こんにちは、なぎさです。
今回は、神学の本筋に戻ったようでちょっと脇道にそれた内容です。
ネフィリム(Nephilim)というものが旧約聖書で登場します。
このネフィリムってなんだろう?というお話です。
とてもざっくりと説明しますと、創世記にこうあります。
神の子らが人の娘たちのところに入り、彼らに子ができたそのころ、またその後も、ネフィリムが地にいた。彼らは昔からの融資であり、名のある者たちであった。
─創世記6:4
「神の子ら」と呼ばれる何者かが「人の娘たち」と関係を持って子をなしたということ。神の子と人の娘の間に生まれた者、それがネフィリムと言われているということになります。
聖書中で「入った」「知った」は肉体関係を指す場合もあるのです。
「人」の娘たちと敢えて「人」と使っているので、対照的に「神の子」と表現されているのでしょう。
人の娘はごく普通に人間の女性だと考えられます。
では神の子とは誰でしょうか。
聖書にはその答えは書いてありません。
なぜ書いていないのか、理由はいくつか考えられます。
まず、本当にわからない。
わからないものは書きようがありませんね。
次に書く必要がない。
聖書は神の神たることを一貫して書いてるものなので、ネフィリムの詳細は本筋から逸れるため書いていないと考えることもできます。
徳川家康の功績が載っている本に家臣の誰々について出自などを詳細に載せる必要がないのと同じです。
または、みんな知っていて当然の知識だから敢えて書かないというのも考えられます。
聖書中このように「読者にとっては常識だから書いていない」というのが多々あります。
例えば天使とはそもそもなんだ?ガブリエルって固有名詞の天使が突然登場しますが、彼はなんなのか?ダゴンというどこかの神らしきものが登場しますが、ダゴンって?アシュタロテって?という具合に、当時のその場所の人々なら知っていて当然の事は書いていないのです。
私たちは地域も違えば国や風習も違うのでまったくこれが分からず困ってしまうのですけど、異国民に知らせる目的で最初から書かれていませんから、分からなくて当然ですね。
前置きはこのくらいにして、ここでは「悪魔と悪魔学の事典」からネフィリムを見てみましょう。
天使と人間の女性との共棲(グリゴリ(※1)参照)によって生まれた巨人の一種。ネフィリムとは「堕ちた」、「堕ちた者」、または「投げ捨てられた者」の意味を持つ。時に、天使の親と同様ネフィリムも神の子らと呼ばれることがある。ネフィリムの長はヘレルである。彼らは神の不興を買った。
創世記6章4節には、神の子らが人間の女性と関係を持ったとき、ネフィリムがすでにこの世に存在していたことを示す次のような記述がある。「当時もその後も、地上にはネフィリムがいた。これは、神の子らが人の娘たちのところに入って産ませた者であり、大昔の名高い英雄たちであった」。このように天使と人間との交わりがもたらした堕落を見て、神はこの世に人間を創造したことを後悔(※2)した。神は人類のみならず、この世のあらゆる生物を一掃することを決意した。神はノアとその妻だけ(※3)をこの災難、すなわち大洪水から逃れさせ、新たな人類の祖とした。
ところが、すべてのネフィリムが死に絶えたわけではなかった。後の民数記の言及には、アナキム人、すなわちネフィリムの息子たちに関して次のような記述がある。「そこで我々が見たのは、ネフィリムなのだ。アナク人はネフィリムの出なのだ。我々は、自分がイナゴのように小さく見えたし、彼らの目にもそう見えたにちがいない」(13章33節)。アナキム人は後に撃退される。
『第一エノク書』には、ネフィリムの巨大さにちて次のように詳しく描写した一節がある。
そして女たちは子を宿し、身の丈が3,000キュビト(※4)もある巨人を生んだ。これら(巨人)は人々の産物をことごとく食い荒らし、やがて人間か彼らに食物を与えるのを嫌がるようになった。すると巨人はこれ(人間)に襲いかかり、食い物にしようとした。そして彼らは鳥や野獣、爬虫類や魚を殺生するようになった。やがて彼らは互いの肉を共食いし、その血を飲んだ。やがて世界がこの迫害者に非難を浴びせた。(7章3-7節)
