尿もれの悩みをお持ちの方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、なかなか話題にするのが難しい症状でもあります。
P&Gジャパン株式会社の2019年に行った大規模調査によると20代から60代の日本女性の2人に1人が尿もれを経験しているという結果が出ています。
加齢や妊娠・出産経験により尿もれを経験することが多いとされていましたが、この調査により尿もれは年代に関係なく誰にでも起こりうることがわかりました。
【尿もれの実態】P&Gジャパン株式会社2019年大規模調査より引用
尿もれの原因は?
(1)腹圧性尿もれ
重い荷物を持ち上げた時、走ったりジャンプをした時、咳やくしゃみをした時など、お腹に力が入った時に尿が漏れてしまうのが腹圧性尿もれです。女性の尿もれの中で最も多いといわれています。これは骨盤底筋という骨盤底の筋肉が緩むために起こり、加齢や出産を機に起こることが多いようです。荷重労働や排便時の強いいきみ、喘息なども骨盤底筋を傷める原因になるといわれています。
(2)切迫性尿もれ
急に尿がしたくなり(尿意切迫感)、我慢できずに漏れてしまうのが切迫性尿もれです。トイレが近くなったり、トイレにかけ込むようなことが起こるため、外出や乗り物に乗る時など心配される方が多いようです。本来は脳からの指令で排尿はコントロールされていますが、脳血管障害などによりそのコントロールがうまくいかなくなった時など原因が明らかなこともあります。しかし、多くの場合、特に原因がないのに膀胱が勝手に収縮してしまう過活動膀胱により、尿意切迫感や切迫性尿もれが起こるようです。男性では前立腺肥大症、女性では膀胱瘤や子宮脱などの骨盤臓器脱も切迫性尿もれの原因になります。
その他、自分で尿を出したいのに出せない、でも尿が少しずつ漏れ出てしまう溢流性(いつりゅうせい)尿もれ、排尿機能は正常にもかかわらず、身体運動機能の低下や認知症が原因でおこる機能性尿もれなどもあります。

骨盤底筋を鍛えるメリット
女性の骨盤内は骨盤底筋群(筋肉や靭帯)によって支えられていますが、出産や加齢(閉経)などの影響で骨盤底筋の筋力が低下してしまいます。
また、現在ではコロナ禍を機に男女ともに座っている時間が増え、骨盤底筋が衰えてしまっている状況もあるようです。
女性では骨盤底筋が衰えることにより、膀胱、子宮頸部、直腸、膣壁などの骨盤内臓器が下垂して膣口から脱出してしまう骨盤臓器脱という病気を患うこともあります。骨盤臓器脱は女性特有の病気であり、欧米では経腟分娩を経験した30%の女性に骨盤臓器脱が見られるとの報告もあります。
骨盤底筋の衰えが尿もれの原因の場合、鍛えることで改善が期待できます。
筋肉は加齢により衰えるのではなく、年齢に関係なく使わなければ衰えてしまいます。
骨盤底筋を鍛えることのメリットは尿もれの改善だけでなく他にもあります。
骨盤底筋を鍛えることで骨盤周りの血流が良くなり、冷え性が緩和されたり、下垂していた内臓が引き上げられポッコリお腹の改善にも期待することができます。
骨盤底筋トレーニングとは・・・
排尿を途中でやめた時のように、膣や肛門の周りの筋肉を意識的にしめたり緩めたりする地味なトレーニングです。
このトレーニングは産婦人科医ケーゲルが考案したことからケーゲル体操とも呼ばれています。
基本的には横になっているときでも座っているときでも立っているときでも行うことができますので、気が付いた時に行ってみましょう。
【骨盤底筋トレーニング】
- お腹に手を当て、身体をリラックスさせます。
- 肛門や膣をお腹側に引き上げるように6〜8秒間ギュッとしめます。お腹には力を入れないようにします。
- 筋肉を緩めリラックスします。これを5回繰り返します。
- 1〜3を1セットとして5セット行います。
イラスト:東京女子医科大学附属足立医療センター骨盤底機能再建診療部HPより
三石が行っていたアイソメトリックス※と骨盤底筋トレーニングを組み合わせてより効果的に筋肉を鍛えていくこともおすすめです。
アイソメトリックスの場合は、このトレーニングを1日おきに行います。また、鍛えたい筋肉を全力で収縮させる必要があります。
骨盤底筋トレーニングを始めたからといって、すぐに効果が表れるわけではありません。最低3か月は続けてみましょう。筋肉は使わなければ衰えてしまいますので、継続して行うことが大切です。
※アイソメトリックスとは・・・アイソは「等しい」、メトリックスは「長さ」を意味する言葉で「等尺収縮」と訳されています。等尺収縮を利用して、筋肉に負荷をかけ、筋肉の繊維を増やす方法です。
※骨盤底筋トレーニングは様々な場所でお勧めされていますが、動きは同じでも回数が異なったり、体勢が異なったりします。弊社ではアイソメトリックスと組み合わせた方法をお勧めしていますが、体調に合わせて回数や体勢は変えていただいて良いと思います。
くれぐれも無理のないように行ってください。
骨盤底筋を鍛えるときに一緒に摂りたい栄養素
骨盤底筋は筋肉ですので、筋肉づくりに必要な良質タンパク、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ミネラル(カルシウム、マグネシウム、亜鉛等)などの栄養素を不足なくお摂りいただくことが大切です。
生体のほとんどの細胞は、常につくり替えられていますが、つくり替えの材料となる栄養素がしっかりと生体内に供給できていないと、もろく弱い細胞しかつくることができません。正常なつくり替えを促すためにも、これらの栄養素の摂取は大変重要となります。
また、筋肉の収縮・弛緩という動きにはカルシウムやマグネシウムが関わりますので、良質タンパクを中心に、カルシウム、マグネシウムを2対1の比率でお摂りいただくことが大切です。
栄養素を運んでいるのは血液です。血流が滞れば強化した栄養素が各組織にしっかりと運ばれていきませんので、血流の確保も大切な対策になります。ビタミンEやイチョウ緑葉フラボノイドの摂取によって血液の正常な流れを促すことをおすすめします。
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参考
P&Gジャパン尿もれケア『ウィスパー』HP
https://www.whisper.jp/
P&Gジャパン2019.10.17プレスリリース『日本女性 20代から60代 40,000人 に聞く、UI(尿もれ)実態大規模調査』
https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M101519/201910162218/_prw_OR1fl_M399Yr44.pdf
東京女子医科大学附属足立医療センター骨盤底機能再建診療部HP
https://twmu-amc.jp/mce/prsurgery/