生きる糧になる哲学・思想系書籍紹介サイト Thought

生きる糧になる哲学・思想系書籍紹介サイト Thought

ブログの筆者自身がともに思索してきた、生きる糧となる哲学・思想関連の本を紹介するサイトです。

Amebaでブログを始めよう!
宗教多元主義 増補新版/法蔵館
¥3,150
Amazon.co.jp

第四弾は、現代の異宗教間の接触の中で生まれた、一つの平和的な宗教理解の方向を示そうとする、J・ヒックの力作、『宗教多元主義』です。




この本の内容は、全く異なった主張をしているように見える世界宗教を、万教帰一的な発想で調停しようとする、一つの宗教哲学的試みについてです。



彼はある宗教の他宗教理解を3類型に分類します。


1.排他主義

救い・解放を、一つの特定の、即ち自分の宗教に限定するものです。

これは伝統的にほとんどの宗教で行われてきたことで、独善的に真理を自分の宗教共同体だけに限定する狭量な見解です。



2.包括主義

救い・解放は、確かに他の宗教でも見られるが、自分自身の宗教伝統内におけるものが最も純粋で効果的で他の伝統より質が高く、他宗教におけるものは自分の宗教の救いの変形だと主張するものです。

例えば、キリスト教的包括主義は、仏教徒やヒンドゥー教徒などをも、キリストによって罪を贖われ、別の形態において信仰生活を送る者と捉えます。



3.多元主義

救い・解放が、すべての偉大な宗教伝統内において、様々に異なる仕方で平等に生じるものだと認めるものです。

彼はその宗教的経験を、<自我中心から実在中心への人間存在の変革>と規定し、これが同程度に生じているので、宗教的救済は各々のコンテクストで可能だ、と主張します。


実在とは、各宗教での最高の存在、父なる神、アドナイ、アッラー、ヴィシュヌ、ブラフマン(梵)、ダルマ(法)、タオ(道)、シューニヤター(空)などを指し、救済は自我への執着から脱して実在中心の生に移ることです。

宗教多元主義は、「人類の生存を脅かす諸問題の前で協調し合い、たがいに心の豊かさを求めあう」事を目的とするとヒックは述べ、私もこの精神に大いに共感しました。


主張が成立しないとか、主張自体が暴力的だとか、数々の批判はありますが、異宗教理解と和解に向けた試みの一つとして、非常に価値のあるものだと思います。









哲学・思想系書籍紹介サイト Thought


第三弾は、初回に紹介した『夜と霧』の著者で、実存分析・ロゴセラピーの創始者であるV・フランクルの著作です。


ナチスによる強制収容所から解放された翌年に、ウィーンで行った講演を文字にしたもので、かなり平易に書かれているので、フランクル自身の著作の中では最も読みやすいです。




フランクル思想に入門したい人は、この本から入るのが一番の近道だと思います。


しかも、易しい著作ながら、フランクル思想全体を見渡して考えても、もっともフランクル思想の中心となる、彼がもっとも言いたいことが、とても分かりやすい言葉で書かれていると言う意味でも、入門書として最適です。




三部立てで、第一部では彼の生きる意味についての基本的な考え方が述べられ、第二部ではそれが病にもかかわらずあるということが、第三部では、それが強制収容所という過酷な状況にもかかわらずあるということが、体験に即して語られます。



最終的に、どんな状況でも人生に意味があると言う主張が、論理的な、いわゆる理詰めではなく、むしろ実存的な、実体験に即した形で、提出される構成になっています。




彼の人間に対する視線は厳しくも温かく、彼は著作を通して多くの人に生きる勇気と尊厳を伝えてきたのだろうと思います。



巻末にフランクル研究の第一人者である、山田邦男さんの丁寧な解説もあり、フランクル思想の概略がわかるようになっているので、そちらも必見です。




こちらから購入できます。

それでも人生にイエスと言う/春秋社
¥1,785
Amazon.co.jp
宗教哲学の根源的探究/北樹出版
¥6,300
Amazon.co.jp

第二弾で何を紹介するか迷ったのですが、人生に意味がない、というニヒリズムに苦悩しながらも、このことは結構知らない人が多いのではないか、と思い、この本を先に紹介させていただくことにしました。




著者の花岡永子さんは京都大学の名誉教授で、キリスト教と仏教双方に造詣の深い人です。



彼女の思索は西田幾多郎の哲学や、そこから発する京都学派の影響が強く、それを武器にして東西の宗教の対話を試みます。


その中の一つに、ニーチェのニヒリズム、狭義には「神の死」の問題の、解決策の提供があります。



ニーチェのニヒリズムは、私自身はさしあたっては木田元の反哲学に習って、プラトンに始まり、アリストテレス、彼らの哲学を下敷きにして神学を展開したアウグスティヌス、トマス・アクィナス、その後デカルト、ライプニッツ、カント、ショウペンハウアー、ヘーゲルらに受け継がれてゆく、超越と内在の二元論の挫折と把握していますが、


西田哲学はこの西洋哲学の思考の枠組みに対し、「絶対無」「絶対矛盾的自己同一」「行為的直観」「純粋経験」などの概念を用いて、禅仏教と関係のある、独特の哲学を展開します。



花岡さんの思索は、それを継承したもので、西田哲学を「ニヒリズムの入りこない哲学」と位置付け、その克服を唱えます。


この文献の第六論文などに詳しいですが、私は読みこなせたとは言い難いです。


これを読む前に、西田哲学の基礎を踏まえる必要は、あります。


彼女の論文がフリーでネットからダウンロードできますので、こちらに目を通すのもいいと思います。「ニヒリズム克服の問題」(大阪府立大学人文学会出版の人文学論集より)

http://repository.osakafu-u.ac.jp/dspace/handle/10466/8831



数々の批判もあるようですが、仮説としては成立しているようで、かなり期待しています。


高額、難解を押してでも解消したいと、ニヒリズムに本当に悩んでいる人には、ぜひおススメ。


理解して損はないと思います。