良質タンパクとはいったい何のことか?それがはっきりしないと、論理がとおらないことになるんだ。
からだをつくっている材料物質は、たえずこわれて新しいものと交代する。交代のスピードは臓器によってうんとちがう。
からだをつくるタンパク質が交代するってことは、それが分解してアミノ酸になる一方、新しいアミノ酸がやってきて、設計図にしたがって、あとがまのタンパク質になるってことだ。
そのアミノ酸に目印があるわけじゃないから、新しいものも古いのもごっちゃになってブラウン運動をしているわけだ。結局、あとがまにすわったタンパク質も、中身をみれば、古いアミノ酸がまじっていることになるんだな。
そこで、古いアミノ酸と新しいアミノ酸と、ちがいはないのかって問題がでてくる。
からだをつくっているアミノ酸、つまり古いアミノ酸は『修飾』されていることがある。いろいろな原子団やミネラルのくっついたやつがある。それがリサイクルされて、新しくつくられるタンパク質にもぐりこむことがあるってのが、ボクの考えなんだよ。
それでわかった!『修飾されたアミノ酸をふくませないタンパク質のことを良質タンパクっていうんだろう。』これはキミの代弁のつもりだよ。
それにボクはこたえる。『それも一つの条件だ』とね。良質タンパクの条件はもう一つあるんだ。
古いアミノ酸は毎日トイレおくりになっている。尿素や尿酸の形になれば、どのアミノ酸もおんなじだが、そのまえのアミノ酸の比率が目のつけどころさ。このアミノ酸のうち問題になるのは、八種類の必須アミノ酸だ。その比率が、人間が要求するアミノ酸の比率とぴったり適合したものを『プロテインスコア100』という。
プロテインスコアはタンパク質の良質度を表すもののひとつだ。ひろく使われているアミノ酸スコアだと、百点満点の牛肉も、プロテインスコアだと90にも届かない。厳しい条件なんだ。
ボクはなんでも食う。それも腹いっぱいつめこむのが普通だ。好物は汁粉やビフテキ、ローストビーフ、てんぷらにすし。野菜は好きじゃない。
プロテインスコア100のものはなかなかない。だからボクは、そのタンパク質をつくって使っている。
本原稿は、1994年12月2日に産経新聞に連載された、三石巌が書き下ろした文章です。