「豊漁」と「不漁」
今、日本各地の魚に異変が起きています。
地域特産の魚が、急激に取れなくなった一方で、今まで取れなかった魚が水揚げされるようになっています。
●ホタルイカ
富山湾で取れるホタルイカは、味も品質も折り紙付き。
ところが、今年の水揚げは過去10年の平均を下回る予想で、歴史的不漁となっています。
ホタルイカは春の風物詩として、富山県滑川市の地元経済に恩恵をもたらしてきました。
ところが、3月1日の解禁日以降、水揚げは振るいません。
最盛期で1日5000kgだったのが、今年は1000kgを超えたのはわずか7日。1日50kgという日もありました。
代わりに取れたのはスルメイカ。
ですが、ホタルイカとは取引価格が違います。ホタルイカが1kg約4000~5000円に対し、スルメイカは約1000円。
これでは商売が成り立たないと、地元の漁師さんは嘆いています。
もともとホタルイカは、漁獲量の変動が大きい魚種ですが、今シーズンはピークを迎えないまま終わりそうとの事です。
値段が高いため、主に東京や大阪などの高級料理店に出荷されています。地元スーパーでも、価格は例年の倍以上です。
●魚種交代
ホタルイカの激減、急に増えたスルメイカ。
こうした現象は日本の各地で起こっています。
例えば、北海道・函館では名産のスルメイカが激減し、例年の約11分の1に。
北海道各地でブリが増加し、約2倍に、福島県ではイセエビが約6倍に。一方で岩手のサケは約21分の1に激減しています。
各地の特産に、「豊漁」と「不漁」が同時平行で起こっています。
これは「魚種交代」と呼ばれる現象です。取れる魚の種類が変わってきているのです。
●海水温の上昇
この要因は地球温暖化による海水温の上昇です。これにより、魚の生息域が変わってしまっています。
日本近海での海水温の上昇傾向を見ると、過去30年の平均値と昨年7月の比較で、だいたい1℃から4℃くらい上がっています。
水温の1℃上昇は、気温に比べてはるかに大きい影響を与えます。
魚にとっての1℃~2℃は、人間でいうと7~8℃、場合によっては10℃くらいに相当します。
こうして、温かい水の海域がどんどん北に上がっているため、それとともに魚が北上しています。
例えば、愛知県から静岡県にかけての沿岸にいたトラフグが取れなくなり、福島くらいまで北上しています。
●「魚種交代」で特産品を
一方、「魚種交代」をうまく取り入れた町があります。
京都・宮津市。
ここでは、近年1メートル大のサワラが取れるようになり、現在、全国でもトップ3です。15年前までほとんど取れなかった魚です。
ブランド価値を高めるために、船の上でいき締めにして、マイナス3℃の氷水の中に。いわゆる血抜きをして鮮度を保ちます。
漁港に戻ると、1.5kg以上を「京鰆(サワラ)」と名付けて出荷。
さらに3kg以上で、脂質10%以上を「特選京鰆」と認定。
高いものだと1本1万円の値がつきます。
鮮度が良く、品質面でも優れているため、全国から注目を集め、高級ホテルや料亭から引き合いが来ています。
地元の店でも取り扱いが増え、「地産地消」が根付き始めています。
専門家は
「魚種が変わってきたら、その種類の魚を取って、それを市場に回していく。柔軟に臨機応変に対応できる漁業制度が求められる」
●温暖化のなかで
地球温暖化は、私たちの暮らしに大きな影響を与えています。
気候の変化の影響は農業や漁業、酪農など、食料については、とくに強いです。
その状況の変化のなかで、私たち自身が、食生活を見直し、対応できる事は、柔軟かつ適切にやっていかなければならないと、強く感じました。