ジョン・ノースバリーが遺した100の言葉 -5ページ目

5月29日 暗闇のトンネルの中で出口が見えないってパニックになるな。落ち着いてよく見てみろ。

今日はジョンと食料の買出しに行った。

基本的に自給自足や物々交換で食料を賄っているが、

調達できないものはやはり店で買っている。

その帰り道のことである。

町とジョンの家との間には、100メートル程度のトンネルがひとつある。

坑内に照明はなく車のヘッドライトだけが頼りになる。

ちょうどそのトンネルに差し掛かったとき

2,3日前、ジョンが車の調子が悪いとこぼしていたのを思い出したボクは

 『ここでエンジンが止まったら真っ暗だね。』

と冗談をいっていた。

トンネルはわずかだが右にカーブしており真ん中あたりに来ると入り口も出口も見えなくなる。

そこで突然エンジンが止まった。

続けてヘッドライトも落ちる。

ジョンは慌ててキーをひねるがイグニッションは沈黙したまま。

 『ははは、止めてよジョン。冗談でしょ?』

 『調子が悪かったの・・・バッテリなんだ・・・』

 『え?』

ボクの顔は凍りついた。

しかし、ジョンにはその表情を見る事はできなかった。

なんせ真っ暗なんだから。

 『こんな真っ暗じゃあ、修理もできない。車は置いて帰って明日日が昇ったら取りに来よう。』

と車外へ出始めた音がした。

ボクも急いで車を降り、ジョンのあとに続こうとしたが暗闇にジョンの姿は溶け込んでいる。

ボクは急に寒気がして暗闇の恐怖に憑りつかれた。

 『ジョン、どこなの?ジョン!何も見えないよっ。出口はどっちっ??
 どっちに行ったらいいのっ?ねえっ?どっちどっちっ??』

すると右前方のほうからジョンの返事あった。

 『暗闇のトンネルの中で出口が見えないってパニックになるな。
 落ち着いてよく見てみろ。
 どこかにかすかにでも光が見えるはずだ。
 左の壁伝いに前に進むんだ。そのうち出口が見えてくる。』

そういい残すと足音が離れていくのが聞こえた。

ボクも気持ちを落ち着かせ言われたとおりに壁を左手に前に歩きはじめた。

どれくらい進んだか

どれくらい経ったか

距離と時間の感覚を暗闇に奪われおかしくなりそうだったが、

やがて前方右手のほうにかすかな光が見えてきた。

自分よりかなり前の方にその光越しにジョンの姿も見えた。

ようやくの思いで暗闇から抜け出すと

ジョンは近くの岩に腰掛け一服していた。

 『よう、遅かったな。』

そしてタバコの吸殻をポケットに収めながらこう言った。

 『落ち着いたら真っ暗なトンネルからも出る事ができただろう?
 
 人生も似たようなもんだ。
 
 どんな絶望的な状況になってもどこかに救いの手があるもんさ。』

そう行って家路へと歩き出した。