飲水思縁〜台湾華語・台湾茶人文教室準備中 -5ページ目

飲水思縁〜台湾華語・台湾茶人文教室準備中

飲水思源とは中国語の四字熟語で、
水を飲んで、その源に感謝の気持ちを抱くということです。

お世話になっている日本で、
生まれ育った台湾の良さを伝えていくことをライフワークにしています。

コロナウィルスの影響で、人々の生活様式は変わらざるを得ない中、私も7年間の日本生活に休止符を打って、台湾に帰りました。

 

ここ2年くらい、よく生活にもてはやされていると感じています。昨年の秋から今年のコロナ禍の初め頃まで、学業と活動の両立など、一段と忙しかった時期もありました。今は、それらが収束して、私も暫く台湾に帰り、生活の転換をしています。新しく7年ぶりの台湾生活を語る前、まずは去年からの活動の数々を整理するつもりです。

 

昨年の秋に国立市公民館で大学院の行事に4時間の講師を担当しました。内容はおよそ4ヶ月ほど練り上げてきました。(当時のお知らせ記事→

 

開催の4ヶ月前に博士号を取得した先輩、公民館の職員と私の事前打ち合わせで日程や内容の方向性を決めました。それから開催日の1ヶ月前に、4時間分の読み上げ原稿を2回に分けて、先生、先輩方、公民館の職員という関係者たちに回しました。そこからコメントをいただいて、ありがたく思いながら、コメントに沿ってひたすら原稿修正に向き合う辛さも覚えました。

 

結果、去年の秋から3回の日本語茶文化講座、つい最近の1回の中国語講座と、6月から8月までのインスタライブの茶文化ネタの下地をしっかり作りました。将来の自分、今の自分にとって、大変ありがたい経験です。関係者の方々に感謝する一方、自分もいつかそう人を支えられる存在でいたいです。

 

このブログの趣旨は、母国語でない日本語で台湾茶・茶文化活動の軌跡を記録する場なので、詳細な講座内容に触れるつもりはありません。

 

現時点では、ご興味のある方、インスタライブのアーカイブをご覧いただくことを推奨しますw 

↓↓

 

【飲水思縁 学問インスタLive配信】

https://www.instagram.com/ruhans_tea/

① 2020/6/13(土) 『茶経』雑談
② 2020/7/11(土) 茶詩vs茶書→
③ 2020/8/15(土) 明代の教養と中国茶→
 
 
さて、院生講座に戻り、講座当日の様子をちょこっとお伝えします。

 

 

 

2回に分けたパワーポイントの表紙。

 

 
2回目の最後40分くらい、ご参加の方々と一緒に台湾茶を味わえました。

 

 

遊び心で秋のしつらえでした。

 

 

 
今回のテーマに合わせて、水の違いを茶淹れで紹介しました。
 
面白いというか腑に落ちたことに、それぞれの水を好む参加者は半々くらいでした。水の選択も好みに繋がります。この件を調査した機会もいただけて、また一ついい経験ができた気がします。
 
最後は感謝を込めてこの講座の主催側をチラシでご紹介します。
 

 

一橋大学院生講座とは?

 

「国立市内の一橋大学では、研究者をめざす大学院生たちが日々研究に励んでいます。そこで公民館が架け橋となり、若手研究者と地域社会との交流講座を続けてきました。最新の研究動向に触れるも良し!修行中の院生にアドバイスするも良し!院生が講師となって専門分野をご紹介します。」(チラシから引用しました)

 

台北に戻ってから丸2ヶ月が経ちました。


色々計画しているうちに、7月も過ぎてしまいそうで、記録にブログ記事を残します。


最近の感想です。茶芸師・茶葉屋・茶文化講師、どれも目指していく道を歩んでは、「二兎を追う者は一兎も得ず」という諺を思わざるを得ません。それで、一途な方より自分の亀速を自覚した上で、進んでいくことにしました。



花蓮台東で5日間の海を見てきたら、そういう自覚も整理できました。

頑張れよ自分☆

ブログでは暫く去年の秋から今年の初めに東京で主催したいくつかのイベントを記録します。

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台北に帰って10日目、つまりまだ自宅待機中の10日目です。
 
