スカベンジャー(老化や成人病の元凶とされる活性酸素をしまつしてくれる“掃除屋”の総称)のありがたみが、そろそろわかってきたかな。
ものごとをちゃんと考えようとおもったら、かたくるしいことばを使わないといけないってこと、わかってもらえるかな。活性酸素とか、キサントフィル(カロチンなどと同じ色素物質のひとつ)とかのことばは学術用語ってもんだ。これをつかわないと、科学のはなしはできない。なにがなにして、なんてことじゃ科学の話ははじまらないんだな。
用語を毛ぎらいしたらボクの文は読めない。かくごはよいかな。
まず、活性酸素のスカベンジャーがほしくなったら何を食ったらいいかって話をしよう。
この連載を読んでくれているキミはもう、植物がスカベンジャーをふんだんにもっていることを知っている。菜食のメリットはそこにあるんだ、とボクがいうかと思っているんじゃないかな。ことわっておくが、ボクは野菜をすきじゃない。サラダは、ひとにおしつけちゃうほうなんだ。
先々週、フラボノイドって用語がでてきた。これは草や木のもっている色素で、三千種ぐらいもみつかっている。葉っぱに多いが、ほかの部分にもあるんだ。ホウレンソウにもサラダ菜にもたっぷり、ふくまれている。
それじゃやっぱり野菜サラダを食えばいいじゃないかって、キミは思ったろう。そりゃ、たしかにフラボノイドは口から入れば腸へいく。だが行き先はトイレだ。なぜかって、分子が大きすぎて腸の壁を通りぬけられないだな。
ああそれでわかった、ベータカロチンがいいっていうのは、腸の壁を通りぬけるからだ、ってキミはいうだろう。キミはそれだけ知識が増えたってことだな。
ちょっといっておくが、カロチンは油のなかの活性酸素のスカベンジャーだし、フラボノイドは水のなかの活性酸素のスカベンジャーだ。ビタミンEは油、ビタミンCは水ってところは、これによく似ている。もののわかった人間なら両てんびんを考える。
ところで、先週ちょっと触れた例の、ボクがやっているスカベンジャーは何かって、ききだしたいんじゃないかな。トップにくるのはフラボノイドだ。ただし、それの分子を小さくしたやつだ。低分子化したやつだ。
続きは来週に。
本原稿は、1994年6月10日に産経新聞に連載された、三石巌が書き下ろした文章です。