
皆既日食帯の朝夕は本影の長さが長くなり短時間しか皆既日食が見られないのに対し、正午中心食ではより月に
地球が近いので長めに皆既日食が継続します。
■本影錐の大きさ
北極や南極の高緯度地方で起こる中心食では、地軸の傾きによって地表に到達する月の影が斜めに伸びます。極地方の自転速度はゼロに等しく、日食時本影の移動速度は 3380km/hのままとなります。相対的に中心食の継続時間は短くなります。
■上空から見た本影錐の形

皆既時の太陽高度は59°皆既継続時間は2分23秒でした。これは、直径112kmの月の影となる円錐(本影錐)が上空から見られた珍しい写真です。
この本影錐の中で観測するため、1973年6月30日にアフリカで見られた皆既日食の調査でコンコルド旅客機が使用されたこともあります。コンコルドは2003年11月26日に退役しているので、現在は普通の旅客機で皆既日食の観測がされています。
© Centre National d'Etudes Spatiales
■継続時間の違いによる本影錐の形

下の写真は、継続時間が24秒と短かった2002年12月4日に豪州リンドハースト北部で撮影した本影錐です。皆既時間が短く、太陽高度が低いため、本影錐は逆三角形の形をしています。これがもっと継続時間が長ければ、逆三角形の幅も大きくなります。
今世紀最長の皆既日食が見られる今年は、北硫黄島付近の海上でほぼ天頂に見られます。天頂で起こる皆既日食は、地平線スレスレで見られる皆既日食よりも本影錐がハッキリと現れません。本影錐の状態を探るには、皆既中に周囲の地平線を見渡してみると良いでしょう。全周360°に渡って夕焼け状態が見られます。そして太陽の方向に行けば行くほど、グラデーションのように周囲が暗くなることが確認出来ます。
まだ記憶に新しいJAXAの衛星“かぐや”が撮影した半影月食中の月では、月に大気が無いためこれほど見事な明暗の分かれる本影錐を見ることが出来ません。地球に大気があって人間がそこで観測するからこそ、見事な本影錐が得られるものだと思います。

ちなみに金環日食でも擬本影の移動が見られます。大変淡い現象なので、よく目を凝らして見ないと見られません。太陽の光が漏れ出す金環皆既日食は、皆既中の本影錐の移動のように鮮やかな現象になりにくいと言えます。
2005年4月8日にパナマのペドレガルと言う街で撮影した極細金環日食の擬本影の移動です。皆既日食の時に見られる大きな月の影を本影と言いますが、それから僅かにはみ出た太陽が見える円錐を擬本影と呼びます。
ビデオでは大変淡い現象なので、3回繰り返して早送りしたものをupしました。
■北半球と南半球の本影錐の見え方
北半球と南半球では太陽の南中する方角が違うので、月の影の移動も向きが違います。北半球は南に太陽があって、南半球では北に太陽があります。撮影した写真は、いずれも第三接触1分前~30秒前~第三接触の瞬間に撮ったものです。銀塩FILMのAGFA ISO100を使い、24mmF3.5のレンズを向けて1/2秒→1/2秒→1/500秒の露出で撮りました。




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