宗教多元主義 | 生きる糧になる哲学・思想系書籍紹介サイト Thought

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宗教多元主義 増補新版/法蔵館
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第四弾は、現代の異宗教間の接触の中で生まれた、一つの平和的な宗教理解の方向を示そうとする、J・ヒックの力作、『宗教多元主義』です。




この本の内容は、全く異なった主張をしているように見える世界宗教を、万教帰一的な発想で調停しようとする、一つの宗教哲学的試みについてです。



彼はある宗教の他宗教理解を3類型に分類します。


1.排他主義

救い・解放を、一つの特定の、即ち自分の宗教に限定するものです。

これは伝統的にほとんどの宗教で行われてきたことで、独善的に真理を自分の宗教共同体だけに限定する狭量な見解です。



2.包括主義

救い・解放は、確かに他の宗教でも見られるが、自分自身の宗教伝統内におけるものが最も純粋で効果的で他の伝統より質が高く、他宗教におけるものは自分の宗教の救いの変形だと主張するものです。

例えば、キリスト教的包括主義は、仏教徒やヒンドゥー教徒などをも、キリストによって罪を贖われ、別の形態において信仰生活を送る者と捉えます。



3.多元主義

救い・解放が、すべての偉大な宗教伝統内において、様々に異なる仕方で平等に生じるものだと認めるものです。

彼はその宗教的経験を、<自我中心から実在中心への人間存在の変革>と規定し、これが同程度に生じているので、宗教的救済は各々のコンテクストで可能だ、と主張します。


実在とは、各宗教での最高の存在、父なる神、アドナイ、アッラー、ヴィシュヌ、ブラフマン(梵)、ダルマ(法)、タオ(道)、シューニヤター(空)などを指し、救済は自我への執着から脱して実在中心の生に移ることです。

宗教多元主義は、「人類の生存を脅かす諸問題の前で協調し合い、たがいに心の豊かさを求めあう」事を目的とするとヒックは述べ、私もこの精神に大いに共感しました。


主張が成立しないとか、主張自体が暴力的だとか、数々の批判はありますが、異宗教理解と和解に向けた試みの一つとして、非常に価値のあるものだと思います。