病気や怪我で長期間闘病中に強力に保障する障害年金。 | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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知れば知るほど奥深い年金制度!
僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

こんにちは!
年金アドバイザーのhirokiです。
 
 
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1.万が一の事態に強力な社会保障が年金保険。
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年金保険制度といえば高齢になった人に支給されるものというイメージが強いですが、若い人にも大いに関係します。
 
長い人生において予期せぬ事態といえば死亡や、障害という事態ですがそのような事が起こった場合も年金保険の保障の対象となります。
 
本人が死亡した場合は残された遺族に遺族年金、本人が大きな病気や怪我で働くのが困難になった場合に請求できる障害年金があります。
 
障害年金は年金保険の中でも少数派であり、あまり知らない人もまだまだ多いのですが遺族年金は割とご存知なのではないでしょうか。
 
遺族年金は夫婦のうち、主に夫が亡くなった場合に妻に支払われる場合が多いので、女性が遺族年金をもらってるという事はそこそこ耳にすると思います。
 
 
高齢になるとお父様かお母様が亡くなられるケースも増えてくるので、お父様がお亡くなりになった時などに遺族年金の請求に出くわす事も出てくるのではないかと思います。
 
まあ、女性が長生きなので遺族年金受給者は多くは妻である女性のほうが受給しているのですけどね^^;
もちろん妻が先に死亡して夫が受給という事もありますが、今までも記事にしてきたように夫が受給する場合は条件が厳しいです。
 
 
高齢になると死亡率も高くなってくるので、遺族年金の受給者も増えてきますが、若い人が配偶者を亡くすケースもあります。
 
そんな時に遺族年金を請求して残された遺族に生活保障を行います。
 
遺族厚生年金であれば、例えば再婚などをしなければ基本的には終身で年金が受け取れます。
 
 
遺族年金が請求できると知って受給できた人からの声は、年金保険があって本当に助かりましたという声が多いものです。
そんな時は、亡くなられた方がしっかり年金保険料を納めてくれていたおかげですね!と言ったりします。
 
(メディアでは年金に対する批判の声がほとんどで印象操作が酷い…。実際の現場では年金に対する感謝の声は多いものです)
 
次に、障害年金ですがこれは長い人生において、思わぬ病気や怪我で体の不自由を強いられて日常生活に支障が出たり、働くのが困難になってしまう場合に請求して保障されます。
 
健康そのもの!という時は、まさか自分が病気なんてするわけないと考えてしまうものですが、全く想定していなかった病気や怪我というものは突然訪れたりするものです。
 
そこで人生の転機になったりですね。
 
 
体が健康な時のように動かなくなると、当然働く事が困難になって所得を得る事が難しくなる事があります。
もちろん今は様々な働き方があるので、障害があっても普通に所得を得る事ができてる人もいます。
 
しかしながらみんながみんなそんな事はできません。
 
 
では、病気や怪我により長期間所得を得られにくくなった時にどうするかというのが、障害年金の出番となります。
 
 
遺族年金や障害年金というのは非常に重要な年金なのですが、なかなか周知されないですよね。
 
 
よく民間では死亡保険とか医療保険の宣伝はバンバンやってますが、民間保険を考える前にまずは国が運営している公的年金保険を踏まえた上で民間保険を考えて無駄に高額な民間保険料を支払わないようにする事が大切です。
 
 
まあ、金融機関とか保険会社は国の年金は当てにならないから〜みたいな話をよくやるものです。
 
老後2000万円問題とかくだらない話題をどんどん利用する事で、世間に年金不安を煽って自分たちの金融商品などを売りやすくする事が常套手段となっています。
 
彼らは世間の人々が公的年金保険に対して不安を持っていてくれた方が都合が良いのです。
公的年金が頼りにならないとか危ないなら、人々は民間保険を買うしかないなあ…と考えてしまいますからね。
 
だからこれからも公的年金保険に対して不安を煽るという手段は無くならないでしょう。
残念な事ではありますが。
 
国の年金が破綻する〜みたいな話は景気が悪化し始めた50年くらい前から流行ってますが、今現在も毎回偶数月に淡々と年金が支払われています。
よく、経済学者の年金保険に対する不安はことごとく当たりませんね^^
所詮は経済の世界というのは不確実が前提な世界であり、予測する事はできない。
 
