【映画Red感想】人生の選択の重さをフェアに描いている | 妄想泥棒のブログ(銀英伝・ハガレン二次創作小説とマンガ・読書・間宮祥太朗ドラマ感想)

妄想泥棒のブログ(銀英伝・ハガレン二次創作小説とマンガ・読書・間宮祥太朗ドラマ感想)

旧名「給料泥棒のブログ」を2014年7月に変更。
銀英伝ヒルダ視点による大河もどき小説を書いてましたが150話をもって完結。ハガレン小説も全86話で完結済。
2014年3月から、俳優間宮祥太朗さんのことしか呟けない病にかかりました。しばらくそっとしておいてください…。

※注意!ネタバレあります

※2/23追記修正しました

①不倫ものというより人生の選択がテーマと思って見た

“運命の恋”みたいな煽りをされている作品が刺さった試しのない女、それが私です。最初に言っときますw


だから、本作も、宣伝の惹句
「ずるいです。貴方が酷い人って忘れそうになる…」
だけなら、120%観てなかったと思います笑。ゴメンナサイ

しかし、間宮氏が出るんじゃあ観るしかないし←

たったそれだけの理由で事前に数々のインタビュー記事や番組だけチェックしていたところ、途中で自分の決めつけや偏狭さを改めなくてはと思い直したんですよね…。

原作が生まれたきっかけは、母親(だけ)重い役割を求められるという実体験に原作者が抱いた違和感。


そして映像化にあたり、女性監督が単なる「愛の選択」から「人生の選択」へと狙いを掘り下げた上で、
「選択とは、重い責任と苦い結果を伴う点もきちんと描きたかった」
と。


私は、この一言だけで作り手としての真摯さを感じ、是非見たいと考える様になったのです。



②期待通りだった点

1)説明し過ぎず、観客が自由に深く考えられる

背景・状況・心情の全てにおいて、説明的なシーンや台詞はとても少ない。時系列まで複雑に過去と現在を行き来するので、決して分かりやすい親切な作りではありません。

しかし、私はそこが良いと思った。

私が、元から描かれていない行間を読み想像を膨らませるのを楽しむタイプだから、というのもありますが、それ以上に。
この手法により、実力派俳優陣によるキャラクターの作り込み・深みある表現が引き立ち、最大限に発揮された、と感じたからです。


本作の見応え・満足度の多くは俳優陣の見事な演技によってもたらされたものと感じています。


2)ヒロインを美化し過ぎてない

不倫に共感を抱かせるのなんて簡単です。別れる夫を徹底的に悪者として描けば良いのだから。
実際、原作ではほぼその立ち位置だった様ですし(未読です🙇‍♀️)、本作を観た感想の呟きでも「あのダンナ無理だわー」という方が多数派の様ですね?


しかし、監督はそんな夫役に独自の味付けを加えました。間宮氏キャスティングの理由について、
「自分の価値観を押し付ける夫の真(しん)には、普段から言葉の選択が知的と感じていた間宮氏なら、自然に育ちの良さを感じさせてくれると期待した」
と語っています。(嬉しかったなー)
そして、“悪意は無いけれど残念で可哀想な夫”として描写しました。



最後まで怒鳴ったり乱暴はしませんでしたし、
特に印象的だったのは、
「貴方にとって結婚って何だったの?」
というヒロインの問いかけに対し、
「たった一人の愛した人と、一緒になる事だよ」
と答えたやりとりですね。押し付けがましくとも夫なりに妻である彼女を心から大切にしていた、それがこの台詞に凝縮されていた。

そして
「…僕が悪かったの?」
と逆に夫からの問いかけ。これは普通の俳優であれば、責め口調で発してしまう台詞なのですが、坊ちゃんらしい甘さと切なさがあり、(本当にこの人は分からないんだろう)と感じさせた。監督の起用の期待に見事応えましたし、間宮氏の武器である多彩な表現力を持つ声が素晴らしい効果を発揮していました。
これにより、ヒロインは、彼だけが悪かったのでは無い、むしろ自分のせいだ、と瞬時に悟りつつ自分の下した決断の業の深さを自覚した、と私は解釈しました。

しかしここで、「いいえ、私が悪いの」としか返せず電話を切ったヒロインに同情する女性も多いだろう事も理解できる。
人によっては、「ほら男にはだから言っても無駄なのよっ」て怒るのかも笑
それくらい、正論で追い詰められて感情でしか対抗出来なくなるという辛い経験を持つ女が多い、という事なのではないでしょうか?



