今の年金制度とは全く違う年金を貰っている生年月日の人とその計算の違い。 | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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知れば知るほど奥深い年金制度!
僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

おはようございます!
年金アドバイザーのhirokiです。


まず先に本日11月15日水曜日の20時の有料メルマガご案内です。

11月15日の第320号.昭和61年3月31日までに共済を貰う資格がある人は、昭和6年4月1日以前か2日以降生まれでは年金が全く違う(重要)

・事例と仕組みから学ぶ公的年金講座(月額770円税込み毎週水曜日20時にメルマガ発行)
途中で登録されてもその月の発行分はすべてお読みいただけます。

(はじめに)
今の年金は国民年金から65歳になると老齢基礎年金、厚生年金や共済年金からは老齢厚生年金が支給されるものであるというのが一般認識です。

その基準となるのは大正15年4月2日以降生まれの人がその年金を受給します。

しかしながら大正15年4月1日以前生まれの人(令和5年に97歳以上くらいの人)に限ってはそれらの年金をもらわずに、昭和61年3月31日までに存在した旧年金制度からの年金を受給しています。

大正15年4月1日以前生まれの人(大正14年度までの生まれ)は旧年金制度時代の昭和61年3月31日までに60歳に達するので、必ず旧年金制度の受給者となります。


大正15年4月2日以降生まれの人(昭和元年度以降生まれ)は新年金になった昭和61年4月1日以降に60歳を迎えるので、その人たちは現在の老齢基礎年金とか老齢厚生年金を受給します。

新か旧かの判断は大正15年4月1日以前生まれか、4月2日以降生まれかで判断するといいです。


しかし、本日20時に発行する有料メルマガは昭和6年4月1日までの生まれか、昭和6年4月2日生まれかで新旧を判断する事例になります。

これが関わってくる人は共済期間がある人になるのですが、昭和61年3月31日までに共済期間が20年以上を満たして退職すると昭和6年4月1日までの生まれの人は旧年金制度を受給し、昭和6年4月2日以降生まれの人は新年金制度を受給します。


ところが新年金制度の人も共済年金に限っては旧年金を受給して、国年や厚年は新年金を受給するという年金記録を持った人がいます。

どうして昭和6年度前後で分けるのか、どうして1人の人が新旧2つの年金を受給するという普通では考えられない事が起こっているのかを事例で考えていきます。

重要な部分ではありますが事例はあまり複雑にならないように、できるだけ標準的な内容にしています。

(本日の有料版ご案内はここまで)



では本題です。
(この無料メルマガで発行している記事内容は有料メルマガ記事の内容とは異なります)。

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1.大正15年度前後生まれで全く年金の形が異なる。
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現在の年金制度は65歳になると国民年金から加入期間に比例した年金である老齢基礎年金、そして厚生年金や共済年金に加入していた場合は老齢基礎年金の上に過去の報酬に比例した年金である老齢厚生年金を支給するという形がベースになっています。

昭和61年4月1日に新年金制度になって以降に60歳を迎えて年金を貰う人は全てその形となります。


しかしながら新年金制度になる前の従来の年金制度だった昭和61年3月31日までに60歳に到達した人などは今の年金の形とは全く違う年金を受給しています。

それは大正15年(1926年)4月1日以前生まれの人です(令和5年に主に97歳以上の人です)。


その人たちは昭和61年(1986年)3月31日までに60歳になるので、今の常識となっている年金の形とは全く違う年金を受給しています。

新年金制度前に60歳になってた人は今も従来の年金を受給しています。


昭和61年4月からは新しい年金に改正されたんだからそれに変更して支給するんじゃないの?と思われそうですが、年金というのは法律が変わってもその新しい法律になる前の制度での年金を受給できる人は、従来の制度で支払います。


これを経過措置と言いますが、これが年金を複雑にしている原因の一つでもあります。
法律が変わっても終わったはずの昔の法律が亡霊の如く存在し、しかも影響し続けるのであります。

