三石巌の書籍で、現在絶版して読むことができない物の中から、その内容を少しずつですが皆様にご紹介させていただきます。
ホメオスタシスとはどんなことか
われわれは、自分のからだで、体温、血圧、血中塩分濃度などの多くの因子が、ほぼ一定の値に落ちついていることを知っている。そこには、動的平衡があり、恒常性がある。ホメオスタシスの訳語としては、「恒常性」があてられている。
飛行機が水平飛行をするとき、上げ舵と下げ舵とを働かせて、高度を調節するが、これに似た働きが生体にあって、ホメオスタシスを現実するのである。血糖値を例にとれば、糖質を食ってもストレスがあっても上げ舵になる。上げ舵専門のグルカゴンというホルモンもある。そして下げ舵はインシュリン一本しかない。そこで、血糖値のホメオスタシスが、容易でないのである。生体のホメオスタシスは、自律神経によって神経的に、内分泌器官によって化学物質的に制御されて実現する。血糖値の場合は後者にあたる。ホメオスタシスは自動制御によって実現されるのであるから、標準値をはずれたことを認識する構造と、それに応答する機構とを必要とする。脳動脈の血圧は、「頚動脈洞」とよばれる血管のふくらみにある受容体によって認識され、ある幅のなかにおさめられる。
〔三石巌全業績−11 健康ものしり事典(絶版)P117より抜粋〕