やさいといってもいいが、植物ってものがスカベンジャー(成人病や老化の元凶とされる活性酸素をしまつしてくれる物質の総称)をいろいろもっていることを、キミはどう思う。紫外線のことはとっくに書いたが、この問題はそれだけじゃかたづかないはずだ。
だけど、ヒントはもうだしてある。ベータカロチンが油のなかの活性酸素にたいしてスカベンジャーになっていることだ。
活性酸素は水のなかにもあるばあいもある。ミルクのような水と油のまじった乳化液にあるばあいもある。それに、活性酸素ってやつは種類がいくつもあるんだ。おもなものは四種類だがね。
どんな活性酸素がどんな環境にあるかで、スカベンジャーはきまってくる。手ごわいばあいには、いく種類かのスカベンジャーがチームを組んでリレー式にはたらくことがあるだろう。といってもこれはボクの意見じゃない。宮尾興平(聖マリアンナ医科大非常勤講師)っていうえらい人の意見だ。
こうなると、それぞれの植物が、フラボノイドだの、カロチノイドだの、ポリフェノールだの、ビタミンCだの、ビタミンEだのと何十種類ものスカベンジャーをもっている理由がわかるってもんだ。人間さまはそれをごっそりもらって使っているってことさ。これはボクのことだがね。
ここでカロチノイドってことばをだしたから、ちょっと説明しておこう。これはカロチンのなかまの意味だ。カロチンにはアルファカロチン、ベータカロチン、ガンマカロチンの三つの種類がある。どれも体内でビタミンAに変わることができる。それをいちばんらくらくやってのけるのがベータカロチンなんだ。それでとくにもてはやされるってわけさ。スカベンジャーとしてのはたらきはアルファやガンマのほうがつよいって話だ。ニンジンよりミカンのほうがつよいってことさ。
まえにキサントフィルっていうスカベンジャーを紹介しておいた。これもカロチノイドのなかまにはいる。卵のきみの色、サケの卵や肉の色、これはキサントフィルの色だ。さかなは白身より赤身のほうがいいわけだ。
キミはヒトの寿命がほかの動物よりながいってことを知っているだろう。これは、ほかの動物がカロチノイドをすっかりビタミンAに変えちまうからなんだ。スカベンジャーとしてカロチノイドを使わないのがまずいんだな。寿命をちぢめる犯人は活性酸素なんだからな。ここにはボクの意見がはいっている。
ビタミンAもスカベンジャーだけれど、はたらきかける相手の種類がかぎられている。
本原稿は、1994年6月24日に産経新聞に連載された、三石巌が書き下ろした文章です。