こんにちは。
年金アドバイザーのhirokiです。
・まぐまぐ大賞2020をダブル受賞したメルマガ(5年連続受賞)
https://www.mag2.com/events/mag2year/2020/category/knowledge.html
非正規雇用者というと厚生年金に加入できないというイメージを持たれてる事が多いですが、必ずしも厚生年金に加入できないわけではないです。
例えばアルバイトでも加入する事もある。
厚生年金に加入するには週の労働時間が正社員の4分の3以上、かつ、月の勤務日数が正社員の4分の3以上という原則の条件がある。
この条件に当てはまれば非正規雇用であっても厚生年金と健康保険の被保険者になる。
厚生年金に加入させてくれるかどうかは会社の裁量に任されているという誤解もあるけども、上記の条件に当てはまっていたら会社は労働者を厚生年金や健康保険に加入させなければならない。
しかしながら、会社が厚生年金や健康保険に加入させる事を渋る事が時々問題になる。
厚生年金や健康保険の保険料は会社も折半して労働者の保険料を支払っているため、そのような社会保険に加入させるとなると会社の負担が増える事になる。
よって加入を渋るような会社もあったりする。
さて、平成28年10月から先ほどの4分の3の条件から加入条件が緩和されて、今現在は非正規雇用の人は厚生年金に加入しやすくなった。
今ある条件としては、週に20時間以上の労働、月に88000円以上の給与、1年以上の雇用が見込まれる、学生ではない事、会社規模が501人以上の条件をすべて満たすと厚生年金と健康保険に加入できる。
条件が501人以上の従業員がいる会社になっていたため、平成28年10月当初はそんなに厚生年金に適用される人は多くはなかった。
厚生年金加入者は全体で4000万人程いるけども、平成28年10月の緩和で25万人くらい増えた程度だった。
加入条件が緩和されたにもかかわらず、厚生年金に加入する人が微増だったのはどうしてか。
厚生年金に加入できるのは喜ばしいはずなのに、嬉しいとは思わない人もいたから。
そう、負担が増える会社側からの抵抗が大きかった。
特に外食産業は短時間労働者を雇ってる場合が多いので、その従業員が厚生年金や健康保険に加入となると、会社の負担が一気に増えてしまう。
なので、妥協して会社規模は500人以上の場合という事になっていた。
しかしながら、それではなかなか被保険者は増えないので、令和4年10月からは100人以上、令和6年10月からは50人以上というふうに更に緩和されていく。
ところで、なぜ厚生年金に加入する人を増やしたいのか。
それは主に二つの原因がある。
まず一つは国民年金第三号被保険者の問題。
国民年金第三号被保険者というのはよく話題になる事が多いですが、なぜかというと保険料を支払わなくても支払ったものとして将来は老齢基礎年金額に問題なく反映するから。
特にサラリーマンや公務員の専業主婦がこの国民年金第三号被保険者に該当する事が多かった。
専業主夫の場合もあるが、99%は妻が専業主婦。
専業主婦自身が保険料を支払わなくても、年金が貰えるという仕組みがゆえに、働く女性からの批判が平成9年頃からとても強くなっていった。
平成9年あたりから夫婦共働き世帯が専業主婦世帯より多くなって多数派になってきたからだ。
国民年金第三号被保険者制度は昭和61年4月にできたものではあるけども、当時は女性の年金が確立された事により、批判など無くてむしろ高い評価だった。
マスコミもこの制度を高く評価した。
ところが保険料支払わなくても年金貰えるという事に反発した働く女性からの批判が強く、時代が進むにつれて国民年金第三号被保険者を縮小していく方向となった。
単純にその数を減らせばいいというものではなく、この国民年金第三号被保険者制度自体はとても合理的な制度であり、不公平なものではなかった。
これがそも不公平ではない事は、昭和61年3月までの従来の年金制度と照らし合わせて考える必要がある。
なんとなく感情的に不公平だと言っている人が多い。
※国民年金第3号被保険者がそもそも不公平ではない歴史的な理由と計算での表示(有料メルマガバックナンバー)
この問題を解決するために必要だったのが、主にパートやアルバイトなどの非正規雇用者が多い専業主婦の人を厚生年金に加入しやすくするというものだった。
だから週20時間以上の労働、88000円以上の給与という水準で厚生年金に加入しやすくなった。
これにより、国民年金第三号被保険者になれる人は縮小されていっている。
なお、国民年金第三号被保険者になるためには年間収入見込みが130万円未満という事になっている。
なので130万円以内に抑えるために労働時間や日数を減らしたりして、もっと働きたいのに抑制しながら働いてる人も多かった。
厚生年金に加入するのであれば、130万円とかそんな事を気にせず働けるだけ働いたほうがいい。
