今日は、多摩地域の救命率を高めるための、大切な一歩となる一日でした。
先月、私自身がたいへんお世話になった、都立多摩総合医療センター。
その救命救急センター長の清水先生と堀越先生に国立市役所までお越しいただき、市の部課長のみなさんと一緒に、救命救急の現状と課題についてお話を伺いました。

最初に教えていただいたのは、心停止となった方に対して、救急隊が到着するまでに一般市民が心肺蘇生を行うことの重要性です。
日本でも、心停止の現場に居合わせた一般市民による心肺蘇生は、かなり普及してきています。
それでも、欧米の先進的な地域と比較すると、まだまだ改善の余地があるのだそうです。(欧米では80~90%の心肺蘇生実施率)
そして、何より驚いたのは…
その場に居合わせた人が心肺蘇生を行ったかどうかで、命が助かる可能性だけでなく、その後の社会復帰にも大きな違いが生まれるということ。
消防庁の令和6年の統計では、一般市民が心停止を目撃した心原性の症例について、応急手当が行われた場合の1か月後の社会復帰率は10.4%。
行われなかった場合の3.7%と比べると、約2.8倍にもなるのです。
救急車が到着するまでの、わずか数分間。
その時間に、周囲の人が何をするかで、その後の人生が変わってしまうかもしれないのです。
特に重要なのが、CPRと呼ばれる心肺蘇生。
なかでも「胸骨圧迫」は、特別な医療機器がなくても、私たち市民が行うことのできる救命処置です。
ところが…
いざ目の前で人が倒れたら、何をすればよいのか分からない。
「間違ったことをしてしまったらどうしよう」
そんな不安から、行動できない人も少なくないのではないでしょうか。
そして、もうひとつ驚いたことがありました。
それは、東京都における心停止後の社会復帰率の低さです。
総務省消防庁の「令和7年版 救急・救助の現況」をもとに先生方からご紹介いただいた数字では、全国平均が22.1%なのに対し、東京都は16.1%。
なんと、全国平均を6ポイントも下回っているのです。
しかも、数年前までは全国ワーストワンだったとのこと。
現在は少し改善しているようですが、それでも全国で下位に位置しているというお話でした。
高度な医療機関が数多く集まる東京で、なぜこのような結果になっているのでしょうか。
もちろん、社会復帰率にはさまざまな要因が関係しているため、この数字だけで救急医療の水準を判断することはできません。
ただ、どれほど医療体制が整っていても、救急隊が到着するまでの時間を取り戻すことはできません。
だからこそ、その場に居合わせた市民が行動できるかどうかが、とても重要になるのです。
この現状を少しでも改善しようと、多摩地域の先生方が立ち上げたのが「TAMARISE」です。

都立多摩総合医療センターが主導し、日本医科大学多摩永山病院や国士舘大学などの先生方が中心となって発足したプロジェクトです。
救命の可能性を高めるためには、質の高い心肺蘇生や迅速な救急処置、医療機関同士の連携だけではなく、救命活動のデータを検証し、現場での改善につなげていく仕組みも必要です。
そして、もうひとつ。
救急車が到着するまでの時間を、地域の人たちが支えられるようにすること。
これが、TAMARISEの大きな目標なのです。
教えていただいたのは、命を救うための「4つの行動」
① 反応と呼吸を確認する
② 119番に通報し、AEDを依頼する
③ 胸骨圧迫を開始する
④ AEDが届いたら、音声指示に従って使用する
※実際には、反応がなければ直ちに119番通報とAEDの手配を行い、呼吸がない、または普段どおりの呼吸でない場合は胸骨圧迫を開始します。
大切なのは、知識を持っていることだけではありません。
先生方がおっしゃっていたのは…
「講習を受けた人」よりも、「現場で行動できる人」を増やしたい
ということでした。
国立市でも、防災訓練や消防団の研修などで、心肺蘇生を学ぶ機会は設けられています。
ただ、そうした機会に参加するのは、もともと防災や救命救急に関心のある方が中心になりがちです。
本当に必要なのは、これまで関心のなかった人にも「自分にもできることがある」と知ってもらうこと。
消防庁でも、一般市民向けの心肺蘇生の動画などを公開しています。
もちろん、正しい知識を丁寧に学ぶことは大切ですが…
最も重要な「胸骨圧迫」にたどり着くまでに、少し時間が掛かってしまうのが気になるところ(^^;
もっと短く、もっと分かりやすく…
そして、思わず自分もやってみたくなるような工夫が必要なのかもしれません。
今日の面談には、国立市から健康福祉部、地域包括、健康まちづくり戦略室、防災安全課などの部課長のみなさんにも参加していただきました。

先生方のお話を伺いながら、それぞれの部署でどんな取り組みができるのか、意見交換を行いました。
例えば…
来年の防災訓練にドクターカーをお招きして、子どもたちにも救命救急の大切さを知ってもらう。

あるいは、昨年も参加していただいた「くにたち秋の市民まつり」で、さらに多くの市民に心肺蘇生を体験してもらう。
学校や地域のイベントなど、日常のさまざまな場面に救命を学ぶ機会を広げることもできそうです。
今日の面談をきっかけに、それぞれの部署で具体的な可能性を考えていただくことになりました。
そして、今日の面談で、私の心に最も強く残った言葉があります。
「誰かが助ける」から、「誰もが助けられる」街へ
この言葉には、TAMARISEが目指す社会の姿が凝縮されているように思いました。
誰かが倒れたとき、救急隊が来るまで何もできずに待つのではなく…
その場に居合わせた人が、勇気を出して行動できるまち。
特別な誰かだけが命を救うのではなく、誰もが誰かの命をつなぐ力になれるまち。
そんな地域をつくることは、医療機関だけではできません。
行政も、学校も、地域の人たちも…
みんなで取り組んでいく必要があるのだと思います。
実は、この「TAMARISE」
現時点では独自の正式な予算もなく、先生方の熱い思いによって動き始めたプロジェクトなのだそうです。
しかも、自治体に直接こうしたお話をされるのは、今日が初めてとのこと。
ということは…
今日は「TAMARISE×国立市」の記念すべきキックオフ‼
せっかくいただいた、この貴重なご縁。
単なる意見交換で終わらせることなく、国立市から新しい救命の輪を広げていけたらと思っています。
清水先生から最初にいただいたメールには、忘れられない言葉がありました。
「私たちは、搬送されてきた全ての人を助けたいのです」
救命救急の最前線に立つ先生方の、切実な思いが伝わってきました。

どれほど優れた医療技術があっても、病院に運ばれてくるまでの時間を取り戻すことはできません。
だからこそ、その時間を地域の人たちと一緒に変えていきたい。
そんな先生方の熱い思いから生まれたのが、TAMARISEなのだと思います。
そして、ちょっと嬉しかったことも。
これまで自治体との接点をつくることが難しかったというTAMARISEが、今回、国立市との意見交換にこぎ着けたきっかけは…
なんと、先月の私自身の救急搬送と入院だったのです
しかも、清水センター長は、私の母校である都立国立高校の後輩なんです
そんなご縁もあって、今回の国立市へのお声掛けにつながったと伺いました。

いやぁ、人生、何が幸いするか分からないものですね。
入院ではちょっと痛い思いもしましたが…
転んでもタダでは起きない石井めぐみ(笑)
あの経験が、国立市で救える命を増やすきっかけになるのなら、こんなに嬉しいことはありません。
「誰かが助ける」から、「誰もが助けられる」街へ。
TAMARISEと国立市の新しい挑戦。
今日が、その記念すべき第一歩となりました。