骨粗鬆症を予防するためには? | 分子栄養学のススメ

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骨粗鬆症は、骨の強度が低下することで引き起こされます。
骨の強度(骨の強さ)は、骨の量の指標となる「骨密度」と「骨質」の2つの要素によって決まります。

骨の強度に関しては、70%が骨密度、残りの30%は骨質に影響されると言われています。


まずは、骨の役割・構造・成分について確認していきましょう。

 

■骨の役割
人体には約200個以上の骨があります。
骨には「身体を支える、身体を動かす、臓器を保護する、血液をつくる、カルシウムやリンを貯蔵する」などの大切な役割があります。
この中でも、カルシウムの貯蔵庫としての役割は重要です。

◎骨はカルシウムの貯蔵庫
骨には、カルシウムの99%が蓄えられています。残りの1%が血液や筋肉などの組織に存在していますが、これらは神経の伝達や筋肉の収縮、血液の凝固などに欠かせないため、血液中のカルシウムが不足するとすぐに骨からカルシウムを溶かして供給しています。
カルシウムの摂取量が少ないと、次から次へと骨からカルシウムを血液へ補わねばならず、骨の中のカルシウムが失われてしまいます。

 

■骨の構造

 


 

骨は、強い衝撃にも耐えられるように丈夫で、軽快な動きをするために、できるだけ軽くする必要があります。
「軽くて丈夫」を実現するために、骨の外側はみっちりと詰まった硬い「緻密質」、内側はスポンジ状で内部は隙間だらけの「海綿質」で成り立っています。
また、骨の中心部の空洞は「骨髄腔」といい、ここで血液の主要な成分である赤血球、白血球、血小板がつくられます。
さらに、「緻密質」には、ハバース管があり、中を血管が通っています。
ハバース管には、骨をつくる「骨芽細胞」と骨を壊す「破骨細胞」が存在しており、骨は絶えず破壊(骨吸収)と修復(骨形成)が繰り返され、新しい骨につくりかえられています。
 

骨は古いものから新しいものへ生まれ変わる

 

 

骨が古くなり劣化すると、血液を作っている骨髄から「破骨細胞」が出てきます。
破骨細胞は、骨を酸や酵素で溶かし、溶けだしたカルシウムとリン酸を取りこみます。
これを「骨吸収」といい、約2週間かかります。
その後、「骨芽細胞」があらわれ、コラーゲンを合成してカルシウムやリンなどをくっつけて骨を作ります。これを「骨形成」といい、約3ヵ月〜4ヵ月かかります。
これらの「骨吸収」と「骨形成」により、古い骨が新しい骨に作り変えられることを「骨代謝」または「リモデリング(再構築)」といいます。
若い人では約2年、高齢者では約5年で全身の骨が新しいものに入れ替わるとされています。
健康な骨では、骨吸収と骨形成のバランスが保たれていますが、加齢とともに「骨形成」が遅れる傾向になります。
タンパク質・カルシウムの不足があれば、なおさら「骨吸収」が進み、骨形成を上回ってしまい、骨がスカスカしてもろくなります。

 

■骨の成分

骨はカルシウムを主成分とするミネラル(無機質)とタンパク質であるコラーゲン(有機質)でできています。
無機質はリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの水に溶けない「骨塩」となって骨の硬さをつくり出しています。
一方、骨は硬いだけでなく適度な弾力も必要です。その性質を受けもつのは、有機質であるコラーゲンや粘質多糖体(コンドロイチン硫酸・ヒアルロン酸)からなる「骨基質」です。
ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸などの粘質多糖体の形成には、糖、良質タンパク(アミノ酸)、ビタミンAなどが必要です。
特に、ビタミンAは、糖と糖をつなぎ合わせる働きを担っていることから、粘質多糖体を作る作業には必要不可欠な栄養素です。
また、丈夫な骨の20%ぐらいはコラーゲンでできていますが、十分な良質タンパクとビタミンCがなければ正しいらせん状にはなりません。

上述のように、骨粗鬆症は、骨の強度が低下することで引き起こされます。
骨の強度は、「骨密度」「骨質」によって決まります。
なお、骨密度検査では、骨のカルシウムなどの「骨塩量」を計測しています。
「骨塩量」を測定することで、骨粗鬆症を評価しており、骨密度検査=骨塩定量とも呼ばれています。


ただし、骨強度の維持には、骨密度だけでなく骨質も重要です。
骨の質が悪いと骨は弱くなり、たとえ骨密度が低下していなくても骨折する危険性が高まります。骨質は年齢とともに低下しますが、食事や運動不足などの生活習慣も深く関わっています。
 

骨の質を高めるとは?
タンパク質(コラーゲン)が劣化すると骨質が低下する。

 
 

骨の質に大きく関係すると考えられているのが、コラーゲンの劣化です。
骨は、コラーゲンというタンパク質が束になってコラーゲン線維となり、ビルに例えると鉄筋部分の役割をしています。

コラーゲンが柱を形成し、そのまわりにカルシウムなどのミネラルがコンクリートのようにはりついた構造をしています。
 

コラーゲン線維の質は、隣接するコラーゲン分子同士をつなぎ止める「コラーゲン架橋」の形成状態によって決まります。
※コラーゲン架橋は、鉄筋同士をつなぎ止める梁のような役割をしています。

コラーゲン架橋には「善玉架橋」「悪玉架橋」があります。
●善玉架橋
コラーゲン線維の強度を高める。

●悪玉架橋
糖化や酸化などにより形成され、コラーゲン線維を脆弱化させる。

善玉架橋は、遺伝情報に基づいて秩序を保ちながら形成されるので、過剰形成されることはありません。

 

