涼しい地域でも熱中症
日本全国で猛暑日や真夏日が続出し、「危険な暑さ」のなか、熱中症搬送が相次いでいる。
その熱中症リスクが、涼しい地域ほど、高いことが明らかになった。
●搬送者数
猛暑日の基準となる最高気温が35度の日の搬送者数を見ると、25度を超えると、急上昇している。
25度で、人口10万人当たり0.05人。30度では0.25人、35度で1.07人と、5度上がるごとに5倍のペースで増えている。
これを、地域別に分析すると、
⇒夏場の平均気温が23度を超える37都府県では、平均1人(人口10万人当たり)。
これに対して、
⇒平均気温22度以下の5道府県では、平均2人と、約2倍のリスクだった。
5道府県は、北海道、青森、秋田、岩手、宮城だ。
涼しい地域での熱中症リスクが高いことが、データから明らかになった。
その理由について、帝京大学付属病院の三宅康史・高度救命救急センター長は、
①汗をかきやすくして、暑さに慣れる「暑熱順化」が出来ていないこと、
②住居が暑さに対応していない、エアコンの設置がない、などを挙げている。
●札幌の真夏日
実際、札幌でも真夏日は年を追うごとに増えている。
2021年までの5年間で14.4日。20年前から倍増している。
そのため、北海道の7、8月の搬送者数は、2008年は198人だったのに、2021年は1719人と、急増している。
「かつては熱中症は本州の話というイメージがあったが、変わってきた」と、専門家。
記録的大雨が続いている秋田でも、最高気温の平均は、50年前に比べて約1.3度上昇している。
地元の人は、「山間で日本海側なので、朝は涼しい。それで昔のように1日中涼しいと思っていると、昼にはものすごく暑くなる」
北海道や東北は夏でも涼しいというのは、今や昔の話になりつつある。
●エアコン
こうした状況はエアコンの売上げにも表れている。
内閣府の調査では、北海道や東北のエアコン普及率は7割(2人以上世帯)。全国の9割より低い。
かつて、私が北海道旅行をした時、タクシーの運転手の言葉が印象に残っている。
「ここら辺で、エアコンのある家は、ほとんどないねぇ。私らにとって、エアコンは贅沢品です」
だが、大手家電量販店のヤマダ電機によると、5年ほど前からエアコンの売上げが増えていて、北海道で前年比1.4倍、東北で1.1倍(2020年)だという。
●温暖化の影響
地球温暖化の影響で、日本の気温は今後も高くなる。
専門家の予測では、その影響を受けて、搬送者数がとくに増えるのは、北海道や東北地方だ。
世界平均の気温上昇が2度未満の場合、北海道、青森県、岩手県の搬送者数は、2031~2050年には2~3倍(1981~2001年との比較)になる。東京都の1.6~1.8倍と比べると、顕著な増え方だ。
●暑さ対策
専門家は、政府が発出する「熱中症警戒アラート」を全国一律ではなく、涼しい地域では、暑さ指数が低くても出るようにするなど、きめ細かい対応を検討すべきと話す。
また、家の断熱やエアコン普及など、出来る対策について、行政からの呼びかけと同時に、場合によっては、支援も必要だと思う。
いずれにしても、年々厳しさを増す暑さに対する私たちの意識も、大きく変えていく必要があると感じた。