よって年金というのは今の最新の仕組みだけを追いかけるわけにはいかず、必ず年金の歴史とセットになります。
なので僕の記事ではちょくちょく年金の歴史を混ぜて書く事が多いわけです。


なぜ新しい法律になっても、従来の古い法律に基づいた年金を支給したりするのか。


それは年金というのは老齢の年金であれば老後の生活保障をするものであり、あらかじめ決められた計算式で支給されるという期待を持ってそれまで保険料を支払ってきました。


そろそろその計算式に基づいた年金が支給されるよね!って思ってたら、急に法改正で計算式が変わってしかも低い金額になってしまったら生活設計が狂いかねないですよね。

年金は大切な生活資金なので、法改正されるたびにコロコロ変わられたらたまりません。


よって、古い法律の時にすでに年金を貰う条件を満たしていたなら、その後に法律が変わってもその年金を一生涯支給し続けるという事をします。

なお、そのような経過措置が用いられるのは多くは老齢の年金の方です。


遺族年金(500万人ほど)や障害年金(230万人ほど)は老齢の年金(4000万人ほど)に比べて受給者がかなり少ないので、影響が大きい老齢の年金の方に経過措置が用いられる事が多いです。

というわけで今回は大正15年4月1日までの人の年金と、大正15年4月2日以降の現在の年金を受給する人の年金を比べてみましょう。


年金の中身も全く違います。
なお、旧年金の計算式は無理に覚えなくて構いません。

もう終わった制度だからですね^^;僕は知っておかなきゃいけないですが…


ちなみに新年金制度が適用されるのは大正15年4月2日以降生まれの人ですが、この生年月日以降の人は昭和61年4月1日以降に60歳になるから新年金制度の人になるわけです。


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2.現在の年金制度の人。
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◯昭和20年7月5日生まれのA夫さん(令和5年は78歳)

・1度マスターしてしまうと便利!(令和5年版)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法。

・絶対マスターしておきたい年金加入月数の数え方(令和5年版)。


18歳年度末の翌月である昭和39年4月から昭和59年3月までの240ヶ月間は厚生年金に加入しました。
この間の平均標準報酬月額は35万円とします。
(20歳になる昭和40年7月から昭和59年3月までの225ヶ月間が老齢基礎年金に反映。20歳前の15ヶ月間は老齢基礎年金の計算の上ではカラ期間になります)


退職し、昭和59年4月からは国民年金に普通なら強制加入になりますが、厚生年金期間が240ヶ月以上の人は昭和61年3月までは国民年金に任意加入でした。

この24ヶ月間は任意加入しなかったため、期間としては未納ではなくカラ期間となります(カラ期間は老齢の年金を貰うための最低受給資格期間10年の期間に含みます。平成29年7月31日までの場合は25年必要)。


ちなみにこの24ヶ月に専業主婦などの配偶者がいた場合は、その妻も国民年金任意加入扱いになります。
サラリーマンの専業主婦だった期間も任意加入しなければもちろんカラ期間の扱い。



ちなみにどうして昭和61年3月までは厚年期間が20年以上ある人を国民年金に強制加入させなかったかというと、従来の法律は厚生年金20年以上あれば将来は厚生年金が受給できるので、わざわざ国民年金に強制加入させる必要はないと考えられていたから。


配偶者である妻も強制加入にしなかったのは、将来夫が受給する厚生年金から配偶者加給年金が支給されて妻の保障がなされるので国民年金に強制加入させる必要がないと考えられたからです。


さて、昭和61年4月になるとそのような人も全て国民年金の被保険者にするという形に変更され、60歳までは国民年金の強制加入となりました。

よって、A夫さんもその妻も国民年金の被保険者として強制加入となりました。



A夫さんは昭和61年4月から平成4年5月までの74ヶ月間は国民年金納付して、平成4年6月から60歳前月の平成17年6月までの157ヶ月間は未納にしました。

さて、A夫さんはいくらの年金を受給するでしょうか。


A夫さんの生年月日であれば、年金受給資格期間が25年以上あれば厚生年金は60歳から受給できます。
全体で25年に足りなくても、昭和27年4月1日以前生まれの人は厚年期間(共済も含めていい)が20年以上あればそれでも受給権が発生しました。



