらを原材料に使ったパン、ケーキ、ドーナツなどの洋菓子、揚げ物などに、トランス脂肪酸が含まれているものがあります。
また、植物や魚からとった油を精製する工程で、好ましくない臭いを取り除くために高温で処理することにより、油に含まれているシス型の不飽和脂肪酸からトランス脂肪酸ができることがあります。そこで、サラダ油などの精製した植物油にも、微量のトランス脂肪酸が含まれているものがあります。



トランス脂肪酸はプロスタグランジン合成を阻害する
体内ではプロスタグランジンという血圧や血液の粘度など様々な身体機能を微調整するホルモンが作られています。不足すると喘息や脳梗塞、心筋梗塞などにもつながる極めて重要な物質です。トランス脂肪酸はこのプロスタグランジンの合成を邪魔してしまうと考えられています。

脂肪酸にはヒトの体内で合成できるものとできないものがあり、合成できないものを必須脂肪酸と呼んでいます。
一般的にはリノール酸とα-リノレン酸を必須脂肪酸と呼んでいます。
必須脂肪酸は体内で合成できないため、食事から摂取しなければなりません。
体内ではリノール酸からはプロスタグランジン1と2、α-リノレン酸からはプロスタグランジン3が合成されます。

しかし、リノール酸からガンマリノレン酸への変換は、上図を見てもらうとハサミが記してあるように、トランス脂肪酸によって阻害されてしまい、プロスタグランジン1、2の材料であるジホモガンマリノレン酸やアラキドン酸が作れなくなってしまいます。
また、この変換を阻害する物質は他に飽和脂肪酸、アルコール、コレステロール、老齢、活性酸素など様々です。
さらに、α-リノレン酸はえごま油やアマニ油、しその実や大豆(少量)などに含まれていますが十分に含まれる食品が少なく、摂取量が限られてしまいます。
そのため、プロスタグランジンの合成を考えると、ジホモガンマリノレン酸、アラキドン酸、EPA(エイコサペンタエン酸)の3つを不可欠脂肪酸とし、食品から摂取することがおすすめです。


平均的な日本人より多いトランス脂肪酸摂取量を基にした諸外国の研究結果によると、トランス脂肪酸の過剰摂取により、心筋梗塞などの冠動脈疾患が増加する可能性が高いとされています。また、肥満やアレルギー性疾患についても関連が認められています。
プロスタグランジンは血小板凝集や血管の収縮に関与していますので、トランス脂肪酸によってプロスタグランジンが十分に合成できないことが原因の一つと考えられるのではないでしょうか。
このような疾患へのトランス脂肪酸の影響は化学的に製造されたものに限られるという報告もあります。


トランス脂肪酸は1日のどれくらい摂取しても良いのでしょうか?
WHO (世界保健機関)は、心血管系疾患リスクを低減し、健康を増進するための勧告(目標)基準として、トランス脂肪酸の摂取を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えるよう提示しています。
年齢や運動量などにより異なりますが、トランス脂肪酸の摂取目標は1日に約2gまでとされており、低ければ低い方が良いとされています。
諸外国に比べ、日本人の脂質摂取量が少なく、トランス脂肪酸の摂取量も総摂取エネルギーの0.44~0.47%に相当する量と推定されているため、食品などへのトランス脂肪酸の表示義務は先送りされています。
しかし、日本人の脂質摂取量はここ50年で2倍に増加しています。脂質に傾いた食生活をされている方は注意が必要です。

食品安全委員会2012年3月「食品に含まれるトランス脂肪酸:国内に流通している食品のトランス脂肪酸含有量」より

三石巌が気を付けていたこと
食事からトランス脂肪酸をすべて除去することは容易ではありません。
そこで、三石はマーガリンとショートニングを避けるようにしていました。
現在ではトランス脂肪酸の含有量を低くしたマーガリンやショートニングもありますが、原材料から見分けることは難しいと思います。
そのため、マーガリンやショートニングだけでも避けて食べるものを選んでみてはどうでしょうか。

----------------------------------------------------------
参考

 

 

 


厚生労働省 トランス脂肪酸に関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091319.html

食環境衛生研究所
https://www.shokukanken.com/column/foods/002174.html

農林水産省 トランス脂肪酸
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_kihon/trans_fat.html

 

■活性酸素とは

私達は呼吸により酸素を体内に取り込み、その酸素を使ってエネルギーを作り出していますが、その際に副産物として生まれるのが「活性酸素」です。

つまり、普通に生活をしているだけでも身体は活性酸素を作り続けています。

本来、活性酸素は、体内に侵入した細菌を攻撃するという重要な役割がありますが、体内で過剰に発生すると正常な細胞を傷つけ、肌・血管・骨・脳など体中で酸化が起こり、様々な病気や老化の引き金となります。

 

※酸化とは?
酸素が物質と結びついて起こる反応を酸化といいます。
例えば、リンゴを半分に切ってしばらく放置すると切り口が茶色に変色します。
リンゴに含まれる物質が酸素と結びついて起きる現象ですが、私達の体内でも同じようなことが起こっています。

 

■活性酸素を発生させる要因

 

■体内の抗酸化力(SOD)は加齢とともに衰える

本来、ヒトの身体には、活性酸素の攻撃から身を守る抗酸化力が備わっています。
その働きをするのがSOD(活性酸素消去酵素)とよばれる酵素です。
SODは活性酸素を酸素と過酸化水素に分解し、中和します。
そして、SODによって分解されて生じた過酸化水素は、さらにカタラーゼとグルタチオンペルオキシダーゼという体内酵素によって酸素と水に分解され、無害化されます。
つまり、体内でSODが産生されれば、細胞を若く元気な状態に保つことができますが、SODは加齢とともに産生量が低下していきます。
※詳しくは、三石巌著「医者いらず、老いしらず」をご覧ください。

 
 
 

発生した活性酸素がSODで対応できない場合、SODの働きを補う抗酸化物質(スカベンジャー:掃除屋)の摂取が重要となります。

■活性酸素を除去する「抗酸化物質」


酵素のSOD、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼの主成分はタンパク質です。
良質タンパクを摂取することは、
これらの酵素を作り出す上でもとても大切なことです。
また、尿酸は痛風の原因として知られていますが、体内では抗酸化物質(スカベンジャー)として身体を守る重要な働きを担っています。
長寿の方には、尿酸値が高い傾向があり、老化、ガン、アルツハイマーなどの予防にも役立つとも言われています。痛風の原因物質であるからといって数値だけをコントロールするのではなく、数値が高くても、結晶化を起こさないような対策が重要です。

上述のように、抗酸化物質には、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール、コエンザイムQ10などいくつか種類がありますが、身体は色々な抗酸化物質(スカベンジャー)を組み合わせて、酸化の害に対抗しています。

 

 

参考図書

 

 

活性酸素ってなあに

半田節子 著

三石理論研究所 発行