また、私が決定的と感じたのは、ヒロインが夫と娘の元を去るシーン。
ただ泣く娘を抱きしめてヒロインを見送るしか出来ない夫…私の目にはむしろ背を向けて立ち去るヒロインの方が身勝手な悪者にしか見えなかったのです。そしてそれは、例えどんな別れの理由があろうとも、子を捨てる親が必ず背負う一面の真実であるはず。


ヒロインを陳腐に美化しなかったからこそ、選択の重みについて観客は深く考えさせられたのではないでしょうか?私はそう思います。


③残念だった点

1)お仕事描写が不足

人生の決断の意味するところが、誰と一緒に生きたいかという「愛の決断」のみに偏り、「仕事を持ちたい」という要素にさほど踏み込まなかった点ですね。


時系列的にも、専業主婦である毎日が平穏ながらも空疎という描写は最初にあったものの、
その後の展開はまず昔の男との再会ありきで、男の誘いに乗って再び働き出すという流れになっていた。


しかも、子育て中だから職場の同僚達に配慮して貰ってるのに、社内不倫してる女性とか…一緒に仕事したくないタイプNo. 1

これでは率直に言って、女性の自立を後押しするような説得力は無かったです。

2)ヒロイン1人ぼっち過ぎ問題

自分と母親を捨てて出て行った父親と、最終的に同じ事を自分もしてしまうヒロインは、何だかDV受けて育っ子がDVするようになるみたいな、どす黒い因縁を感じて後味悪すぎです。


また、「あんたと鞍田は似てる。一人で生きてるみたいに見える」という台詞も、唐突過ぎ。
幸薄い者同志の必然的宿命を感じさせたかったのでしょうが、異なる方向の印象を受けてしまいました。
大学出て仕事してた筈の人が、相談出来る友達の一人もいなかったのかしら、とか
気取った幼稚園だとしても姑やダンナのグチを言えるママ友くらいは出来るだろうに、とか
要するに、自分にも問題あって勝手に心閉ざして孤立していたんじゃないの、と、想像してしまいました。



④三人の男を妄想で補完する楽しみ

説明され過ぎない即ち、あちこちに「何で、コイツはこうなのか」が散らばっています笑。

ヒロインが、それぞれの男に対峙する時に見せる魔性の様な表情の違いも見所の一つなんですが、女性であれば同時に脳内で男の側のストーリー妄想を試みるはずです。
だって三種三様に男達が魅力的だから。

1)運命の男=鞍田

最悪に身勝手なのに、どうしても惹かれてしまうんだから悪魔でしょうコイツはww


学生だったヒロインに手を出した頃には自分は妻帯者。その後病気になって妻と別れ、再会したヒロインが既婚と知りつつ熱烈に抱きしめ、職場にも誘う。ヒロインに家庭を捨てさせ自分へと振り向かせた癖に、共に生きられる余命は心許ないとか…マジ酷過ぎませんか?www
中の人が妻夫木さんでなければ、火炙りにされても文句は言えない。

この物件は、「自分を必要としてくれる男」
求められたい女にとっての、どストライク!

2)解放者=小鷹

このタイプ知ってる〜!コミュ力高くて、営業成績も有能なので魅力的だし、女を心地よくさせるのが上手い

「(キスするなら)ちゃんとして?」
と、コケティッシュな顔を見せたヒロインに一発で惚れる可愛い一面もあるけど、面倒な事を巧みに回避するし逃げ足も速いと見た笑。つまり責任はとってくれません
落ち込んでいる時とか自信をつけたい時だけ都合良く側にいてくれれば良いんだけど、付き合うでもなく、なあなあでズルズルの関係に持ち込まれるのが関の山って感じですね。

この物件は、「自分を女として扱ってくれる男」
チヤホヤ慰めて欲しい女にとってのストライク!

3)御主人様=真くん

上品で知的で金持ち。一見、一番のオススメ物件です


ヒロインはまるで「束縛から解放された私」みたいな被害者ヅラして別れますけど、少なくとも最初は自分から狙って落としたに違いない。だって、母子家庭で苦労し絵に描いた豊かで幸せな家族を望んでいたんでしょうから…
でも、こういう保守的な男は結婚した瞬間に恋人から家長へと変身。同様に相手にも良き嫁であり母になる事を当然の様に求めます。
これに付き合うには、自分も変わるしかありません。家庭という組織に就職、さもなきゃ共同経営者を目指す気概が必要っす。

このタイプは「自分を守ってくれる男」
頼って寄りかかって楽したい女にとってのストライク!



と、まあ、そんな感じで勝手に書かせてもらいましたが、見る人の好みや視点をどこに置くかで、全然感想違ってくるだろうって事が一番言いたかったんです。
こんなダラダラ駄文で上手く伝わると良いんですけど😂

いつか私だって、望まなくても人生の決断をしなくてはならない事が起きるかもしれない。
その時にはせめて、自分でハンドル握った状態でアクセル踏みたいですね。ラストシーンで、ヒロインが助手席側でなく鞍田を乗せる側になって雪道から抜け出して行ったみたいに。