まず年金記録を整理します。


・厚年期間→240ヶ月
・カラ期間→24ヶ月+15ヶ月(20歳未満の厚年期間は老齢基礎年金においてはカラ期間)
・国民年金保険料納付→74ヶ月
・未納→157ヶ月

よって、全体の年金の受給資格期間は300ヶ月以上(25年以上)を満たしているので年金を受給できます。
なお、前述したように厚年で240ヶ月あるので、これのみでも満たしています。


60歳から特別支給の老齢厚生年金が受給できますが、それは省いて65歳からの年金額を計算していきましょう。
(久しぶりに計算は従前保障額にて計算しています。乗率が5%高い計算→いつもは7.125とか5.481でやっていますが5%高い7.5や5.769での計算です)


※厚生年金受給開始年齢(厚生労働省)


・老齢厚生年金(報酬比例部分)→35万円(平成6年再評価率を用いての額とします)×7.61(生年月日による乗率)÷1000×240ヶ月×従前保障額令和5年度改定率1.014=648,189円


・老齢厚生年金(差額加算)→1,652円(68歳以上の人)×1.032(生年月日による乗率)×240ヶ月ー792,600円(68歳以上の人の老齢基礎年金満額)÷480ヶ月×225ヶ月(昭和36年4月1日以降の20歳から60歳までの厚年期間)=409,167円ー371,531円=37,636円

・老齢基礎年金→792,600円÷480ヶ月×(20歳以上60歳までの国年同時加入の厚年225ヶ月+国年納付74ヶ月)=493,723円



ちなみに65歳時に65歳未満の生計維持している配偶者がいると、配偶者加給年金が付く場合がありますが、A夫さんの生年月日によると63歳時点で65歳未満の配偶者がいるかどうかを見ます(受給開始年齢の表のリンクを参考)。
A夫さんが65歳以降も妻は65歳未満だったとします。


よって、65歳以降の年金総額は老齢厚生年金(報酬比例部分648,189円+差額加算37,636円)+配偶者加給年金397,500円+老齢基礎年金493,723円=1,577,048円(月額131,420円)

なお、配偶者加給年金は原則として妻が65歳になるまで。


※参考
厚生年金の報酬比例部分の乗率はいつもなら7.5でありますが、昭和61年4月からの新年金制度以降にその乗率を20年かけて10から徐々に7.5まで引き下げていったので(大正15年度~昭和20年度生まれまでの20年間)、その最中にあるA夫さんは7.5より少し高い7.61になっています。

昭和21年4月2日以降生まれの人は全て7.5(平成15年4月以降は5.769)です。

この経過措置の数値は膨大なので表を見て確認します^^;暗記するところではないので(笑)


差額加算を計算する際の1.032という生年月日による乗率もその名残です。
昭和61年4月1日以降に大正15年度から昭和20年度までの生年月日20年かけて乗率を引き下げていく過程になるので、やや高い乗率になっています。

元々は乗率は1.875ありましたが1.000まで引き下げました(昭和21年4月2日以降生まれの人は全て1.000)。


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3.大正15年4月1日までの旧年金制度の人の年金。
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◯大正15年2月16日生まれのB男さん(令和5年は97歳)


20歳になる昭和21年2月は国民年金制度はまだ存在しておらず、また、会社勤めをしていなかったB男さんは何も年金には加入していませんでした。

昭和36年4月になると正式に国民年金制度が始まり、昭和37年3月までの12ヶ月間加入しました。


昭和37年4月から昭和57年3月までの240ヶ月間は厚生年金に加入。
なおこの間の平均標準報酬月額はA夫さんと同じく35万円とします。

厚年で20年以上あったので、昭和57年4月から60歳前月の昭和61年1月までの46ヶ月間は任意で国民年金に加入しました。


さて、いくらの年金を受給する事ができるでしょうか。


まず年金受給資格期間は厚年で20年以上あるのでそれで受給資格を満たします。
もし厚年単独で20年以上なければ国年や厚年、共済と合わせて全体で原則25年が必要ですが、B男さんは短縮措置あり(通算年金と言いますがこの記事では無視して話を進めます)。


