■明暗を分けたコンビニ業界


大手コンビニ5社の20148月中間決算が108日に出揃いました。

上位2社のセブンイレブンとローソンが過去最高益を叩き出すのと対照的に、ファミリーマートなど下位3社は減益となるなど、4月の消費税増税後の対応で明暗がくっきりと分かれる形になりました。

ただ、営業利益を比べると首位のセブンイレブンが1,368億円なのに対して、2位のローソンは400億円と3倍以上の開きがあり、勝ち組の中でもセブンイレブンの収益力の高さが際立つ格好です。

コンビニエンスストア業界は、規模が大きければ大きいほど収益力が高くなる典型的な規模型事業であり、リーダーのセブンイレブンが圧倒的な収益力を誇るのは言ってみれば当然のことといえます。

ですから、ローソンが正面から戦って、収益力でセブンイレブンを追い抜くためには規模を拡大して、規模の上でセブンイレブンを追い抜かなければならないということになります。

ただ、セブンイレブンも最近では全く店舗の無かった四国への集中出店を開始するなど、益々規模の拡大に拍車をかけていることを考えれば、ローソンが規模で追い抜くことはあまり現実的ではないといっても過言ではないでしょう。

それでは、あなたがもしローソンの経営者なら、どのような戦略でセブンイレブンと互角以上に戦おうと考えるでしょうか?


■ 規模型事業でリーダーでなければ特化型で勝負しよう


さて、そんなローソンの戦略を検討する際に、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が考案したアドバンテージ・マトリクスというフレームワークを活用できます。

アドバンテージ・マトリクスでは、規模型事業において、2位以下の企業がトップ企業を収益力で上回ることは難しいとされています。

そこで、2位以下の企業は規模型から特化型への転換を図ることにより、収益力を高めることが可能になるのです。

特化型事業とは、特定の分野にフォーカスして競争優位を築いていく事業です。

この特化型事業では規模にかかわらず高い収益力を実現できるという特徴があります。

つまり、ローソンもコンビニエンスストアという規模型事業でセブンイレブンを追い抜こうとするのではなく、特化型事業を展開して収益力を高めていくことが効果的な戦略といえるのです。

実際にローソンは、通常のコンビニエンスストアだけでなく、低価格に特化した『ローソンストア100』や“女性を中心に「美しく健康で快適な」ライフスタイル”を提供することに特化した『ナチュラルローソン』を展開しています。

そして、今回550億円もの巨費を投じて成城石井を買収したのは、富裕層に特化し従来のコンビニエンスストアとは異なった客層で収益力を強化する狙いがあったのではないでしょうか。

成城石井は東京都内に120店舗を展開する小型の高級スーパーで、通常のスーパーとは違い、高級品の品揃えが充実しているという特徴があります。

接客も顧客に評判で、富裕層の絶大なる支持を集めています。

顧客は富裕層中心なので消費税増税後も影響をあまり受けることなく、売上、利益ともに成長基調にあることも多額の買収に踏み切った一因といえるでしょう。

ローソンの経営幹部は成城石井の買収にあたって、メディアの取材に次のように答えています。

“成城石井が好調なうちは特段手を付ける必要はないので、買収後も屋号を残す他、商品構成や体制には手を付けず、仕入れの一本化も考えていない。ローソンとしては、コンビニで培った店舗開発のノウハウや顧客分析などで後方支援し、さらに稼げる体質に改善することが第一だ”

このローソンの成城石井に対する方針を見る限り、今回の買収は特化型の事業をポートフォリオに加え収益力の強化を目論むものであり、特にコンビニエンスストア事業とのシナジーを活かす目的の買収でないことが浮き彫りになります。

ローソンはここ最近、2010年には音楽や映像ソフトの販売事業を展開するHMVジャパン、そして20148月にはシネマコンプレックス(複合映画館)国内3位のユナイテッド・シネマを買収するなど、市場が飽和してきたコンビニエンスストア以外の事業に積極的に進出しています。

これら特化型事業をポートフォリオに加えて収益力を高め、果たしてどこまでセブンイレブンとの3倍の差を縮めることができるのか?

今年5月に社長に就任した玉塚氏の手腕に期待しましょう。


+--------------------------------------------------------------------+


※ BCGが考案したフレームワーク『アドバンテージ・マトリクス』を更に詳しく学びたい方は、MBA Media Onlineのバックナンバーをご覧下さい!

