このまえ尿酸の話がでた。このことばをきくと痛風もちはギクッとくるだろう。なんにも知らない人間は馬耳東風だ。知識がなければウマとはちがわないってことさ。のんきなもんだ。
だが、尿酸がスカベンジャー(成人病や老化の元凶とされる活性酸素をしまつしてくれる物質の総称)だときいていたら反応はちがってくるだろう。『知は力なり』っていった人物がいる。ピンとくることばだな。日本人の頭の産物じゃないが・・・。
活性酸素っていう電子ドロボーが体内に出張しているな。尿酸はそれに引導をわたす。
食物には添加物とか農薬とか、きらわれるものがまじっている。これは肝臓あたりでしまつされるわけだ。活性酸素はこのときにもでてくる。添加物や農薬がこわがられるのはこのためなんだ。だからスカベンジャーの用意があれば何ということもないりくつだろう。
ボクは自然食だの無農薬やさいだのにぜんぜん興味がない。そのかわり尿酸みたいなものに興味がある。情報が多いってことだ。
ついでに情報をもう一つ。尿酸値がたかくてもビタミンAがあれば、痛風はおきにくい。
活性酸素とかスカベンジャーとか、なじみないことばの一斉射撃でへこたれるようじゃダメだよ。情報は欲ばらなくちゃいかん。
からだがじぶんでつくるスカベンジャーのあることがわかったな。その例が尿酸だ。
あたりまえなんだが、自前のスカベンジャーは尿酸だけじゃない。SOD(スーパーオキシドジスムターゼ)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどだ。SODには銅、亜鉛、マンガンがふくまれている。カタラーゼには鉄がいる。グルタチオンペルオキシダーゼときたら、セレン(硫黄鉱などに少量ふくまれている)がいる。
ミネラルぬきのスカベンジャーもある。グルタチオンだ。
銅や亜鉛や鉄はとりやすいミネラルだ。やっかいなのはセレンだ。ゴマやネギ類にあるんだが、酸性雨にふくまれるイオウがセレンと拮抗(きっこう)する。セレンの吸収をじゃまするってわけさ。
こまったことに、セレンは食品に入れることが許可されていない。ウシなどの家畜のえさに混入するのは認められているのにだ。役所の見解をききたいもんだ。
活性酸素の話のはじめに十七個の電子をもつ酸素分子のことがあっただろう。呼吸でとりこむ酸素の二%が活性酸素になるって話もあったはずだ。その活性酸素はこのタイプのものなんだ。これの電子ドロボーとしての腕なみは中ぐらいってとこだな。
本原稿は、1994年7月8日に産経新聞に連載された、三石巌が書き下ろした文章です。