ジョン・ノースバリーが遺した100の言葉 -4ページ目

5月30日 自分が楽しめなきゃ、人を楽しませるなんて出来ないだろう?

23日から太陽は向こう50日間ほど沈まない。

いわゆる白夜だ。

そして今日はそれを祝うフェスティバルの日。


ボクは祭りの世話役を務めるジョンと一緒に開会より早い時間に会場入りした。

会場に着くとすでに設営はほぼ完了しており今晩の演者がリハーサルをしていた。

ボクと愛犬・ジャンクをそっちのけでせわしく走り回るジョン。

普段のゆったりとした動きからは想像もできない。


やがて祭りが始まる。

ジョンは、ボクを先日の老婦人に預け、ステージ脇で控え何やら段取りしている。

市長か何かの挨拶の後、はなやかなバンドの演奏が流れる。

ステージでは演目が次々と披露され会場を盛り上げる。

はっきりいって、大した内容でもないのだが、

会場には町の人々の明るい笑顔があふれていた。

それよりもボクにはこの町にこんなたくさんの人がいたことに驚いていた。

いつ来ても寂れた感じだったからだ。


やがてバンドの演奏にあわせてステージの前でダンスが始まった。

老婦人とボクも町の人に手を引かれ踊りの輪の中に。

踊った事なんてなかったボクはどうしていいのかわからず、

恥ずかしそうにモジモジ体を揺さぶることしかできなかった。

 (楽しくないなあ。)

そう思っていると、ジョンも周りの人に促され、舞台に担ぎ上げられた。

 (まさか、ジョンがこんな派手なことをするわけがない・・・)

そうたかをくくっていた。

が、ジョンは意外にも楽しそうに踊り始めたではないか。

決してそれはお世辞にもうまいとはいえない、むしろ下手糞に近い踊りだった。

それでも会場は拍手や口笛で盛りあがり、

やせ男も町のひともジョン本人も満面の笑みを浮かべていた。

やがて祭りはその楽しいひと時を惜しむように幕を閉じた。



帰りの車の中で、ジョンに

 『今日は盛り上がったね。

  でも、まさかあそこでジョンが踊るとは思わなかったよ。

  絶対あんなのは嫌がると思ってたんだ。』

 『俺の踊りは上手かったか?』

 『え?うーん正直に言ってそれほど・・・いやむしろ下手糞だった。』

お祭りムードにあてられてテンションが上がってたボクは思わず本音を話してしまった。

 『そうだろ?下手糞だっただろ。俺はあんなのは苦手なんだ。』

 『だけどすごく楽しそうだったよ。ジョンも他の人も。いや一番ジョンが楽しそうだったかな。』

ボクは少しわれに返りさっきの発言に対するフォローをした。

 『それでいいんだ。 俺は世話役だ。祭りを盛り上げるのも俺の役割。

  それが舞台でモジモジして苦手だから踊らないとかしたら盛り下がるだろう。

  だからあんなときは誰よりも一番俺が楽しんでやることにしてる。

  自分が楽しめなきゃ、人を楽しませるなんて出来ないだろう?

口調はいつものジョンと変わらない。

無愛想でぶっきらぼうで独善的な言い方だ。

でもなぜかボクの心は彼の言葉を素直に受け止めていた。

ボクの中のジョンに対する見方が少しずつ変わってきたのだろうか・・・