(つづき)
私:最後に「人口的な毒」ってあったでしょう?
リカちゃんに「あ、ここ、写真撮ってて!」って言ったところ。
あそこです。
(「ミラクルズ」は、最初のころは3人とも各々で写真を撮って、最後にアルバムを作成していたのですが、最近はリカちゃんがもっぱら専属カメラマンを務めてくれています)
●私がリカちゃんに頼んだ写真はこれです。
ドイツ出身の物理化学者、電気化学者であるフリッツ・ハーバー。
空気中の窒素からアンモニアを合成するハーバー・ボッシュ法で1918年にノーベル化学賞を受賞した方だそうです。
当時ヨーロッパでは産業革命で人口が増大し、農産物の需要が劇的に高まる中、その農作物を育てるために必要な肥料が不足していたそうです。
作物の肥料に必要なのはアンモニア。
当時は硝石(という鉱物)を原料にしてつくられていました。
しかし、鉱山から掘り出す硝石が底を尽けばアンモニアは作れなくなり、農作物を育てることが出来なくなれば、食糧危機が訪れるかもしれません。
そのような不安の中、彼は空気中の窒素を使ってアンモニアを合成する技術(=ハーバー・ボッシュ法)を見い出しました。
空気はいくらでもありますから、硝石が尽きる心配もなく、肥料の原料を大量生産できるようになったのです。
一方、アンモニアは火薬の原料としても使われます。
第一次世界大戦中、ドイツは彼の発明した技術が役に立ち、弾薬製造には困らなかったそうです。
肥料として人々の命を救う反面、火薬として人々の命を奪う。
人間が発明するものが、このように「光と影」の両側面を持つなんて皮肉なことです。
彼はまたその強い愛国心から、
「毒ガスで戦争を早く終わらせれば、無数の人命を救う事ができる」と考え、第一次大戦では毒ガス開発にのめり込み、史上初の毒ガス戦を成功させ、「化学兵器の父」とも呼ばれたそうです。
彼のこの研究に反対した妻は、自殺する事で抗議したのだとか。
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なぜ「ミラクルズ」の「毒」展のテーマがこれだったのかというと、人間が開発するものはこのように「光」と「闇」の両側面を持ち、それゆえその開発の歴史に関わった人々の「解放」が必要になっているからです。
以前、NHKで「宇宙に魂を売った男」という番組を観ました。
ドイツ出身の天才科学者ヴェルナー・フォン・ブラウンは、ロケットの開発が夢でした。
しかし、その開発には莫大な資金が必要です。
そこで、第二次大戦中にヒトラーの協力を得て、弾道ミサイルの研究・開発を行うのです。
ロケットとミサイルは根本的に同じ技術だからです。
ロケットの先端に人工衛星を積んで宇宙に飛ばすか、あるいは先端に爆弾を積んで敵国に飛ばすかの違いです。
ヒトラーは宇宙飛行に興味はなく、ミサイルに興味がある。
一方、フォン・ブラウンはミサイルには興味がなく、宇宙飛行に興味があるが、その開発には莫大な資金を必要とする。
このような形で両者の利害が一致したのです。
例え自分の開発した技術が「闇」に使われようとも、開発できるチャンスがあるのならやってみたい……能力のある科学者ゆえにそう考えたのかもしれません。
彼の開発した弾道ミサイルは戦争で2万人以上もの命を奪いましたが、戦後アメリカへ亡命した彼は、アメリカ初の人工衛星打ち上げや、人類初の月面着陸となるアポロ計画の中心人物として科学史に名を刻むことになります。
昨今では、ドローンが利便性だけではなく兵器として使われ、あの神風特攻隊を連想させる「神風ドローン」と呼ばれるものさえ登場しています。
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最近の講座では、過去に「闇の勢力」に利用された科学者や医者の「解放」が多く出てきます。
自分では人類に貢献しているのだと思い込み、信じ込まされ、挙げ句の果てに開発したものが「悪」に転用されていると知ったときの絶望感、罪悪感。
その感情が持ち越され、今世で同じような専門家の道へ進むことへの弊害となっている場合もあるので、「解放」は必須なのです。
きっと地球に限らず、宇宙中のあらゆる惑星で、人は進化の過程で同様のことを繰り返しているのではないでしょうか。
しかし、私たちがこのような「解放」に着手し始めたということは、これから時代が確実に変わっていくことを示唆しているともいえます。
そのことを伝えるためのきっかけとして、今回「毒」展へ行かされたのでした。
ところで…
この蜂の拡大模型を見たとき。
私:ねえねえ、仮面ライダーってさ、蜂と顔が似てない?
カオ:確か、あれってハエをモチーフにしたんじゃなかったっけ?
リカ:そうそう、ハエがバッタだったと思います。
私:えー? ヒーローの顔がハエかバッタ…?
知らなかった。
「毒」展を見に来て、一番の衝撃だったかも! 笑
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