(つづき)
私:さっきのストーリーでは、この娘は、親の決めた人と結婚するんです。
お嫁に行くとき、母親から「隠し事をするんじゃないよ」って言われて送り出されたから、娘は
姑に仕え、何をするにもお伺いを立てる。
私:嫁ぎ先では「あの嫁は隠し事をしないから」って信用を得たけど、そうやって萎縮したまま、人生を最後まで送ってますね。
私:「自分は許可なく動けない、自分の意志で動いちゃダメなんだ」ってインストールしたのが今世にも強く影響してます。
私:きっと仕事もすごい真面目なんじゃないですか? 責任感が強くて。
D氏:ああ、そうですね。真面目です。
私:怒られたり責められたりするのが辛いんですよね。
配偶者がDさんみたいに穏やかな人でよかったんじゃないかな。
D氏:あっはっはっ。笑
彼女に怒ったことはないですね。やりたいことに対して反対したことも一回もないですし。
D氏:今、過去世を聞いててびっくりしたんですけど、「好きなことしていいんだよ、やりたいようにやっていいんだよ」って、口を酸っぱくして言ってるんですよ。
でも、やらないんですよね。あんまり。
私:好きなことをやるためには、このときの「思い込み」を手放す必要がありますよね。
書き換えちゃいましょう。
さて、書き換えのストーリーは……
私:かんざしが見つかって、両親に叱られる場面までは同じですね。
廊下を通りかかった番頭は、障子越しに声が聞こえてきて、「まだ怒られているのか。不憫だなあ」と思ってる。
次に視えた光景は驚くものでした。
娘の部屋いっぱいに、色とりどりのかんざしが置いてあるのです。
私:番頭が「この中から好きなのを使っていいんだよ」って。
私:驚く両親に、「出入りしている行商人たちが、この屋敷に年頃の娘がさんがいるねって言って、この辺りでは手に入らないようなかんざしをお土産に持ってきてくれるんです」って。
私:「行商人たちは各地に買い付けに行くから、流行にも敏感で目が肥えている。綺麗な年頃の娘さんには、やはり光るものが似合うって言うんですよ」。
私:昔ながらの地味な装いじゃなくて、今の時代に合ったものをまとわせた方がより一層輝くって。しかも、お嬢さんが身につけて喜んでくださると、商人たちも『あの商家は話が分かる』って、良い品を持ってきてくれて、商売繁盛につながって、ほら、売上も増えているんです」
私:商売を仕切っているのは番頭だから、そう言われると両親も反論できない。
それで娘は、堂々と好きなかんざしを身につけられるようになった。
D氏: あっはっはっはっは。うまいな。
私:で、最初はかんざしから始まって、それが帯だったり、帯留めだったり、いろんなものにひろがって、ときには娘が自ら行商人に頼んで仕入れてもらうこともある。
私:母親が「そんなもの身につけて」と不満を漏らしても、番頭がすかさず「いやぁ、よく似合いますね。これは尾張の商人が持ってきてくれたんですよ。お嬢さんが身につけてるのを見て喜んで、特産品をうちに優先的に仕入れてきてくれるんですよ。助かってます」ってフォローする。
私:そして、娘に「せっかくいただいたのにつけてないと『あれはどうした?』って聞かれるから、お嬢さん、なるべく身に付けてくださいね、商売のためにお願いしますよ」って。
私:こうして娘は堂々とお洒落を楽めるし、家業もますます栄えていった。
私:結婚のときも。両親が「いい縁談話がある」って勝手に決めようとしても、番頭が、「これだけ華のあるお嬢さんなら、自分で選んだ相手のほうがもっと花開いて、商売にもつながりますよ。品物だって、話を聞いただけじゃわからない。人も同じです。会って確かめてみないとね」とかなんとか上手に手綱を引いて。
私:娘は自分の意志で相手を選んで、幸せな結婚をした。
結婚後も実家に自由に行き来できるように、番頭が上手に采配を振ってくれる。
私:常日頃から嫁ぎ先に「うちのお嬢さんを大切にしていただいてありがとうございます」って礼を尽くして、珍しい特産品や高価な贈り物を届けたり、美味しいものが手に入ると「ぜひご家族で遊びに来てください」って声をかけて、嫁ぎ先の家族を実家に招いてもてなしたり。
私:娘が実家に帰ってくるときには、いつも良い着物を身につけているように仕向ける。
それを見た周囲の人々が「あのお嬢さんは嫁ぎ先で大事にされているんだ」と口々に噂する。おかげで嫁ぎ先の評判が上がって、向こうの家も商家なんだけど、商売繁盛につながっていく。
私:こうして娘は結婚後も「自由」でいられた。
私:誰かが我慢を強いられるんじゃなくて、みんながハッピーでいられる関係をこの番頭が築いたんです。
それは、この番頭の「人は本来自由であるべき」という信念からきてるんだけど…
あれ……?
この番頭の前世が今視えたんですけど…!
(つづく)