障害基礎年金受給開始から、軽快して年金が停止するまでとその後の老齢の年金。 | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

こんにちは!

年金アドバイザーのhirokiです。
 
 

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1.国民年金のみの加入中に初診日がある場合に受給できる障害基礎年金。

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20歳になると誰もが国民年金に強制加入となりますが、その加入中に病気や怪我で働けなくなるとか、日常生活に支障が出るような事になった場合は、国民年金から障害年金が出る場合があります。

 

もちろんそのような状態になったら自動で支給してもらえるわけではなく、必ず請求をしてもらわなければいけません。

 

そして請求する場合は、以下の条件を満たす必要があります。

 

 

まず初診日です。

 

初診日というのは、その病気や怪我で初めて病院に行った日となっています。

 

その初診日がわからないと障害年金は請求不可となるため、非常に重要な日となります。

 

この初診日を基準として、何の年金を出すのか、そしてその初診日という保険事故までに一定の年金保険料を納めてきたのか(もしくは免除だったのか)を確認しないといけないためこの初診日がわからないと先に進む事ができません。

 

 

よって、まずはこの初診日がどこなのかを探す事から全てが始まります。

 

 

初診日は病院のカルテに保存されてるので、病院に聞けばわかるでしょうと思われますが、通院しなくなってから5年を超えてしまうと保存義務がなくなってしまうので初診日の記録が残っていない場合があります(5年超えても保存してる場合もある)。

 

そういう場合は請求までの難易度が上がってしまいます。

 

 

特に慢性疾患などは、初診日から随分と時が経ってから重病化してくる事があるため、重病化した時に障害年金を請求しようとしても何十年も前の初診日を取る事ができなくて請求を諦めてしまうケースもあります。

 

 

糖尿病とかも血糖値のコントロールが悪いと10年、20年とか経った時に合併症などが出たりしますからね…

 

その時に糖尿病で初めて病院行った日の記録を取ろうとしても、記録がないというような事が起こりえます。

 

 

後々、悪化する可能性があるような傷病の場合はあらかじめ初診日の記録や客観的な資料を取っておくなどをしておくと安心です。

 

 

その初診日がわかると、次は保険料の納付要件を見ます。

 

 

年金は保険なので、初診日という保険事故が起こるまでに、自分の力である程度真面目に備えてきたかな?という事を確認するために、初診日までの納付記録を確認します。

 

 

過去に未納が多すぎたりすると、そこで障害年金は請求不可となったりします。

初診日の前々月までに国民年金の被保険者期間がある場合は、その3分の2以上が納付済みもしくは免除でなければいけません。

 

 

それが満たせないなら特例として、初診日の前々月までの1年間に未納がなければそれでも構いません

まあ、基本的には手っ取り早く最初にこの1年間の方を見ます。

 

 

初診日は頑張って探すなどの努力をすれば何とかなる事もありますが、この保険料納付記録はもう変えようがないのでどんなに何とかしてくれと思っても厳しいところです。

 

 

よって、できるだけ未納にしない事が肝心です。

 

 

年金保険料はそれなりに高い(令和5年度は16,520円)ので、なかなか経済的に厳しいという場合もあると思います。

 

そういう時は保険料の免除申請をして、未納にしないという事が大切です。

 

 

保険料の全額免除だと全く保険料を納めないですが、そこは過去の保険料納付状況を見る時は未納扱いにしません。

 

障害年金を請求しようという時にはこの免除期間が本当に力を発揮するケースが多いものです。

 

 

なお、未納の問題が生じるのは国民年金のみに加入していて、自ら国民年金保険料を支払わなければならない人(自営業や自由業、失業者、フリーターなどの人)なのでサラリーマンや公務員のような厚生年金加入中の人には未納の問題は生じません。

 

 

厚生年金は給与から強制的に保険料を天引きするので、未納にはできません。

 

 

さて、初診日と保険料納付要件を満たすと早速、障害年金を請求したいと思うところですが、初診日から1年6ヶ月経たないと実際の請求はできません。

 