いっぽう、グリゴリは人間に、知ることを許されていない秘儀や魔術を教えこんでさらなる堕落を広めていた。天上からは、大天使ミカエル、ガブリエル、そしてスラファルがこの地上の惨劇と迫害を恐怖の目で眺めていた。彼らは巨人たちが地上に流血と迫害をもたらしていることを神に伝え、これを止めるよう嘆願した。神は地上に洪水をおこし、これらの破壊行為を罰することを宣言した神はガブリエルに対し、次のように言った。
人でなしどもや堕落した物、姦淫によって生まれた子供たちを処罰せよ。そしてその子らを破滅させ、グリゴリの子供たちを人々から隔離し、互いに闘わせよ。(そうすれば)彼らは数日のうちに戦いの中で破滅するであろう。彼らは何時にあらゆることを請い願うであろう──みずからの代わりに父親の命乞いをするであろう。なぜなら、彼らは永遠に生きることを望んでいるからだ。(彼らは)500年も生き続けることを願っているのだ。(10章9-11節)
ネフィリムはまた、「巨人の書」(4Q532)と呼ばれる死海文書の本文中(※5)でも言及されている。ネフィリムであるセムヤザ(グリゴリの長)のふたりの息子、アーヤとオーヤはとある庭園を訪れ、200本もの木々が天使たちによって切り倒されるという同じ夢を見た。ふたりは夢の意味がわからず、ネフィリムの評議会でその話をした。評議会は評議員のひとりであるハマワイを指名し、楽園にいるエノクに夢の意味を訊ねるよう命じた。マハワイは旋風のごとく宙に浮き、両手を羽ばたかせて鷲のように空を飛び、エノクの元にたどり着いた。エノクは、200本の木は来るべき大洪水で破滅させられる200のグリゴリの象徴である、と語った。
この死海文書では、マハワイはその後再び鳥に変身してさらなる旅に出たと記されている。彼は太陽にあまりに近づきすぎ、もう少しで灰になるところだった。だが天からエノクの声が聞こえ、死に急ぐでない、引き返せと呼びかけたために命拾いをした。
※1 天にいる人間の見張り役の天使たち総勢200体。シェミハザが代表する総勢200体は堕天したといわれているが、グリゴリという見張り役自体は存続している?堕天していないともいわれている。
※2 神学的には神は後悔するような方ではないため、ここは残念に思ったと解釈される。
※3 聖書的にはノアと妻、娘たち、つがいの各種動物たちも含まれる。
※4 1キュビト=約0.46m、3,000キュビト=1,350~1,380m
※5 クムラン第4洞窟から発見された死海文書のひとつ。
面白いですね!!
ギリシャ・ローマ時代を超えても生き残ったユダヤに残されている文書で、このように受け継がれた話があるのですね。
エチオピア正教会では旧約聖書の1巻になっているとのことですが、現在のキリスト教ではこれを伝承していませんのでこの情報を知らないわけです。
しかし、上にも書きましたが「読者は知ってて当たり前の常識」としてこれがあるとしたら…。
私たちはこのように、ユダヤ文書や、初期キリスト教徒たちが愛読していたが現キリスト教が偽典・外典としている文書、教父文書などを読むと、当時の見えていた世界を少し垣間見れるのです。
もちろん、引用文はキリスト教教理や聖書とは描写が違う箇所もありますが、大筋で同じです。
まとめるとこうなります。
アダムとイブ(エバ)がエデンの園を出てから、天において人間たちを見張る役をしているグリゴリと呼ばれる大勢の天使たち。
彼らが地上を見ていると、見目麗しい人間の女性たちがいる。
グリゴリは天使ですから結婚をする必要もないのですが、人間のところに降りて関係を結んでしまった。
天使はとても巨大なので、その子ネフィリムたちも巨人となった。
暴虐の限りを尽くすネフィリムたちを大天使たちが見て、神に進言。
あまりの惨状にノア一家と動物たちを残し、神は大洪水を起こされた。
このような見方もできるのですね。
こういうのは実に面白いです。
「進撃の巨人」でネフィリムを知った人もおられるかもしれません。
または「青の祓魔師」でシェミハザやグリゴリ、ネフィリムは出てきます。
ネフィリムはユダヤの伝承に出てくる巨人なんですね!