サラリーマン時代に病院に行ってた人が受給する障害厚生年金はかなり手厚い。 | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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次回7月10日の第354号.老齢の年金の重要な期間短縮特例と、受給者が特に多い高齢になってからの遺族年金。

 

 

高齢者の年金記録によく見られる短縮特例と、高齢年金受給者が亡くなられた場合の遺族厚年について考えていきます。


平成29年8月1日以降はそれまでの老齢の年金に必要な年金記録原則25年から10年に短縮されましたが、10年に短縮されるまでも代表的な短縮特例がありました。

 

現在の70代以上くらいの人はそのような短縮特例で25年満たさなくても年金がもらえている人もよくいるため、なんとなく今の制度で考えてしまうと不可解な事が多いものです。


 

よって、年金受給者の大多数を占める高齢者の年金については過去にあった制度の歴史を知っておく必要があるのですが、代表的なものを用いた事例とともに、遺族厚生年金の受給事例を考えていきたいと思います。

 

老齢の年金受給者が亡くなると多くは妻だった人が遺族年金請求者になる事が多いのですが、その妻も昭和30年代以前生まれの人だと遺族厚生年金に加算金が付いたりと、ちょっと気にする点が多いので気をつける必要があります。

 

ぜひお読みください。


 

(次回以降の記事)

7月17日の第355号.配偶者や子と別居の場合の遺族年金と、父母と別居の場合の遺族年金の取り扱いの違い事例。
 
7月24日の第356号.65歳からの老齢の年金額を強力に増額させる年金の繰下げが利用できない事例と、障害年金消滅のタイミング。
 
7月31日の第357号.障害基礎年金受給権者の65歳時点の年金の繰下げと、繰下げ途中で1円も貰えない遺族厚生年金が発生した場合。

 

(発行済み記事)

前回7月3日に第353号.在職老齢年金と高年齢雇用継続給付金を受給する際の年金計算事例と、給付金の縮小。を発行しました。
 

 

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※では本題です。

 

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1.厚生年金加入中に病院に行った人は障害年金の給付が手厚い。

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前回は国民年金のみに加入中の病気で受給する障害基礎年金受給の場合の事例を考えていきましたが、今回はサラリーマンの時に病気や怪我を負って初めて病院に行った場合に受給する障害厚生年金について考えていこうと思います。

 

まず、国民年金には20歳到達月から60歳到達月の前月分までが強制加入となります。

これは日本に住む全ての人が強制加入であるため、この間は必ず国民年金の被保険者となります。


 

また、サラリーマンは厚生年金に加入していると思いますが、厚生年金については20歳から60歳前月までという制限はなく、20歳前から加入したり60歳から最大70歳まで加入する事ができます。

 

 

そして20歳から60歳前月まではみんな国民年金に加入していると申し上げましたが、20歳から60歳前月までの間にサラリーマンや公務員として働いてる人はかなり多いと思います。

 

そうすると国民年金加入と、厚生年金加入が被っていますよね。

 

 

二重加入じゃない?と思われたかもしれませんが、まさに二重加入しています。

 

という事は国民年金保険料と厚生年金保険料を2つの保険料を支払っているのかというと、そうではなく給与(標準報酬月額)に一定率である18.3%の厚生年金保険料をかけたものを保険料として徴収し、それのみを負担しています。


 

なお、18.3%徴収した厚生年金保険料は社員本人と会社側が折半して支払うので、それぞれ9.15%の保険料を支払って国に納付しています。

例えば50万円の月給与の人は9.15%をかけて、会社側と社員でそれぞれ45,750円を負担しています。

 

また賞与が支払われた場合は例えば1回300万円支払われた場合は、150万円(上限。千円未満切り捨て)に9.15%かけて137,250円が徴収されます。

 

 

また、年金受給としては国民年金と厚生年金に同時に加入しているので、将来としては老齢の年金であれば国民年金から65歳になると老齢基礎年金、厚生年金から老齢厚生年金の2つの種類の年金を受給する事ができます。

 

 

サラリーマンや公務員は年金には二重加入しているので、もしこの間に病気や怪我をして働く事が困難になった場合は、障害年金を受給する時は国民年金から障害基礎年金だけでなく厚生年金から障害厚生年金も受給する事ができます。

 

よって、厚生年金からの受給があると給付は非常に手厚くなります。

 

 

前回の国民年金のみの時に病気や怪我を負ってしまうと国民年金からの障害基礎年金(2級は定額816,000円。1級はその1.25倍)に子の加算が付いたりしましたが、障害厚生年金がその上乗せとなります。

 

 

その事例を考えてみましょう。

 


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2.障害厚生年金受給に至るまでの年金記録。

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◯昭和55年11月5日生まれのA男さん(令和6年に44歳になる人)

 
・1度マスターしてしまうと便利!(令和6年版)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法。
https://ameblo.jp/mattsu47/entry-12834553572.html

・絶対マスターしておきたい年金加入月数の数え方(令和6年版)。
https://ameblo.jp/mattsu47/entry-12835359902.html
 