 

病気や怪我で日常生活に支障が出てるからってすぐ請求できるわけではないんですね。

 

 

その病気や怪我が一過性のものではない事を確認するために、1年6ヶ月という期間が設けられています。

 

ちなみに1年6ヶ月というのは健康保険からの給付が出たりするので、それと被らないようにしているというのも理由ではあります。

 

 

なお、この1年6ヶ月経った日を障害認定日といい、ここから3ヶ月以内の病状(現症という)の診断書を医師に書いてもらってその診断書により障害年金を出すかどうかを決めます。

(障害認定日時点で対象外だったとしても、その後に悪化した場合はその時点で請求して受給する事ができます

 

 

ようやく請求までこぎ着けても、診断書の内容いかんによっては障害年金が出ない事もあります。

 

 

このように障害年金は初診日を見つけたり、過去の保険料納付要件を見たり、医師に診断書を書いてもらったりと結構時間がかかってしまう年金です。

これ以外にも自分で病歴を書かなければならない書類もあります。

 

 

なので請求すると決めてから、実際の受給までは半年ほどかかるケースも珍しくはありません。

 

 

 

ザッと流れを書きましたが、今回は国民年金からの障害基礎年金受給と停止されるまでの流れを考えていきたいと思います。

 

 

ちなみに国民年金からの障害基礎年金を受給する人は、初診日が国民年金のみの加入中だった人となります。

 

他に年金加入前の20歳前から傷病があった人に支給する障害年金も障害基礎年金ではありますが、今回はそれは割愛します。

 

 

というわけで障害基礎年金を受給中の人の年金記録を見ていきましょう。

 

 

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2.国民年金のみ加入中の病気により障害基礎年金を受給。

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◯昭和53年8月5日生まれのA子さん(令和5年は45歳)

・1度マスターしてしまうと便利!(令和5年版)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法。

https://ameblo.jp/mattsu47/entry-12780334941.html

 

・絶対マスターしておきたい年金加入月数の数え方(令和5年版)

https://ameblo.jp/mattsu47/entry-12782489170.html

 

 

20歳になる平成10年8月から平成13年3月までの32ヶ月間は大学生でしたが、平成12年3月までの20ヶ月は未納にして平成12年4月から平成13年3月までの12ヶ月は学生納付特例免除により国民年金保険料は全額免除にしていました。

 

なお、大学生とはいえ国民年金の強制加入になったため未納にしていると、催促状などが普通に届きます。

 

 

悪質な場合は財産差し押さえに発展する事もあります(所得が300万以上の人は特に)。

 

あまりに無視していたので、不安になり平成12年5月に市役所に行くと、免除申請をしてくださいとの事で免除申請をして平成12年4月以降の期間が免除となりました。

 

 

ところで今の令和時代の免除申請って、申請して承認されると過去2年1ヶ月と翌年6月まで一気に免除にしてもらえたりしますが(平成26年4月改正)、この当時は申請月の前月以降で翌年6月(学生は翌年3月)までが免除期間となりました。

 

平成13年4月になると非正規雇用者として就職し、厚生年金ではなく自ら国民年金保険料を納める必要がありました。

 

 

平成13年4月からはなんとか国民年金保険料を納めていましたが、体の異変を感じていたため平成14年11月11日(初診日)に行ったB内科で腎臓の病気の疑いを指摘され、紹介状を貰ってC総合病院にて平成14年12月8日からは通院治療を行う。

 

 

A子さんはそのまま働き続け、平成13年4月から平成20年6月までの87ヶ月間は働き続けました(6月末に退職)。

この間は国民年金保険料を納め続けました。

 

 

さて、A子さんの初診日は平成14年11月11日であり、1年6ヶ月経過した日である平成16年5月11日時点の病状は普通に働けていたので障害年金の請求はしませんでした。

 

もし国民年金の障害基礎年金を受給したい場合は、障害等級としては1級と2級がありますが、2級の目安としては働けないとか働くのが非常に困難というくらいが目安です。

 

 