コロナウイルスの影響で、帰国して2週間の自宅待機を行わないといけないんです。自分だけではなく、人々の生活様式も大きく変わっていくと予感しています。
 
インスタでのライブ配信とか色々企画してはいるものの、自分の時間もたくさん増えたので、今後どうしていくかという自己分析や、興味関心と適性への再確認、心の断捨離などを少しずつこれを機に行っています。
 
ちょど1ヵ月前のGW中に流行りのブックカバーチャレンジが回ってきて、インスタグラムとFacebook両方で楽しく語らせていただきました。ブログでもアーカイブを残そうと思いますが、詳しい内容はやはりインスタグラム「飲水思縁*茶日記」(→)からアクセスいただき、ご覧いただきましょう。
 
ここでは、7日間7冊の紹介と、私の活動で影響を受けたもう3冊の遺珠、計10冊をご紹介します。
 
Day 1・杉本博司『苔のむすまで』

まずはいきなり目指しているところを見せましたw杉本博司の本はこれを含め、3冊も持っています。架空の割烹「味占郷」で床の間や器のコーディネートと、建築関係がありますが、杉本がそこに行けたのは、この本でしっかり下地を作ったからだと考えています。


 

Day 2・金庸『天龍八部』


私を文学の世界に引きずってしまったきっかけとなった本を紹介します。中学校時代に読んだ金庸全集です。特に『天龍八部』の構成は素晴らしくて愛読していました。


金庸はいわゆる武侠小説の大家です。武侠小説は日本語で言うと、「ひと前の世代のラノベ」・中華ロマンの感覚に近いですかね。中学校まで趣味が読書と無縁だった私は、金庸のおかげて、本にどハマりました。今は漢詩・漢文をベースに中華文化をやっているのも、その時からの影響だと思います。


また、中国語の語彙力に大変役に立つ本でもあると思います。大学に出会った日本華僑の友人は、小学校から日本の学校教育を受けたにもかかわらず、違和感なく私たちと中国語を話せたのも、金庸の武侠小説のおかげだと言っていました。


この小説は今、台北の実家に眠っているため、母に頼んだら、背表紙を撮ってくれました。


 

Day 3*ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』

*写真は中国語版となります


これは文学の意義を私の中に刻み込んだ名作です。高校時代は今よりも本をたくさん丁寧に読んでいました。あの時に小説の分析を目指していた私は、この本を押さえておいたら、濃密な内容と語り口に長い時間動かされてしまいました。13年前の読書だったんですが、そのまま感覚だけは残しており、実家でまたこの本もめくってみたくなりました。


 

Day 4・大岡信『あなたに語る日本文学史』


日本に留学するきっかけとなった時期に愛読した本を紹介します。上智大学国文学科に交換留学していた時の教科書でした。しっかりした韻文の歴史を大岡先生独自な語り口で語りかけてくれます。文章は専門書よりも散文や軽い評論に近いもので、ネイティヴでない私にとってもすらすら読めた文章です。


日本に長くいればいるほど、日本文化や日本語へ知識の欠如を感じています。段々日本語に残っている漢詩文の方に特化していますが、まだ時折こういう純日本的な要素に触れてみたいです。


 

Day 5・川内倫子『うたたね』


ここ数年の関心を示します。東京都写真美術館は都内でお気に入りのミュージアムの一つです。ある時、3階の企画展で川内倫子の作品を見たら、写真集を即購入しました。


これからやや長い話になります。2015年の年末に高円寺のGallery Cafe 3(以下、スリー)に出会い、2016年の夏に初めて仮スリーでお茶会をしました。その時に店主から「アートは表現です。お茶も表現だと僕は思いますよ!」という一言に刺激され、「表現は一体何だろう」と疑問を抱えながら、スリーで試行錯誤を繰り返してきました。


スリーとの出会いは絵描きになれなかった幼少期の記憶と重なり、アートへの関心を拾い直してみたきっかけでもあります。そこで、写真というツールはふらっと始められるものの、センスを「表現」できるようになるには結構練習を重ねないといけないので、写真の勉強に興味を持ち始めました。


写真という表現を通して、お茶の表現を考えている私です。こうして、スリーで少しずつアーティストやアート愛好家の仲間も増えています。


そして、写真で出会った杉本博司や川内倫子から大きなヒントを得ています。川内倫子からもらったキーワードは、流れ行くこと、空気感と癒しです。


 

