三石巌の書籍で、現在絶版して読むことができない物の中から、その内容を少しずつですが皆様にご紹介させていただきます。
運動の直前に水を飲むのは悪いか
スポーツ選手の心得の一つとして、運動の直前でも、最中でも、水を飲むのはよくない、という警告のようなものがある。
運動をしようとしまいと、水を飲めば、それは腸壁から吸収されて血液にとりこまれる。その結果、血液の量は増えるかというと、そうではない。血液の量は原則として一定しているのだ。
もし、水をとりこんで血液の量が増えたら、それを循環させるための心臓の負担は、それだけ大きくなる。そんなバカげたことは、あろうはずがないのである。
大量の水を飲んだとき、血液をうすめた水は、さっそく細胞に分配される。悪くいえば、このために細胞は水ぶくれになる。
もともと、細胞は水を含んでいるが、それをやたらに水増しされては、化学反応の迷惑になるに決まっている。結局、水をガブ飲みすることは、細胞を水攻めにすることになる。
このような好ましくない事態は、現実には、水の飲みすぎのときにしかおきない。激しい運動では、汗が流れださなくても相当量の水を失うから、適度の水の補給はむしろ必要、と考えるべきである。水不足の脱水症のほうがこわいのである。
〔三石巌全業績−11 健康ものしり事典(絶版)P251より抜粋〕