 
ただし、地位や名声や利益を得ているのは年金保険の不安を煽るようなトンデモ発言をするような学者なのです。
特に民主党時代の強烈な現年金制度叩きに便乗しておかしな話をやっていた学者とかですね。
 
人々は往々にして不安な話に興味持ちます。
怖いもの見たさというか。
 
残念ながら幸せな話には人々はあまり興味を持ちません。
だからメディアは朝から、けしからん!と思うような映像をたっぷり見せて数字を稼ぎます。
 
それと同じように、何の根拠もない的外れな年金不安を煽るだけの不毛な話も本当なら正論に簡単に論破されて消えてしまうものですが、どういうわけか不安を煽るようなオモシロイ話に人々は興味を持ってしまいます。
メディアもそういう話に乗っかって数字を稼ぐ。
 
真面目で正当な話は小難しくてオモシロくないですからね。
 
 
よって、とんでもない事を言う学者が持ち上げられて地位や名声や利益を得て、彼らの発言が影響力を持って世の中に蔓延るのであります。
間違い論の一例として未納が増えれば破綻する、積立方式にすれば少子高齢化の影響を受けない、年金のバランスシート論、昔の人は保険料が安くて世代間に不公平がある論、全額税方式でやるべき等々。
 
だから、「肩書きが素晴らしいし人気がある=正しい事を言っている」というわけではないと疑っておく必要があります。
 
 
平成20年代前後の年金周りは本当に酷いものでしたが、いろんな誤解が解かれていったので年金周りの話は少し落ち着いてきたかなという印象です。
マスコミの人ももう10年くらい年金周りの事を勉強してそれなりに知識を得てきたので、野党や一部の学者の言う的外れな年金批判はもう随分取り上げなくなりましたけどね。
 
ちなみに年金保険は第二次世界大戦で日本が敗戦した時でさえ崩壊しませんでしたからなかなか年金保険というものはしぶといものなのであります。
 
年金保険の先駆けであるのはドイツ(1889年に年金が始まった。日本の社会保険としての年金は昭和14年の船員保険が始まり)ですが、ドイツなんか第一次世界大戦や第二次世界大戦、東西冷戦でドイツが分割されていた時でさえ年金は崩壊せずに生き残ってきました。
 
 
まあ、変な噂に惑わされずに、ある程度は年金保険に対して頭に入れておく事が大切です。
 
 
では本日は障害年金について一般的な事例を見てみましょう。
 
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2.退職後に日常生活に支障が出て、障害年金を請求。
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◯昭和53年6月12日生まれのA男さん(令和6年に46歳になる人)
 
・1度マスターしてしまうと便利!(令和6年版)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法。
https://ameblo.jp/mattsu47/entry-12834553572.html

・絶対マスターしておきたい年金加入月数の数え方(令和6年版)。
https://ameblo.jp/mattsu47/entry-12835359902.html
 
 
20歳になる平成10年6月から平成13年3月までの34ヶ月間は大学生として国民年金に強制加入でした。
しかし、大学生だったから保険料を払うのが厳しかったので未納にしていました。
 
未納にしていたら催告や督促状などが送られてきたので、平成12年4月に市役所に相談をしに行き、学生納付特例免除を申請しました。
 
 
平成12年4月から平成13年3月までの12ヶ月間は学生納付特例免除(将来の老齢基礎年金には反映しない)。
 
 
平成13年4月から平成28年8月までの185ヶ月間は厚生年金に加入しました。
なお、平成13年4月から平成15年3月までの24ヶ月間の平均給与は30万円とし、平成15年4月から平成28年8月までの161ヶ月間の平均給与(賞与含む)は47万円とします。
 
 
退職し、平成28年9月から平成30年6月までは退職による特例免除により22ヶ月間は国民年金保険料全額免除(老齢基礎年金の2分の1に反映)。
 
 
平成30年7月から令和6年6月現在までの72ヶ月間は国民年金保険料未納。
 
 
さて、A男さんは在職中から精神状態に不調を感じる事が多くなりましたが、自分の気持ちが弛んでいるからだろうと思って放っておいていました。
勤務時間に遅れたり、休む事が多くなったので周りの人や家族からは一度病院に行ってみてはと勧められていました。
 