 

18歳の年度末の翌月である平成11年4月から平成14年7月までの40ヶ月間はB企業にて厚生年金に加入しました。

この間の平均給与(平均標準報酬月)は26万円とします。

 

(なお、20歳になるのは平成12年11月なのでここから平成14年7月までの21ヶ月間が将来の老齢基礎年金に反映します)


 

退職し、平成14年8月から平成16年6月までの23ヶ月間は退職特例による国民年金全額免除を利用しました(将来の老齢基礎年金の3分の1に反映。期間が平成21年3月までの場合)。

退職特例の全額免除は一般的に使われてる全額免除とは何が違うのか。

 

それは所得の審査の対象となる人です。

 

一般的な免除は世帯主、配偶者、本人の前年所得を審査して、それぞれが免除基準に該当すれば免除を受けられます(退職年の翌々年6月まで)。

 


退職特例免除は本人を除いて、世帯主と配偶者のみの所得で審査します。

どうして本人を除くのかというと退職したばかりだと、前年所得が高いのでそうなると免除審査の基準に通りにくくなります。

そのため本人の所得を除いて、世帯主と配偶者の所得のみで審査をするのです。

 

 

平成16年7月からは国民年金保険料を平成20年10月までの52ヶ月間未納としました。

 

 

平成20年11月から平成28年6月までの92ヶ月間はC企業で厚生年金に加入して働いていました。

この間の平均給与(平均標準報酬額)は48万円とします。

 

 

退職して平成28年7月から令和6年7月現在は厚生年金加入している妻の扶養に入って国民年金第3号被保険者になっていました。

国民年金第3号被保険者は年収130万円未満である事(障害等級3級以上は180万円未満)。

 


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3.在職中に体調を崩し、初めて病院に行く。

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さて、A男さんはC企業に在職中に精神状態を悪くし、欠勤や遅刻、不眠などの症状を訴えるようになりました。

 

しかし気持ちが弛んでるからだと思い込み、無理して働いていました。

 

在職中の平成26年6月15日に以前より会社の人や妻からの勧めで、一旦病院に行くべきであるとして近くのD心療クリニックに通ってみる事にしました。

 

抑うつ状態として薬を処方されましたが、何ヶ月か通院した後に自己判断で通院をしなくなりました。

 

 

体調は良くはなかったのですが、勤務状況が良くなかったので迷惑をかけてるという罪悪感に苛まれ、自己都合退職に至る。

 

退職後は引きこもるような生活が続き、平成29年4月1日からはE心療内科に通うようになりました。

妻の収入に頼りながらある日、障害年金の請求をしてみたらどうかという妻からの提案で、年金事務所にまず相談に行きまして必要な書類を集める事にしました。

 

 

まず確認しなければならない事がありました。

 

ーーーー

・初診日はいつか→D心療クリニック(平成26年6月15日)

・初診日以前の年金納付記録はどうか→初診日の前々月までに国民年金の被保険者期間がある場合はその3分の1を超える未納があってはならない。


・初診日から1年6ヶ月経過した日以降か→平成27年12月15日(これ以降請求ができる。この日を障害認定日と言います)

 

・障害年金請求は令和3年8月10日にようやく行ったとして、請求時に通っていたE心療内科にて診断書を書いてもらいました。

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障害年金は令和3年8月に行ったとして、年金がもらえるとすればその翌月分からです。


なお、平成27年12月15日の障害認定日に遡って請求してもいいのですが(障害認定日から3ヶ月以内の現症のものを書いてもらう)、障害認定日の障害状態がそこまで悪くないと診断書書いてもらっても受給には至らずに、診断書代の無駄になる事もあります。

 


また、そもそもカルテが残っていなかったりしますと、診断書を書いてもらえません(通院しなくなって5年以降はカルテ保存義務がないから。5年超えても残してある場合もあります)。

 

よって、状態の悪い令和3年8月の請求時点の請求をする事にしました(請求日以前3ヶ月以内の現症で書いてもらう。年金は請求の翌月分から)。

 

 

次に初診日の前々月までに未納が3分の1(33.33%)を超えてはならないのですが、その期間は平成11年4月から平成26年4月までの181ヶ月間で未納期間を見ます。

 


そうすると未納期間は52ヶ月間なので、52ヶ月÷181ヶ月=28.7%<33.33%だから納付要件はクリア。

なお、初診日の前々月までの直近1年間(平成25年5月から平成26年4月まで)に未納がなければそれでもいいです。

 

実務的には基本的にまずは直近1年を確認します。

 

 

次に初診日が厚年加入中なので、支払われるとすれば障害厚生年金。

 

 

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4.請求により障害厚生年金2級が認定された。

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A男さんは令和3年8月10日請求により、障害厚生年金2級が認定されました。

 

いくらもらえるのか。

この時の家族は妻40歳(会社員として年収700万円)、子供が2人(それぞれ10歳と8歳)とします。

 