・60歳からの厚生年金(報酬比例部分)→35万円×10(乗率)÷1000×240ヶ月×改定率1.016(←昭和13年4月1日以前生まれは少し高めの1.016)=853,440円

・60歳からの厚生年金(定額部分)→3099円(令和5年度旧厚生年金定額単価)×240ヶ月=743,760円

・65歳からの国民年金の老齢年金→2539円(令和5年度旧国民年金単価)×58ヶ月=147,262円

配偶者加給年金は228,700円。


よって年金総額は厚生年金(報酬比例部分853,440円+定額部分743,760円)+配偶者加給年金228,700円+国民年金147,262円=1,973,162円(月額164,430円)

この年金を終身受給します。
旧時代に老齢基礎年金とか老齢厚生年金というものはありません。


なお、配偶者加給年金は新年金制度よりも少ないですが、妻が65歳を超えても加算され続けます。
旧年金は妻がいる限り支給されるものでした。

妻が死亡するか、妻と離婚などしない限り加給年金は付き続けます。
新年金制度の加給年金は配偶者が65歳になると消滅しますが…


また、昭和61年3月31日までの制度は国民年金も厚生年金も共済も独立した存在だったので、原則25年の年金受給資格期間を満たした上で年金支給はそれぞれが加入した分での計算になります。

それに、年金加入期間は最低でも1年以上ないと受給できません。

例えば国民年金がこの場合は58ヶ月ありますが、もし12ヶ月未満の10ヶ月程度しかなければ10ヶ月分は掛け捨てとなります。



…このように新年金制度による年金を受給しているA夫さんと、旧年金制度を受給しているB男さんの年金の計算は全く違うものになります。


その影響が大きい理由はやはり昭和61年4月1日以降から60歳になっていく人からは乗率を20年かけて引き下げていったりしたので、引き下げる前に年金受給権を得られた人は高めの乗率になっている事が影響しています。

ちなみにB男さんの年金は旧年金制度であり昭和61年4月以降は廃止されてるので、計算式を無理に覚える必要はありません。

ただし、今97歳以上くらいの人は今もその年金を経過措置として終身で受給します。


それでは本日はこの辺で!
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11月15日20時の第320号.昭和61年3月31日までに共済を貰う資格がある人は、昭和6年4月1日以前か2日以降生まれでは年金が全く違う(重要)


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(11月以降の記事)

11月1日の第318号.あの人の2倍給料貰ってたなら、自分の年金はあの人の2倍になるが、年金は低所得だった人ほど有利になっている。(発行済み)

11月8日の第319号.共済が厚年に統合される前から年金が貰える人と、統合後に年金が貰える人の大きな違い事例。(発行済み)

11月15日の第320号.昭和61年3月31日までに共済を貰う資格がある人は、昭和6年4月1日以前か2日以降生まれでは年金が全く違う(重要)

11月22日の第321号.障害年金受給者の年金受給終了までの一般的な流れと受給事例。

11月29日の第322号.未納が多いのに遺族年金が貰える場合と貰えない場合の重要事例。

12月6日の第323号.父母が子の死亡による遺族年金を受給する場合の同居時と別居時、そして隠し子の存在。

12月13日の第324号.障害年金総合事例2つ

12月20日の第325号.遺族年金総合事例4つ

12月27日の第326号.老齢の年金総合事例4つ

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・事例と仕組みから学ぶ公的年金講座(過去記事改訂版)
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11月5日「Vol21.年金は物価や賃金に変動するが、数多くの社会の変動に悩まされ改正に追われた」を発行しました。

11月12日Vol22.マクロ経済スライドによる将来の高齢者の年金水準を高める事と、物価や賃金による年金額の改定。を発行しました。

(改訂版バックナンバー)


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