■全身をつながりで捉える栄養対策とは・・・
【圧迫骨折に対する栄養対策】
圧迫骨折の場合、骨粗鬆症により骨の強度(骨量・骨質)が弱くなってきていることが大きな原因として考えられます。特に女性の場合、年齢と共に女性ホルモンの減少が生じて、骨量の低下が起こりやすくなります。
(1)骨の強度を向上させる(骨粗鬆症への対策)
骨は、コラーゲンにカルシウムやリン酸化合物、マグネシウムなどのミネラル成分が沈着することで強度が保たれています。これを建物に例えると、コラーゲンは鉄筋部分に、ミネラル成分がコンクリートにあたります。このコラーゲンの状態が「骨質」と呼ばれ、ミネラル成分の含有率が「骨密度」になります。
骨の強度を上げていく為には、「骨密度」と「骨質」を向上させていくことが大切です。
●骨量(骨密度)を上げる
骨折した部分の改善と今後の骨折予防の為には、骨の材料に不足を起こさないことが重要です。良質タンパク、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ミネラル(カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄など)の栄養素は、骨を作る材料でもあり、その代謝に関わる酵素や補酵素、ホルモンの材料にもなります。
コラーゲンにミネラル成分を沈着させる為にはビタミンKとミネラル(カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄など)が必要になります。
骨は破骨細胞によって古い骨を壊し、骨芽細胞によって新しい骨を作るというサイクルで日々新しく生まれ変わっています。新しい骨を作るためには、骨細胞の細胞分裂を正常に促すビタミンAの働きが重要になります。ビタミンDは、骨代謝(カルシウムの吸収)に大きく関わっています。
ビタミンEは、ホルモンバランスを整えていく働きがあります。年齢と共に女性ホルモンの分泌量が減少して、骨量低下のリスクが高まる女性には特に必要な栄養素です。
●骨質の向上
血液中に「ホモシステイン」という物質が増えると、骨量が多くても骨折しやすくなることが分かってきました。
ホモシステインは、必須アミノ酸のひとつであるメチオニンの代謝における中間生成物で、動脈硬化の危険因子としても知られています。
(血中にホモシステインが多い状態だと活性酸素の発生量が増加し、血管壁が傷ついて固くもろい状態になってしまいます。)
このホモシステインが骨質にも影響を与えているということなのです。骨質(コラーゲン線維の質)は、隣り合うコラーゲン分子同士をつなぎ止める“コラーゲン架橋”の形成状態によって決まります。
ホモシステイン(活性酸素)の影響で、コラーゲン架橋の形成状態が悪くなると、コラーゲン線維の適度な弾力が失われて固く脆弱化することで、骨質が悪化してしまいます。
骨質(コラーゲン架橋の状態)を維持、向上させるには、血中のホモシステイン値を低下させるために必要なビタミンB6、ビタミンB12、葉酸の摂取不足を防ぐとともに、正常なコラーゲン生成の材料として、良質タンパク、ビタミンB群、ビタミンCなどの摂取も合わせて行うことが大切です。
●血流の改善
骨の細胞も血液から酸素や栄養を受け取って生きています。そのため、血液の供給がなくなると、これらの細胞は弱くなったり死んでしまいます。
そこで、血流の確保のために、ビタミンEやイチョウ緑葉フラボノイドなどの成分も強化されることが大切になります。
●睡眠の充実
全身の細胞が新しく作り変えられるためには、成長ホルモンの分泌が必要になります。
成長ホルモンは深い睡眠中に分泌量が増加するので、体や骨を作る材料(栄養素)を不足なく摂取しながら、十分な睡眠をとることも重要になります。
つづく・・・