 
しかし、体の不調を無視して働き続けましたが、会社に迷惑をかける罪悪感にいたたまれず、平成28年8月末をもって会社を退職する事にしました。
 
 
その後、A男さんは外出もままならなくなり、妻の勧めにより令和2年12月10日(初診日)に心療科のクリニックへ診察に連れて行きました。
 
診察の結果は何ヶ月か通院してから鬱病と診断。
初診日以降は服薬治療にて通院。
 
 
A男さんがなかなか動けないので、その間は妻がパート収入で支えていましたが、それも厳しくなってきました。
 
何か社会保障はないかと思っていたら、医師から障害年金を請求してみてはどうかと勧められて早速、年金事務所に相談に行き請求に必要な書類を集め始める。
 
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(必要なもの)
・初診日を証明するもの→受診状況等証明書などの初診日を証明するもの(初診日からずっと同じ病院の場合は不要)
・初診日の前々月までの保険料納付記録。
・発病前からこれまでの病歴を書くための病歴就労状況等申立書(初回請求時のみ)。
 
・初診日から1年6ヶ月経った日(障害認定日)以降の診断書(障害認定日から3ヶ月以内の現症のもの)。
診断書は障害認定日から1年以上経ってる場合は2枚必要。
 
もし1年6ヶ月経った日の状態での請求をしないなら、その後に状態が悪化した時の診断書1枚のみ。
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まず、初診日は国民年金のみ加入中(未納ですが国民年金は20歳から60歳まで脱退はできない)の令和2年12月10日。
 
 
次に初診日の前々月までに国民年金の被保険者期間がある場合はその3分の1(33.33%)を超える未納がない事、もしくは前々月までの1年間に未納がない事。
 
国民年金に加入した平成10年6月から初診日の前々月である令和2年10月までの269ヶ月の間の未納期間は、22ヶ月+28ヶ月=50ヶ月
 
・未納率→50ヶ月÷269ヶ月=18.58%<33.33%だから、保険料納付要件は満たしています。
 
 
次に初診日から1年6ヶ月経った日は令和2年12月10日から数えて、令和4年6月10日が障害認定日となるのでここから障害年金請求可能。
A男さんは令和4年6月10日〜令和4年9月9日までの3ヶ月以内の現症の診断書にて、障害認定日時点に遡っての請求をしたとします。
 
 
なお、初診日が国民年金のみの加入中だったので、支給されるとすれば障害基礎年金のみ。
18歳年度末未満の子または、障害等級2級以上の子の場合は20歳までの子がいれば子の加算234,800円(令和6年度価額)が支給(3人目以降は78,300円)。
 
 
A男さんには妻45歳と、子15歳と13歳、10歳がいるとします。
 
 
令和6年9月になってようやく請求し、その後に障害基礎年金2級が認定されました。
(初回振り込みは令和6年12月15日とする)
 
・令和4年6月10日受給権発生の障害基礎年金2級→816,000円(令和4年時点は金額は異なりますが便宜上、令和6年度価額にしています)+子の加算金234,800円×2人+3人目78,300円=1,363,900円(月額113,658円)
 
・障害年金生活者支援給付金→月額5,310円
 
 
なお、受給権発生日が令和4年6月10日なので、令和6年9月から令和4年7月までの27ヶ月遡及分(遡及は年金の時効である5年まで)。
 
よって、令和6年12月15日に支払われる額は27ヶ月遡及分(113,658円×27ヶ月=3,068,766円。これは非課税)と10月分と11月分の2ヶ月分227,316円と給付金2ヶ月分10,620円。
 
その後の偶数月に227,316円と、給付金2ヶ月分10,620円の振り込み(給付金は遡及しない)。
 
ちなみに、子が18歳年度末を迎えるたびに年金額は変化していきます。
 
 
 
※注意
もし障害認定日時点の診断書を取らずに(当時はあまり病状は酷くなかったとかで)、令和6年9月請求時点の診断書でのみの場合は、障害年金は令和6年10月分からのみとなります。
令和4年6月まで年金は遡りません。
 
 
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3.受給開始後の障害年金は。
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障害年金は基本的には終身年金ではなく、病状や日常生活が改善していけば年金が支払われなくなる事があるため、有期年金であります(終身で支払われる人もいる)。
 
大体、1年〜5年単位で新たに診断書を提出してもらって(更新の診断書)、その後に障害年金を継続して支給するかどうかを決めます。
途中で働いたり病気や怪我が治っても、更新の診断書を出すまでは年金停止される事は無い。
 