『規模の劣る企業が競争優位を築くために取るべき事業戦略とは?』
http://www.mbasn.com/modules/Xigg/index.php/node/153
セブンカフェなどコンビニコーヒーが空前のブームを迎える中、顧客を奪われ苦戦している業界や企業もあります。

そのうちの一つが缶コーヒー業界。

缶コーヒー業界は2005年あたりから市場が縮小し始め、最近ではスターバックスなどのカフェやセブンイレブンなどのコンビニに顧客を奪われ、深刻な市場の縮小に悩まされています。

たとえば、缶コーヒーのトップブランドである日本コカ・コーラ社の『ジョージア』でさえ、ここ10年間で14030万ケースから1470万ケースと25%も出荷量が落ち込んでいるのです。(飲料総研調べ)


さて、ここでもしもあなたが日本コカ・コーラ社で『ジョージア』のマーケティングを担当する責任者であれば、どのような戦略でコンビニコーヒーに対抗し、売上を回復軌道に乗せるでしょうか?


■ コンビニと正面戦争を選択した『ジョージア』


『ジョージア』を展開する日本コカ・コーラ社は、爆発的ヒットの続くコンビニコーヒーに対抗するために、JR東海の子会社である東海キヨスクが運営するコンビニエンスストア『ベルマート』に独自に開発したマシンを導入し、カウンターコーヒーを販売することを決定しました。

缶コーヒーで勝負するのではなく、コンビニのカウンターで淹れ立てのコーヒーを提供するという、真正面からセブンイレブンやローソンなどのコンビニコーヒーに勝負を挑む戦略を打ち出してきたのです。

すでにコンビニコーヒーは顧客の間で100円という低価格の割に美味しいという評価が定着していますので、日本コカ・コーラ社はカウンターコーヒーへの参入にあたって、コンビニの淹れ立てのドリップコーヒーに負けないように、総力を結集してコーヒーマシンを新たに開発。

特に駅ナカの立地に合わせ、時間に余裕のない顧客を想定して、大手コンビニが1杯当たり40秒ほどかかるところを、30秒で提供できるマシンを強みに顧客を獲得することを図ります。

当初は東京駅と名古屋駅にある2店舗での導入に留まりますが、導入してから予想を上回る売上を記録していることから、今後は新幹線の停車駅を軸にさらに導入店舗を拡大していく計画です。


■ 『ジョージア』は果たして大手コンビニから顧客を奪えるのか?


コンビニコーヒーに真っ向勝負を挑む形となった日本コカ・コーラ社ですが、果たして勝算はあるのでしょうか?

独自のマシンを開発して挑む勝負だけに、日本コカ・コーラ社の本気度が伝わってきます。

ただ、私自身はいくつかのポイントをクリアしなければ、コンビニコーヒーの勢いを止めることは難しいと考えます。

1
点目は、あまり大きな問題ではありませんが、ブランドの問題です。

コーヒーマシンで提供するブランド名は『ジョージア』であり、顧客はそのブランド名を目にするとどうしても缶コーヒーを連想してしまいます。

確かに馴染みのあるブランドで、顧客に安心感を与える効果はあると思いますが、「淹れ立てで美味しい」というイメージにはもしかすると結び付かないことも十分に考えられます。

ただ、この問題はプロモーション戦略次第でクリアすることもできるでしょう。

続いて2点目は、非常に重要な問題として、プレイス戦略が挙げられます。

現状、導入しているコンビニはわずか2店であり、独自に開発したマシンのコストを回収するには程遠い状況といえるでしょう。

セブンイレブンやローソンなど大手コンビニは1万店規模で展開していることを考えると、まったく勝負にもならない店舗数です。

やはり、影響力を高めるためには大規模に展開していく必要があるのです。

ただ、現状『ベルマート』全店に導入したとしても、76店にしかなりません。

もちろん、大手コンビニにマシンを導入するのは不可能ですし、同じJR系列でJR東日本にも『NEWDAY』という駅ナカコンビニがありますが、こちらはドトールと提携してカウンターコーヒーを提供するなど、入り込む余地はなくなっています。

新聞報道では、今後ホテルやカフェなどを視野に展開を拡大したいと語っていますが、それらに加え、スーパーや高速道路のサービスエリア、全国の学校や病院の売店などコンビニが展開していない場所で大規模に展開していくプレイス戦略を実行に移せるかどうかが重要な鍵を握るでしょう。

果たして、『ジョージア本格コーヒーマシン』は、減少する『ジョージア』の売上を食い止めることができるのか?

