ここまできたら、この連載のタイトル『どうぞ、お先に』の意味がはっきりしたんじゃないかな。寿命をちぢめる犯人がうきぼりにされたんだから。そいつをやっつけるスカベンジャーの紹介もすんだじゃないか。
スポーツがからだにわるいっていう話があるけれど、それもからんでくるんだ。ジョギングを考え出して本をかいたフィックス先生(米国人)も、老年学のオーソリティーだった金子仁先生もジョギング中に死んでいる。医者はしきりに、ジョギングのまえにはドクターチェックをやれといっていたが、このごろはそれもいわなくなった。ホントのことがわかったからだろう。
ジョギングにはエネルギーがいる。エネルギーをつくるのには酸素がいる。その酸素の二%ほどが活性酸素になるんだな。酸素をたくさんとりいれるエアロビクスっていう体操があるだろう。あれはわざわざ活性酸素をふやす方法なんだ。若いものむきってことだ。
あたりまえのことだが、われわれのからだはスカベンジャーを用意している。野菜を食わなくてもだいじょうぶなんだ。だがそれは若いうちの話だ。四十をすぎたらその量がへってくる。これはふつうのドクターチェックじゃわからない。金子先生は六十をこしていたし、フィックス先生は五十をこしていた。これじゃ活性酸素にやられてもおかしくないんだな。
そんなわけで、活性酸素はエネルギーづくりにともなって発生する。
それだけじゃない。ストレスがあると活性酸素がでてくる。なぜでてくるかっていえば、ストレスにまけないために、からだは抗ストレスホルモンをつくる。このとき活性酸素が発生するんだな。抗ストレスホルモンは、れいのステロイドホルモンだ。これが分解するときにも活性酸素はでてくる。
心配ごとがつづくと体調がくずれるだろう。これはしょっちゅうステロイドホルモンをつくったりこわしたりしているから活性酸素がたえずでてくるからさ。これじゃかなわないよ。
若いときならまだいいさ。中年すぎたらスカベンジャーが不足だからたまらないよ。
尿酸ってものがあるだろう。血液検査でこれのことを医者になんとかいわれることがある。尿酸値がたかいと痛風になるばあいもあり、ならないばあいもある。ところが、これがスカベンジャーなんだ。もうれつ社員には尿酸値のたかいのがおおいっていうんだよ。
本原稿は、1994年7月1日に産経新聞に連載された、三石巌が書き下ろした文章です。