A男さんは3年ごとに診断書提出を求められ、次回は令和9年6月誕生月末までに提出となりました。
 
A男さんは3年ごとになりましたが、人によってバラバラです。
精神疾患は1年とか2年更新が多い印象。
 
 
もし令和9年6月に提出した診断書により軽快していると判断されれば、障害等級2級から3級に落ちて年金は全額停止になる事があります。
 
国民年金からの障害基礎年金は2級までなので、3級以下に落ちたら年金は全額停止となります。
 
 
等級が落ちた場合は、令和9年6月から4ヶ月経った日の属する月分から停止になるので、令和9年10月分から停止となります。
 
 
逆に等級が障害年金2級から1級に上がったような場合は令和9年6月の翌月分から変更となります。
 
1級であれば816,000円×1.25倍+子の加算234,800円×2人+3人目78,300円=1,567,900円となります。
 
障害年金生活者支援給付金は5,310円×1.25倍=6,638円(月額)
 
 
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4.もし初診日が厚生年金加入中だったら…
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A男さんは退職して国民年金のみの時に初めて病院に行って初診日となりました。
 
在職中から体調が悪かったので、もしその時に初診日があれば請求する年金は障害厚生年金でした。
 
 
障害厚生年金であればいくらになっていたのでしょうか。
 
初診日は例えば平成28年8月中として、障害認定日は平成30年2月中とします。
障害認定月時点はそんなに病状は重くなかったとして、当時の診断書は取らずに請求の令和6年9月時点の診断書のみとします。
 
 
・障害厚生年金2級→(30万円×7.125÷1000×24ヶ月+47万円×5.481÷1000×161ヶ月)÷185×300ヶ月(最低保障月数)=(51,300円+414,747円)÷185ヶ月×300ヶ月=755,752円
 
・妻の分の配偶者加給年金→234,800円
 
・前述した障害基礎年金(3人分の子の加算金含む)→1,363,900円
 
・障害年金生活者支援給付金→月額5,310円(年額63,720円)
 
よって、障害年金総額は障害厚生年金755,752円+配偶者加給年金234,800円+障害基礎年金2級(3人分の子の加算金含む)1,363,900円+給付金年額63,720円=2,418,172円(月額201,514円)となります。
 
 
初診日が厚年加入中か国年のみの加入中かで、随分変わってくるので在職中に病院に行けるなら行っていたほうがいいですね^^;
 
 
※追記
令和4年6月10日に障害基礎年金2級の受給権を得たので、国民年金保険料は法律上当然に全額免除となり、受給権発生月の前月である令和4年5月以降は法定免除による全額免除となります(老齢基礎年金の2分の1に反映)。
 
法定免除にはなりますが、申し出れば将来の老齢基礎年金を増やすために申し出月分から保険料を納めていく事を希望する事もできます。
法定免除の部分は過去10年以内であれば保険料を追納する事ができます。
 
平成30年7月以降は未納でしたが、令和4年5月以降は法定免除になる。
法定免除は障害等級3級にすら該当しなくなって3年が経過する月まで可能です。
 
なお、途中で厚年に加入したり国民年金第3号被保険者になった時は、法定免除期間になりません。

 

 

 
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6月12日の第350号.雇用保険からの失業手当を受給する時と障害のある人の場合の手当優遇や老齢の年金。

(内容)
1.失業手当と年金との調整。
2.働いていたが途中で失業して失業手当。
3.自己都合による退職をして失業手当の申請をする。
4.大怪我をして障害年金受給。
5.60歳超えてから再就職した。



(以降の発行予定記事)
6月19日の第351号.どうして現在の年金受給者の年金額の伸びを抑制したり、厚生年金加入を拡大したりしようとするのか。

6月26日の第352号.国民年金保険料を40年から45年納めるというのは何を目指しているのか。厚生年金との比較。

7月3日の第353号.在職老齢年金と高年齢雇用継続給付金を受給する際の年金計算事例と、給付金の縮小。

7月10日の第354号.受給者が特に多い高齢になってからの遺族年金。

7月17日の第355号.配偶者や子と別居の場合の遺族年金と、父母と別居の場合の遺族年金の取り扱いの違い事例。

7月24日の第356号.65歳からの老齢の年金額を強力に増額させる年金の繰下げが利用できない事例と、障害年金消滅のタイミング。


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