そんなA子さんは平成19年あたりから急激に腎臓の数値が悪くなり会社も休みがちになったので、あらかじめ調べておいた障害年金の請求がしたいと考えていました

 

平成20年2月からは人工透析が必要となり、ちょうどその時に障害基礎年金の請求をする事になりました。

 

 

ちなみに、初診日はB内科(初診日は平成14年11月11日)ですが、問い合わせたところ初診日の記録が残っていないとの事だったので初診日証明が取れませんでしたが、現在通っているC総合病院のカルテにB内科からの紹介状にて初診日の記載があったのでそれで初診日は可能でした。

 

 

次に初診日の前々月までに国民年金の被保険者期間がある場合はその3分の1を超える未納があってはいけないという条件をみないといけません。

 

 

つまり20歳になる平成10年8月から初診日の前ん前月である平成14年9月までの48ヶ月のうち未納が3分の1(33.33%)を超えてはいけないという事ですね。

 

そうすると未納期間は20ヶ月あるので、未納割合は20÷48ヶ月=41.66%>33.33%。

 

 

という事は原則だと保険料の納付要件を満たさないので、特例を使います。

 

一般的には特例の方を先に見ます。

 

 

そうすると初診日の前々月までの1年間(平成13年10月から平成14年9月)に未納はないので、保険料納付要件は満たします。

 

 

医師に診断書を書いてもらい、障害年金の請求を平成20年3月6日にやり、4ヶ月後の平成20年7月に障害基礎年金2級の支給決定が下りて、請求月の翌月分(平成20年4月分)の年金から遡って受給できる事になりました(事後重症請求という)。

 

 

請求日である平成20年3月6日が受給権発生日である障害基礎年金2級→定額の795,000円(令和5年度価額。月額66,250円)

 

・令和元年10月分からは障害年金生活者支援給付金→月5140円(令和5年度額)

 

 

請求月の平成20年4月分から7月分までの4ヶ月分(66,250円×4ヶ月=265,000円)を8月15日に振り込み(8月ではなく9月15日にズレる事もあります)。

その後は偶数月に前2ヶ月分を支払う事になりました。

 

 

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3.障害基礎年金2級受給決定後の国民年金保険料と、受給の更新。

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障害基礎年金2級の受給権者になったので、受給権発生月の前月以降の国民年金保険料納付期間は法律上当然に全額免除期間となります(法定免除)。

 

よって、平成20年2月から平成20年6月まで納めた国民年金保険料は還付となります(受給権発生日である3月6日前に納めていたら還付にはならない。3月6日以降に納めていたとします)。

 

 

なので平成20年2月から平成20年6月までの5ヶ月間は法定免除となり、その後の平成20年7月からの平成23年9月までの39ヶ月も法定免除としました。

 

 

法定免除は平成21年3月までの期間は老齢基礎年金の3分の1に反映し、平成21年4月以降の期間は2分の1に反映します。

 

 

さて、A子さんは平成23年10月にサラリーマンの男性と婚姻し、年収も180万円未満(障害等級3級以上の人は130万ではなく180万)だったので国民年金第3号被保険者となり令和5年11月までの現在146ヶ月間は国民年金保険料を納めなくても納めたものとなりました。

 

なお、障害基礎年金受給者は法定免除になるのですが、サラリーマンの扶養に入って国民年金第3号日保険者になったり、厚生年金(国民年金第2号被保険者)に加入できた場合は法定免除とはなりません。

 

 

次にA子さんの障害基礎年金はずっと貰えるというものではなく、1~5年ごとの診断書の更新をしないといけません。

更新の時の病状によっては障害年金が停止されたり、逆に等級が上がって年金額が増える事もあります。

 

 

人工透析は大体5年更新ですね。

 

 

更新月はA子さんの誕生月によるため、8月更新となります。

令和元年以降の改正で更新診断書は誕生月の3ヶ月前の末ごろに送付されてきて、誕生月の末までに医師に書いてもらって提出します。

 

 