しかし、悪玉架橋は、老化や糖尿病、腎障害などの病態に関わりのある後期反応性生成物(AGEs:エイジズ)によるAGEs架橋(※ペントシジン)によるものであり、糖化・酸化により形成され、過剰に形成される恐れがあります。
過剰に形成されたAGEs架橋は、コラーゲン線維の適度な弾力を失わせて固く脆弱化させてしまうことで、骨折のリスクが高くなってしまいます。
若い人の骨では、コラーゲン同士が規則正しく並び、それを結びつける善玉架橋によって丈夫で柔軟性のある骨折しにくい骨が作られています。
しかし、年齢とともにコラーゲンが劣化し、不規則な悪玉架橋が増えて、柔軟性が失われ、硬くて脆い骨折しやすい骨に作りかえられてしまいます。

骨密度が低いことに加えて、悪玉架橋が多く骨質が低下している人は、正常な人に比べて7.2倍も骨折しやすいと言われています。

骨粗鬆症を予防するためには、骨密度の維持と骨質の強化が重要です。
日常生活の中で気をつけるべきポイントは、栄養対策と適度な運動です。

<栄養対策>
●骨密度の維持
(良質タンパク、ビタミンA、B群、C、D、E、K、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、銅)

骨密度を左右するカルシウムなどのミネラル成分は、良質タンパクとビタミンCから作られるコラーゲンに沈着しており、さらにミネラル成分の沈着にはビタミンKの働きが必要不可欠です。
上述のように、骨は破骨細胞によって古い骨を壊し、骨芽細胞によって新しい骨を作るというサイクルで日々新しく生まれ変わっています。新しい骨を作るためには、骨細胞の細胞分裂を正常に促すビタミンAの働きが重要です。
さらに、ビタミンDは、骨代謝(カルシウムの吸収)に大きく関わっています。
また、女性の場合、年齢と共に女性ホルモンの減少が生じて、骨量の低下が起こりやすくなるため、ホルモンバランスを整えるビタミンEの摂取は重要です。

●骨質の強化(良質タンパク、ビタミンB1、B6、B12、葉酸、C、E、植物ポリフェノール)
骨質(コラーゲン線維の質)は、隣り合うコラーゲン分子同士をつなぎ止める「コラーゲン架橋」の形成状態によって決まります。
このコラーゲン架橋は、「ホモシステイン」や「ペントシジン」によって異常(弾力低下)をきたし脆弱化することで、骨質が悪化してしまいます。

血液中に「ホモシステイン」という物質が増えると、骨量が多くても骨折しやすくなるといわれています。


ホモシステインは、必須アミノ酸のひとつであるメチオニンの代謝における中間生成物で、動脈硬化の危険因子としても知られています。

(血中にホモシステインが多くなると、活性酸素の発生量が増加し、血管壁が傷ついてもろい状態になってしまいます。)
このホモシステインが骨質にも影響を与えています。


骨質(コラーゲン線維の質)は、隣り合うコラーゲン分子同士をつなぎ止める「コラーゲン架橋」の形成状態によって決まります。
ホモシステイン(活性酸素)の影響で、コラーゲン架橋の形成状態が悪くなると、コラーゲン線維の適度な弾力が失われて固く脆弱化することで、骨質が悪化してしまいます。

そこで、骨質(コラーゲン架橋の状態)を維持、向上させるには、血中のホモシステイン値を低下させるために必要なビタミンB6、ビタミンB12、葉酸の摂取不足を防ぐとともに、正常なコラーゲン生成の材料として、良質タンパク、ビタミンB群、ビタミンCなどの摂取も合わせて行うことが大切です。
また、活性酸素の除去には、ビタミンC、ビタミンE、植物ポリフェノールなども必要不可欠です。

※ペントシジンは生体内糖化反応産物の一種であり、ホモシステインにより生成が促進されることも報告されています。


運動で骨に刺激を与えて「骨を強くする」

 


骨の形成には、重力による刺激が必要です。
宇宙飛行士が1回の飛行で骨量が20%も減少するという話からも、適度な運動で骨に刺激を与えることが骨粗鬆症予防のために役立つことを示しています。


運動をすると骨の中にある「骨細胞(※1)」が骨に伝わる衝撃を感知し、「骨芽細胞」に骨を作って!という指令を出します。


しかし、骨に十分な衝撃がかからない生活を続けていると「骨細胞」は「スクレロスチン(※2)」というホルモンを分泌し「骨を作るのをやめましょう!」というメッセージを「骨芽細胞」に伝えてしまいます。


すると「骨芽細胞」の数が減り、骨の建設が滞りやがては骨粗鬆症を引き起こすと言われています。


さらに「骨芽細胞」には「オステオカルシン」というホルモンを産生する働きがあります。

 


骨は、重力に逆らう「タテ方向の刺激(負荷)」を与えることで、骨密度が高まりますので、ウォーキング、サイクリング、エアロビクス、太極拳、片足立ち、かかと落としなどが良いと言われています。
実行できそうなことをこまめに続けることで、骨の健康状態を維持することが期待できます。

※1 骨組織の細胞の90%以上を占める細胞で、骨に加わる物理的な刺激を感知して、骨の形成する「骨芽細胞」と吸収する「破骨細胞」をコントロールする役割。

※2 骨細胞から分泌されるホルモン(糖タンパク質)。骨芽細胞による骨形成を低下させると同時に破骨細胞による骨吸収を増加させることにより、骨量増加を阻害する働きがあります。

 

<参考図書>

ビタミンC健康法 (健康基本知識シリーズ2) | 三石 巌 |本 | 通販 | Amazon

 

老化と活性酸素 (健康自主管理システム3) | 三石 巌 |本 | 通販 | Amazon

 

ウルトラ図解 骨粗鬆症 (法研)