今後の展開に注目していきましょう。

+---------------------------------------------------------------------+

(追記)
缶コーヒー各社は“プレミアム化”でコンビニコーヒーに対抗しようと新製品を投入しています。詳しくは以下の本日配信された産経新聞の記事をご覧下さい。

『“プレミアム”投入で缶コーヒーの逆襲なるか 老舗ダイドーの熱意、キリンは二極化対応』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141029-00000510-san-soci

■ 曲がり角を迎えた『餃子の王将』


『餃子の王将』が曲がり角にきています。


同社はバブル期に手を出した不動産投資や「いけすの王将」など事業の多角化に失敗。


2000年には470億円もの有利子負債を抱え、倒産の危機に直面します。


この危機によって辞任した社長を継いだ新社長は背水の陣で経営改革を断行。


まずは本業の中華料理以外の事業から撤退し、経営資源を本業に集中させます。


それから赤字の不採算店を閉店し、キャッシュの流出を食い止めることに力を注ぎます。


一方で、赤字でお金がないにも関わらず、全国から店長を集め業績不振によるリストラは行わないこと、そして店舗運営については各店長の裁量に委ねることを伝えたのです。


このような施策が次々に実り、低価格でボリュームのある料理がデフレ時代の消費者ニーズとマッチし、テレビなどへのメディア露出戦略と相まって、不況にもかかわらず王将は奇跡的な復活を遂げ、11期連続で増収を続けてきました。


ただ、利益面を見ると、コスト増の影響で減益の傾向にあり、2010年3月期からは営業減益が続いています。


顧客数も既存店ベースでは前年割れが続き、これまで成長を支えてきた「やすい」「うまい」「はやい」というビジネスモデルでは立ち行かなくなってきたのです。


このような状況で、あなたがもし王将の経営者であればどのようにして会社を再び成長軌道に乗せるでしょうか?


■ 『餃子の王将』は、顧客の変化に対してどう変わっていくのか?


外食産業では、最近の度重なる食に関する不祥事で消費者は“価格”よりも安全・安心という“価値”を求めるようになりました。


つまり、消費者はもはや安いだけでは見向きもしなくなり、「本当に安全かどうか」「安心して口にできるかどうか」、その価値を見極めてからでないと、購入を決定しなくなったのです。


王将は相次ぐ原材料の問い合わせからこの消費者のトレンド変化を察知し、使用する素材を一部を除いてすべて国産にすることを決定し、顧客の要望に答えていきます。


ただ、問題は国産に切り替えることによって上昇するコスト。


従来の価格では採算が合わない水準までコストが上昇してしまったのです。


そこで王将は10月1日から23年ぶりに値上げの実施に踏み切ります。


メニューの大半にわたって、5%から10%もの大幅な値上げを断行したのです。


◎ 王将の戦略1(プロダクト戦略):消費者が安さより安心安全を重視する流れの変化を察知して食材をすべて国産に切り替えた。

◎ 王将の戦略2(プライス戦略):材料費や人件費の高騰に対して大胆な値上げを実施した。


また、王将はこれまでの若者主体の顧客層だけでなく、資金的に余裕のある中高年層にターゲットを合わせた新たメニューも投入しました。


7月から通常メニューよりも3、4割高い本格的な中華「極王」シリーズの提供を始め、本物志向の中高年層の取り込みを図ったのです。


加えて、今後は2020年の東京オリンピックの開催に伴い、官民挙げての推進策で、訪日外国人が2000万人と現状の倍程度の規模に拡大する見込みのため、フランス料理やトルコ料理の要素を取り入れたメニューを開発し、日本への旅行客にまで顧客層を拡大することを目論んでいるのです。


◎ 王将の戦略3(ターゲティング戦略):従来の主要顧客層に加えて新たな顧客層の開拓を目指す。

◎ 王将の戦略4(プロダクト戦略):新たな顧客層に対して求められるメニューを開発する。


さすがに中華料理店でフランス料理やトルコ料理を提供することはビジネスの軸がぶれて長期的な顧客離れにつながるリスクが高いと思われますが、顧客の変化に応じて変わろうとする王将の戦略は見事成功につながるのでしょうか?


注目して結果を追っていくことにしましょう。

9月4日に開催されて大盛況だったMBAフェアですが、10月28日(火)に再び東京で開催されることが決定しました!


前回来場できなかった方はもちろんのこと、来場された方でも、今回新たなビジネススクールも参加していますので、いろいろと生の最新ビジネススクール情報を入手できるのではないでしょうか。


ピーター・F・ドラッカー経営大学院など世界の著名ビジネススクールに加え、日本からはグロービス経営大学院や早稲田大学ビジネススクールなどおよそ60校がブースを構える予定です。


参加者には1週間のTOEFLコースや、QS出版のトップMBAキャリアガイド等が無料で提供される他、GMATや出願対策、卒業後のキャリアに関するセミナーも開催されます。


また、ビジネススクール情報だけでなく、HBSやKellogg、INSEADなどのMBAホルダーによる"起業・キャリアアップ成功術”をテーマにした講演も無料で聴講することが可能です。


MBAフェアは短時間で多くの価値ある情報を入手できるまたとないチャンスなのでご都合があえば是非ともご参加をお薦めします!