令和元年8月が更新月だったとし、その時のA子さんの状態は腎臓移植(平成30年中に腎臓移植手術を受ける事ができたとします)を受けていました。

 

 

経過としては順調でしたので障害年金は停止かな?と思われましたが、移植手術後の最初の更新は従前の等級のまま支給して、その後の経過も本当に順調であれば次回の更新時は障害年金が停止される場合が多いです。

目安としては移植術後1年間は従前の等級で支給するとなりますが、総合的に判断されます)。

 

 

令和元年8月更新後の次の更新は3年後の令和3年8月となったとします。

 

 

令和3年8月の時の更新は腎臓も順調であり問題はなかったので、等級が2級から3級にすら満たないものとなりました。

 

2級の年金は令和3年11月分までは受給する事ができ、12月分以降から停止となります。

(等級が下がる場合は更新月の4ヶ月後から変更。等級が上がる場合は更新月の翌月から)

 

 

よって令和3年12月分の年金からは停止となり、A子さんは障害年金の受給は無くなりました。

 

 

なお、受給はしていませんが障害基礎年金の受給権が消滅したわけではなく、最低でも65歳までは障害基礎年金の受給権者となります。

 

なので65歳までにもしまた病気が悪化した場合は、診断書を書いてもらって障害基礎年金の停止を解除してもらう手続きをしてもらいます。

 

 

その時はまた初診日とか納付要件とかそういうのは見ません^^;もう年金機構でわかってる事だからですね。

 

 

なお、障害基礎年金の等級が2級から3級にすら該当しない程の程度になったので、国民年金保険料はもうこれからは普通に納めなければならないかというとそうではありません。

 

 

令和3年12月に3級にすら該当しなくなって3年が経過した月(令和6年12月)までは法定免除を使う事ができます。

しかし、前述したように令和5年11月までは国民年金第3号被保険者だったとします。

 

 

なので、令和5年12月から令和6年12月までの13ヶ月はまた法定免除とします。

 

 

令和7年1月から60歳前月の令和20年7月までの163ヶ月はまた国民年金保険料納付とします。

 

 

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4.A子さんの65歳からの年金総額。

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まず年金記録をまとめます。

 

・未納→20ヶ月

・学生納付特例免除→12ヶ月(年金額に反映しない)

 

・国民年金保険料納付済み→82ヶ月+163ヶ月

・法定免除→44ヶ月(平成20年2月から平成21年3月までの14ヶ月は老齢基礎年金の3分の1に反映。それ以降は2分の1)+13ヶ月(2分の1に反映)

・国民年金第3号被保険者→146ヶ月

 

 

◯老齢基礎年金→795,000円÷480ヶ月×(納付245ヶ月+法免14ヶ月÷3+43ヶ月÷2+3号146ヶ月)=795,000円÷480ヶ月×417.167ヶ月(小数点3位まで)=690932.8436円≒690,933円(1円未満四捨五入)

 

◯老齢年金生活者支援給付金→5,140円(基準額)÷480ヶ月×(245ヶ月+146ヶ月)+11,041円(免除基準額)÷480ヶ月×(44ヶ月+13ヶ月)=4,187円+1311円=5,498円(年額65,976円)

 

 

このように、障害年金は病気や怪我が治って通常の日常生活に戻ると年金は停止し、その後の年金は自分が今まで加入した年金記録での老齢年金受給となります。

 

障害年金2級受給者の間は保険料が免除になって助かるのですが、将来の老齢基礎年金額が下がる事になるので、免除期間がある場合は10年間は遡って保険料を納める事ができるため(追納という)、追納しておいた方がいいですね。

 

 

また、平成26年4月からは障害年金2級受給者も申し出れば通常通り国民年金保険料を納めていく事ができるので、将来の年金の事が心配であればそれも利用していいのかなと思います。

 

なお、人によっては障害年金が終身で支給される場合がありますが、そういう人には無理に国民年金保険料を支払うように勧めません(多くは老齢基礎年金より障害基礎年金の方が有利だから)。

 

 

それでは本日はこの辺で。

 
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