Day 6・陳依文『浮沈展眉』

*日本語版なし


この本は残念ながら、日本語版がありません。誰かの紹介でもなく、台北の本屋でも見かけたことはなかったこの本と偶然、出版社で出会いました。


印象に深かったのは、中国茶マニアの方ならきっと誰しも憧れてしまう「午時茶」や「午時水」(端午の節句の正午に採った茶や汲んだ水)のことを鋭敏な感性と詩的な文字で綴った文章です。また、茶葉枕の発想や、花を浸った水で愛玉子を作ることなど、感性と暮らしを豊かにする方法も教えてくれました。


洗練な古典文学リテラシーを駆使しながら書いた茶の散文は、また高度な人文的な観察によって、単なる文字遊びに流されず、しっかりと茶のあるべき姿を伝えている美しい世界を描き上げたようです。是非、中国語のわかる読者にオススメしたい1冊!


 

Day 7・高橋忠彦『現代語でさらりと読む茶の古典 茶経・喫茶養生記・茶録・茶具図賛』


大学院で明代茶文化を研究している私は、著者の高橋先生の下で、6年間お世話になってきました。指導教官だから紹介するわけではなく、茶文化研究に高みを示してくださった先生のお仕事に敬意を表すために、著書を最後に紹介することにしました。


「さらりと」読ませるための工夫は、先生の深い教養を感じています。『茶経』の話は沢山触れられていると思いますが、原典に当たってみて、わかりやすくて正確な訳を読んでみませんか?


初日の杉本博司は私にとっての到達点となると、最終日の高橋先生は今現在努力すべき方向性です。


 
構成として、Day1はここまでやってきた人生では、目指しているところを示し、Day2-Day4はお茶に出会う前にどっぷり文学にはまってきた軌跡で、Day5はお茶に出会ってから努力つつある参考の写真集で、最後のDay6-Day7は茶文化の関連書です。
 
この7冊に、最終日の高橋先生のみはリアルでもお付き合いのある方で、なるべく「知り合いだから挙げよう」というのを避けた拘りでやってきたけど、やはりこういう執着心に遺珠がありました。
 
次の3冊遺珠も茶文化や茶芸という表現を紹介するたびに挙げている書籍ですが、3冊ともの著者か翻訳チームのメンバーと親交があります。
 
遺珠1・岩間真知子『喫茶の歴史 茶薬同源をさぐる』(大修館書店)
 
茶の最古の歴史文献からたどり、薬との関係性を探りながら、入念にまとめてくださった本です。茶文化研究では大変参考になっています。
 
 
遺珠2・高仲健一『山是山 水是水』(自然堂出版)
 
2月の中国茶研究会「五感茶芸」でもこの本をご紹介しました。著者にそのつもりはないと思いますが、私はこの本を茶淹れの心得として考えています。
 

「五感」を澄ますために参考になった以下の一文も付け加えます。

 

「心を開き、目を明らかにす。北斉の顔之推の撰になる顔子家訓の勉学篇に、読書学問する所以として、こう述べられています。情報過多で混乱の様相を呈する現代にあっては、こんな単純な言葉に、グッとくる人も結構いるのではないでしょうか。」(133ページ)

 
 
遺珠3・李曙韻『茶味的麁相 中国茶のこころ』田中優伊翻訳(角川書店)
 

「茶は飲みやすく甘いことが重要視され、渋味は違和感のように思われる。しかし、想像を広げてほしい。舌の上に残る茶の渋味。飾り気のない天然素材を使った茶席が与える印象の渋さ。全てが茶人の眼を手に入れるためのパスワードとなるのだ。」(24ページ)

 
味覚の「渋み」から李さんの「わびさび」のような世界観をリンクしてくれた引用です。この一致性も茶席作りで参考になりました!
 

 

このブックカバーチャレンジを書いて、僭越ながらも最終日に岩間真知子先生にバトンを渡してしまいました。そこからやり取りしていました。世の中の本を読み切れることは不可能で、「やはり何かのご縁で、導かれていくのでしょう」と岩間先生が教えてくださいました。

 

これだけ挙げたが、ほっとひと息をついたのではないでしょうか。

 

 

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