・障害厚生年金2級→(26万円×7.125÷1000×40ヶ月+48万円×5.481÷1000×92ヶ月)÷132ヶ月×300ヶ月(最低保障月数)=(74,100円+242,041円)÷132ヶ月×300ヶ月=718,502円

 

・配偶者加給年金234,800円(老齢厚生年金の場合の408,100円とは異なるので注意)。


妻は年収850万円未満で、A男さんとは生計同一なので生計維持関係ありとしてA男さんの障害厚生年金に加給年金が加算されます(2級以上の場合のみ加算)。

 


・国民年金から障害基礎年金→816,000円(令和6年度定額。68歳までの人の金額)+子の加算金234,800円×2人=1,285,600円

子の加算金は子が18歳年度末を迎えるごとに消滅し、最終的には障害基礎年金816,000円のみとなります。

 

・障害年金生活者支援給付金→2級は年額63,720円

A男さん自身の所得が4,721,000円未満の場合。

 

 

よって、障害年金総額は障害厚生年金2級718,502円+配偶者加給年金234,800円+障害基礎年金2級816,000円+子の加算金234,800円×2人+障害年金生活者支援給付金63,720円=2,302,622円(月額191,885円)となります。

 

 

このように国民年金のみ加入の時に初診日があるのと、今回のように厚年加入中に初診日がある場合ではかなりの年金差になる事があります。

 

なので、在職中に体調が悪い場合は、在職中に病院に行っておいた方がいいかもですね。

 

 

なお、受給決定後は1〜5年間隔で定期的に診断書を出してもらって、その後の障害年金の支給をどうするかの審査がなされます。


病気の状態や就労の状況などが改善してるなら、等級が下がって年金が下がったりもしくは全額停止という事もあります。

よって、障害年金は基本的に有期年金であります(傷病によっては終身の人もいる。病気が治らないような人)。

 

 

余談ですが、妻には700万円も収入がありますが、それだからといってA男さんの障害年金を低くするという事はありません。


年金は保険なので過去に保険料を支払ってきた対価でもあるので、年金に対して所得制限のような事はありません(一部の年金にはそういうのもある)。

他にいくら収入があろうが資産があろうが支払われます。

 

逆に生活保護を受給する際は、そのような収入や資産や扶養してくれる親族を隈なく調査されて(ミーンズテスト)、最低限の生活のためのお金しか持つ事は許されませんが…

 

 

年金と生活保護を比較する人がいますが、ミーンズテストという決定的な違いがあるので比較するのは不適切であります。

 

 

※追記

障害年金2級以上が令和3年8月10日に受給権発生していますが、2級の場合はその前月以降は国民年金保険料は法定免除(法律上当然に全額免除)とされます。

自分で国民年金保険料を支払う国民年金第1号被保険者の場合はですね。

 

しかし、妻の扶養に入って国民年金第3号被保険者である場合は全額免除にはしません。

 

余談ですが、障害年金2級以上は国民年金保険料が法定免除になってしまいますが、平成26年4月改正によりその後の国民年金保険料を申し出により納付していく事は可能です。

 

 

(本日はこの辺で!)




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7月10日の第354号.老齢の年金の重要な期間短縮特例と、受給者が特に多い高齢になってからの遺族年金。

 

高齢者の年金記録によく見られる短縮特例と、高齢年金受給者が亡くなられた場合の遺族厚年について考えていきます。


平成29年8月1日以降はそれまでの老齢の年金に必要な年金記録原則25年から10年に短縮されましたが、10年に短縮されるまでも代表的な短縮特例がありました。

 

現在の70代以上くらいの人はそのような短縮特例で25年満たさなくても年金がもらえている人もよくいるため、なんとなく今の制度で考えてしまうと不可解な事が多いものです。


 

よって、年金受給者の大多数を占める高齢者の年金については過去にあった制度の歴史を知っておく必要があるのですが、代表的なものを用いた事例とともに、遺族厚生年金の受給事例を考えていきたいと思います。

 

老齢の年金受給者が亡くなると多くは妻だった人が遺族年金請求者になる事が多いのですが、その妻も昭和30年代以前生まれの人だと遺族厚生年金に加算金が付いたりと、ちょっと気にする点が多いので気をつける必要があります。

 

ぜひお読みください。

 

 

前回7月3日の第353号.在職老齢年金と高年齢雇用継続給付金を受給する際の年金計算事例と、給付金の縮小。を発行しました。
 

(以降の発行予定記事)
 
7月17日の第355号.配偶者や子と別居の場合の遺族年金と、父母と別居の場合の遺族年金の取り扱いの違い事例。
 
7月24日の第356号.65歳からの老齢の年金額を強力に増額させる年金の繰下げが利用できない事例と、障害年金消滅のタイミング。
 
7月31日の第357号.障害基礎年金受給権者の65歳時点の年金の繰下げと、繰下げ途中で1円も貰えない遺族厚生年金が発生した場合。
 
8月7日の第358号.基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げようとした理由と安定財源としての消費税増税までの紆余曲折。
 
8月14日の第359号.65歳からの年金が変わる人変わらない人の事例4つ。
 
 
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