太田 忠司 天国の破片
深夜のコンビニエンス・ストアに現れた少年強盗──。ナイフを突きつけ、金を要求する彼に、元警察官・阿南の発した言葉は、酷く独善的なものだった。「間違ったことはしないほうがいい。金なら私が用立てよう」だが数日後、阿南は自分の犯した重大な罪に直面する。少年が再び強盗を働き、殺人未遂を犯したのだ。少年を捜し、行動を開始する阿南。自らの過ちそして矛盾と葛藤し、彼は事件に秘められた真実に近づいていく。
太田 忠司 暗闇への祈り
満たされないOL生活から私立探偵に転職した涼子はある日、車椅子に乗った依頼人・東山史子を訪ねた。彼女の婚約者が、突然失踪してしまったのだ。早速涼子は聞き込みを始めるが、婚約者の青木達也は愚直なまでも真面目な素顔を持つ男で、失踪の理由がわからない。わずかな手がかりをもとに涼子は横浜へ向かう。そして彼の消息を知るらしい浦野小夜という主婦を捜し出すが、彼女は何かに脅えていた。そんな中、近くの川で若い男の水死体が発見されて・・・。一人の青年の失踪事件の裏に隠された、意外な真実とは!?人の心の奥に潜む暗闇と対峙しながら成長を遂げてゆく涼子の姿を・・・。
太田 忠司 狩野俊介の事件簿
「私の最も大切な財産は石神探偵事務所の狩野俊介君にゆだねるものとする。猫を追い払うより皿を引くべきであった」──俊介の愛猫ジャンヌを通して親しくなった元市長・滝之水老人が、息をひきとる際、弁護士に託した遺言だった。真っ白な便箋に象形風に書かれた不可解な文字は、遺言であると同時に、その意味を解けとの探偵・俊介への依頼だという。老人の娘婿・高山代議士から「大切な財産」を渡せと居丈高に要求された俊介は、それに反発し、長兄の娘・梨花とともに遺言の謎に迫る!