9 主役はビタミンC 〜進化の過程で生成やめる〜 | 分子栄養学のススメ

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分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

 そろそろボクの話に飽きてきたかな。九十二歳でスキーに出かけたりしている暮らしぶりをの方を早く書いて、なんていう読者の声が、産経新聞のデスクに届いているそうだね。

 だがね、物には順序がある。長生きの秘けつを説明している最中なんだから、もう少し待ってほしいんだ。

 さて、ビタミンの話がだいぶでてきたが、ボクはメガ(大量)ビタミン主義者なんだから、これはあたりまえだ。ここまでのところビタミンの主役はCだった。ビタミンはいろいろだが主役はCだ。

 それには理由がある。ビタミンCは動物が生きていくうえでぜったいに必要な物質だ。だから、もともとはすべての動物がこれをじぶんでつくっているんだな。

 ヒトの祖先はサルだ。サルの祖先はネコみたいな動物だ。ネコが進化してサルになるとき大事件がおきた。ビタミンC をつくるのをやめちゃったんだ。これは脳を発達させるためじゃなかったかって説がある。

 脳の栄養はブドウ糖だけなんだし、ビタミンCの原料もブドウ糖なんだから、こんなことを考える人間がいたっておかしくないんだな。

 ところでキミは、「個体発生は系統発生をくりかえす」っていうことばをきいたことがあるだろう。これをいったのはヘッケルじゃなかったかな。十九世紀のドイツ人だ。

 胎盤は母親のおなかのなかのたった一個の受精卵からそだつもんだ。受精卵は水のなかで呼吸している。しっぽがはえている。まるでサカナだ。これがだんだん人間の形になって、とうとうオギャアとなる。個体発生ってことばは、このプロセスにつけられたものなんだ。ひとつの受精卵が一人前のからだのなるまでのプロセスを「発生」っていうんだ。

 それじゃ「系統発生」とはなんのことか。

 それは進化のプロセスのことなんだな。人間はセキツイ動物ってことになっている。セキツイ動物の祖先はサカナだ。それが陸にあがって四つ足であるいて空気を呼吸するようになった。それからたちあがって人間になった。このプロセスが系統発生ってことになるんだな。

 どうだ。ヘッケルのことばの意味がわかったんじゃないかな。かれはじぶんの頭からこのアイデアをひねりだしたんだよ。

 さて、ボクが個体発生は系統発生をくりかえすなんてカビのはえたことばをひきずりだしたのには、わけがあるんだ。

 オギャアとうまれでた赤ん坊は自分でビタミンCをつくっている。だからおっぱいにビタミンCがなくてもだいじょうぶ。それがいいたかったんだよ。うまれてから十ヵ月ぐらいはそうだってことだ。

 

 

本原稿は、1994年3月4日に産経新聞に連載された、三石巌が書き下ろした文章です。