詳細はMBAフェアの公式ホームページでご確認いただけます。
⇒ http://www.topmba.com/MBAS


【QS MBAフェア開催概要】


日程:10月28日(火)午後三時半から九時
参加費:無料<入退場自由>
場所:シェラトン都ホテル東京
公式ホームページ:http://www.topmba.com/MBAS

Bizコンパスに新しい記事が掲載されました!


今回はキリンビバレッジが取り組む異例のブランド戦略について。


よろしかったらお読み下さいませ。


昨日のランキングで3位にランクインしています!(^-^)


『異例のブランド戦略「キリン 別格」の真の狙いとは?』


http://www.bizcompass.jp/original/re-management-005-18.html

<今なら、早期割引+5大特典付!>


4月の消費税増税以降、消費者の買い控えが顕著となり、売上を上げるのに四苦八苦する企業が増えています。


たとえば、マクドナルドなどは消費税増税の影響ではありませんが、8月は前年同月比マイナス25%という驚くべき売上の減少に悩まされています。


かつて原田前社長の下でマーケティング戦略を駆使して快進撃を続けてきた企業の面影もなくなってしまったのです。


マーケティング戦略では、マクドナルドの事例が物語るように、たとえ一時は大きな成功を収めたとしても、顧客の変化についていくことができなければ、逆に大きな落とし穴にはまってしまうこともあるのです。


ただ、ここでマクドナルドが復活を果たす原則はそんなに難しいものではありません。


マーケティングの本質に則って、「顧客の望むもの」を、「顧客の望む価格」で、「顧客の望むタイミング」で提供すればいいだけの話です。


このマーケティングの基本を忠実に守れば、どんな企業であれ、商品やサービスは自然に売れていくようになります。


裏を返せば、今売上の減少に悩んでいる企業は、この3つの要素のいずれかが達成できていないからなのです。


次回のベーシックMBA講座では、このマーケティングの基本を、独自に開発した『マーケティング・キャンバス』というツールを活用して、誰にでも簡単に効果的なマーケティング戦略が立てられるよう、グループワークを通して実際に体験していただきます。


「今や全てのビジネスパーソンにとって欠かすことのできないマーケティング思考を身につけたい!」と思っている方に是非ともご参加いただければ幸いです。


⇒ http://www.mbajp.org/i/s/43r.html


≪Top MBA Basics-マーケティング戦略講座≫


2014年10月5日(日) PM 1:10~PM 4:30(20分の休憩を含む)


詳細・お申込みはこちらからどうぞ!⇒ http://www.mbajp.org/i/s/43r.html





ソフトバンククリエイティブ様より新刊『「やられたら、やり返す」は、なぜ最強の戦略なのか 【ゲーム理論】で読み解く駆け引きの極意』( SB新書)が出版されました!


続々とご感想をお送りいただいております。(^-^)


ビジネスの駆け引き上手になる1冊なのでよろしかったらお読み下さいませ。


また、只今期間限定で購入いただいた方全員にもれなくプレゼントが当たるキャンペーンを実施中です!


詳しくはMBA Solutionのホームページでどうぞ!


http://www.mbasolution.com/




久しぶりにラジオに出演!

J-WAVEの「TOKYO MORNING RADIO」という番組の「TOKYO DICTIONARY」というコーナーで別所哲也さんと“Wテツヤ”でコンビニのセルフレジについてお伝えしました。(笑)


Podcastでも配信されているようなので、聞き逃した方は是非ともどうぞ!(^-^)




本日発売の日経ビジネスAssocieに出ています!


P40、P41、P60と3ページにわたってマーケティングに関するコメントが紹介されていますので、書店にお立ち寄りの際は是非ともお手に取ってお確かめ下さいませ!(^-^)


拙著『超入門 コトラーのマーケティング・マネジメント』も写真入りでご紹介いただいています!


10月5日はこのコトラーのマーケティグが学べるベーシックMBA講座を開催しますので、自然に売上の上がる仕組みをマスターしたい方はご参加下さいね!


『Top MBA Basics-マーケティング戦略講座』

↑今なら5大特典付です!(^-^)




オールアバウトに寄稿した『なぜディズニーは15%もの値上げに踏み切るのか?』がリアルタイムランキングで1位を獲得しました!


お読みいただきましたみなさま、どうもありがとうございました!


お読みでないみなさまはこの機会にどうぞ!



『なぜディズニーは15%もの値上げに踏み切るのか?』


http://allabout.co.jp/gm/gc/446565/