東京都では新型コロナウイルスを乗り越えるためのロードマップが示され、少しずつですが日常が戻りつつあります。しかし、長く続いた自粛生活での閉鎖された環境、外出できないことや家庭内でのストレスなどで健康被害も出てきているようです。ストレスについては5月15日のブログ
でお伝えしましたが、今回はストレスと高血圧の関係について考えてみようと思います。
仮面高血圧とは
家庭で血圧を測っていて高い数値が出たため、病院などで測定してもらうと「正常血圧」と診断される場合があります。このような病態を「仮面高血圧」といいます。通常の診断などでは見つかりにくい高血圧症をさしています。
多いのは、仕事や人間関係でストレスが高まって高血圧となり、病院ではストレスから解放されて正常値になる「職場高血圧(「ストレス下高血圧」)」で、「仮面高血圧」の一つです。
最近では、新型コロナウイルスによる感染症の拡大に伴う自粛生活のストレスなどから、この病気になる人も急増しているそうです。
高血圧自体は自覚症状がないので油断しがちです。しかし、放っておけば動脈硬化につながり、脳梗塞などの脳血管障害、心筋梗塞などの心疾患などと結びつきます。
ストレスによる血圧上昇のメカニズム
ストレスの関連疾患には生活習慣病と重なるものが少なくありません。高血圧症もその一つです。
血圧は心臓から送り出される血液の量と血管の抵抗によって決まります。心拍出量が減少したり、外傷などで失血したりすると、血圧は下がります。一方、血管内の内径が細くなったり、血液の粘度が高くなったりすると血管抵抗が増大し、血圧は上がります。
心理ストレスの引き金となる精神的ストレッサーは「大脳辺縁系」を刺激します。大脳辺縁系は視床下部を介して延髄に作用します。延髄は血管平滑筋収縮の信号を出す自律神経中枢であり、血管平滑筋を支配する交感神経を働かせ、収縮させます。その実体は、アドレナリン、ノルアドレナリンなどの神経ホルモンの分泌です。これが血管平滑筋を収縮させ血圧が上がります。
心理ストレスによって心筋でも交感神経の活動が盛んになり、血液の拍出量が増加します。また、腎臓の動脈の細胞からレニンが分泌され、血液中のアンジオテンシノーゲンからアンジオテンシンIという物質をつくります。アンジオテンシンIはアンジオテンシン変換酵素(ACE)によりアンジオテンシンIIに変換されます。アンジオテンシンIIは全身の動脈を収縮させるとともに、副腎皮質からアルドステロンを分泌させます。アルドステロンはナトリウムを体内に溜める働きがあり、これにより循環血液量が増加し、心拍出量が増大します。
高血圧の栄養対策
血管はタンパク質でできています。弾力性に富んだ血管にし、高血圧に負けないように強化する必要があります。さらに動脈硬化対策、血液酸化対策、血圧コントロールをしていくことが重要になります。
血管をはじめ身体の機能を正常化するために、良質タンパク、ビタミンA、B群、C、E、カルシウム、マグネシウム、植物ポリフェノール、イチョウ葉フラボノイドなどの栄養素が重要です。
また、良質タンパク、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンA、ミネラル(亜鉛、セレン、鉄など)は血管の強化に必要になります。
血管の弾力を保っているのはコラーゲンとエラスチンなどのタンパク質ですが、その合成のためには良質タンパク、ビタミンC、ビタミンB6、銅が必要になります。
高血圧が続くと血管の弾力がなくなり硬くもろくなり、動脈硬化が進行していることがあります。そのため、動脈硬化対策が高血圧対策にもなります。動脈硬化予防には、良質タンパク、ビタミンC、ビタミンE、カロチン、ユビキノン、植物ポリフェノールなどの栄養素が必要になります。また、血管の内皮細胞を保護して血流をスムーズにするためにはビタミンAが必要です。
血液中に酸化した脂質(過酸化脂質)が多く存在すると、粘度が高くなり血圧にも影響します。酸化を防ぐにはビタミンE、ビタミンC、植物ポリフェノール、コエンザイムQ10などの栄養素が必要です。
血圧のコントロールにはカルシウムとマグネシウムが大切な役割を果たしています。動脈の収縮にカルシウム、弛緩にマグネシウムが関わっています。また、マグネシウムはカルシウムの2分の1以上を毎日取ることが望ましいとされています。さらにイチョウ葉フラボノイドは末梢血管の拡張に働きかけます。
ストレス対策については5月15日のブログ『コロナ鬱になる人、ならない人』の『ストレスに対抗できる条件整備』をご参照ください。
参考
megV INFORMATION Vol.278 『わかってきた血圧と病気』
三石巌著『ビタミンC健康法』