秋冬のコロナ大流行への対策は、まずお腹から! | 分子栄養学のススメ

分子栄養学のススメ

分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

今日は7月1日です。1年の折り返しとなる日です。

2020年上半期は、新型コロナウイルスの世界的パンデミックにより、「当たり前だったことが、当たり前ではなくなる」ことを誰もが経験しました。

感染防止のために、厚生労働省からは、手洗い、咳エチケット、3つの「密」を避けることに加え、運動不足の解消、バランスに配慮した食事、十分な睡眠で“免疫力”を高めることが推奨されました。

今後、治療薬やワクチンが完成しても、新型コロナに対する一番の武器は、私たち一人ひとりの身体に備わっている“免疫力”であることには変わりありません。

 

ウイルスは、外界と接している口腔、鼻腔、呼吸器、消化管の粘膜から侵入してきますので、これら粘膜組織には、ウイルスを排除する特殊な免疫系「粘膜リンパ組織」が備わっています。免疫力を高めるためには、これらの器官について理解を深めることが重要です。中でも“腸”は、最も重要な免疫器官です。

 

梅雨時の大雨や台風による避難所では、感染症のリスクが高まります。また、今年の秋冬は、インフルエンザと新型コロナがダブル流行するといもいわれています。

腸管免疫を強化するには、今が大切なのです。

 

●腸から生まれる免疫力

小腸には200個以上もの“パイエル板”と呼ばれるリンパ組織があることがわかっています。パイエル板には、免疫細胞(マクロファージ、T細胞、B細胞など)が集まって、生体防衛のネットワークを作っています。

パイエル板の上皮に存在するМ細胞が、病原体を捕らえてリンパ組織内に取り込むと、その情報が免疫細胞間で処理され、免疫反応がスタートします(下図)。

腸管免疫においては、粘液の働きも重要です。

粘液中に分泌されたIgA抗体(上図)は、病原体に結合して増殖を抑えたり、粘膜組織への結着を妨げて、体外へ排出させる働きをしています。

また、粘液の粘着性は、病原体の侵入に対する物理的バリアにもなっています。

粘液層には、リゾチーム、ペルオキシダーゼ、胆汁中の界面活性作用物質が混じり、抗菌作用による化学的バリアとしても機能しています。

粘液の主成分は糖タンパクです。糖鎖にウイルスが取り付くことで上皮細胞への侵入が阻止されます。ビタミンAレシチンは、この粘液による防御バリア機能を支えています。

 

●免疫組織を活性化する腸内細菌

腸管免疫と深く関わっているのが腸内細菌です。ビフィズス菌、乳酸菌など多種多様で、100種以上、約100兆個が腸内に棲みついています。腸内細菌群は、互いに拮抗したり、共存したりしながら、バランスをとって棲み分けています。その様子は、植物が群生しているお花畑(flora)のように見えることから、「腸内フローラ」とも呼ばれています。

誕生後の環境(様々な人や物との接触)で、細菌の種類や組み合わせが変化し、オリジナルの腸内フローラを作っていきます。腸内細菌は、栄養素の消化・吸収を助けたり、病原菌の感染を防いだり、免疫システムを発展させたりなどの役割を担っています。

食品成分では、特に、水溶性の食物繊維(ペクチン、グルコマンナン)難消化性オリゴ糖は、小腸で吸収されずに大腸へ移動し、腸内細菌による発酵作用で分解され、短鎖脂肪酸(酢酸、酪酸、プロピオン酸など)に変化します。

短鎖脂肪酸は、腸内PHを下げ、ビフィズス菌などの善玉菌が生育しやすく、病原菌の増殖が抑えられる環境を作ります。さらに、腸管細胞のエネルギー源となり、好中球の殺菌作用を促すなど、免疫制御に重要な役割を果たしています。

 

●腸内細菌と共生するために

外出自粛や在宅勤務による弊害として、「コロナ太り」が話題となっています。

調査機関によって差はあるものの、回答者の40~50%が体重増加を経験し、1㎏以上体重が増加した人は、約3割にも上っているとの報告があります。

夏本番に向けて、ダイエットを目指す方に注意していただきたいのが“断食”による減量です。

 

断食状態では、腸内細菌は栄養不足となり、その結果、小腸や大腸の細胞分裂が衰え、粘膜の退行がおき、大腸の機能は低下してしまいます。

 

断食が大腸に与えるデメリットについては、三石巌著『食品の正しい知識』(阿部出版)に記載がありますが、本来の働きを取り戻すためには8週間ほど要するとされています。

 

また、抗生物質を服用した場合も同様です。新型コロナウイルスの流行に関連して起こっている抗生物質の不適切な使用には、WHOも警告しています。

 

新型コロナの秋冬の大流行に備え、免疫力を強化・維持することが大切な今、極端なダイエットや安易な抗生物質の使用は、腸の働きを低下させ、腸管免疫力を下げてしまうことも、肝に銘じておく必要がありそうです。