次に2つ目の原因は年金財政を安定させるため。
厚生年金の被保険者が増えると、それだけ保険料を負担する人が増えるので年金の財政は安定の方向に向かう。
少子高齢化により、年金を受給する人は増え続けるのに、保険料支払う現役世代はあまり増えない。
そうなるとある程度一定の生活保障をする年金を支給するには、少ない現役世代から多くの保険料負担をしてもらう必要がある。
際限なく現役世代に負担を課すと、彼らの生活が成り立たなくなってしまう。
よって、今までは国民年金第三号被保険者として保険料負担はしていなかったけども、そのような人が保険料負担の側に回る事で今後も増え続ける年金受給者を支える一人となり、財政が安定する。
子供が急激に増えていく事は無いので、本来は保険料を支払わなくてよかった女性が支払う側に回り、そしてまた本来は年金受給をしてるはずの高齢者の人が継続雇用などで厚生年金に加入して保険料を支払う側に回る事で、年金を維持していくための大きな力として注目されている。
ちなみに、このように非正規雇用の人を厚生年金に加入させると、年金制度にとっては望ましいかもしれないが、個人単位ではどうなのかと思われる。
これについては厚生年金加入したほうが将来の年金は増えるので、加入していたほうがオトクである。
もし厚生年金に加入しないで、国民年金のみの保険料を支払うとすれば、将来はどれだけ多くても年額780,900円(令和3年度満額)の年金のみとなる。
厚生年金に加入しておくと、その国民年金の額の上に今までの給料やボーナスに比例した年金も上乗せで支払われる事になる。
40年加入で計算すると、88,000円×5.481÷1000×480ヶ月=231,517円の年金が増える。
障害を負った時も給付の手厚い障害厚生年金になる。
あと、健康保険に加入するので、もし病気や怪我で働けない場合は傷病手当金という有難い手当が最大1年6ヶ月支給される。
国民健康保険加入者には傷病手当金が無いので、健康保険の大きな特徴ともいえる。
傷病手当金は支給開始日の属する月以前の12ヶ月平均の標準報酬月額を30日で割って、3分の2したものが日額になる。
・傷病手当金日額→平均が88000円として、30で割ると2,930円(10円未満四捨五入)
2,930円÷3×2=1955円となる。
1年6ヶ月の日数約550日貰うなら、1,075,250円支給される事になる。
なので、厚生年金と健康保険に加入するメリットは、長い目で見ると大きいものがある。
余談ではあるが、非正規雇用者として働いてる人は現在は2000万人を超える。
ちょうど30年ほど前は非正規雇用者は600万人程だったが、急増していった。
その背景としてはバブル崩壊で銀行の貸し渋りによる不景気が続き、会社がコストの削減のために正社員ではなく非正規雇用者に置き換わっていった事が上げられる。
さらに海外から安い商品が入ってくるとなると、相対的にコストの高い日本商品は売れなくなる。
海外からの安い商品に対抗するには安い費用で効率的に仕事を進める必要がある。
また、政府による規制を削減し、経済活動を自由にする。
外国人が日本で活躍しやすいようにもして、日本や世界の経済を活発にしようと。
このような政策が2000年代前半から強くなり、コストのかかる正社員は非正規雇用にして、低い給与に抑えるようになった。
そして、終身雇用や年功序列型賃金も終わった。
社員は一旦会社に入ると、基本的に定年までクビになる事は無く、毎年確実に給与は上がっていた。
日本で長い間採用されてきた雇用システム。
しかし、終身雇用だと会社に利益に貢献できない社員をクビにできないし、年功序列型だと労働力のピークを迎えても給料は上げ続けないといけない。
コストばかりかさんでしまう。
そのような慣行も見直され、その結果中高年はリストラされ、代わりに人件費の安いパートや派遣社員が急増していく事になった。
また、正社員ではなく非正規社員が増える事で、正社員と非正規雇用者の間の給与格差が問題になっていったが。
正社員と非正規雇用の格差が問題になる中で、ここでも厚生年金に加入してる人してない人という違いがあると 将来貰う年金にも格差が生じてしまうので、その格差を埋めるためにも非正規雇用者の厚生年金加入促進は意義のある事だろう。
ーーーーーーー
・事例と仕組みから学ぶ公的年金講座(月額770円税込み毎週水曜日20時にメルマガ発行)
登録初月無料。
途中で登録されてもその月の発行分はすべてお読みいただけます。
https://www.mag2.com/m/0001680886
8月11日の第202号は「女子の年金が一般的な支給開始年齢より早めに支給されてきた名残と、その特徴的な年金計算」
8月18日の第203号.70歳以上在職者から見る過去の厚生年金加入記録の特徴と、65歳過ぎて初めて年金受給権を獲得した後。
8月25日の第204号.年金にかかる源泉徴収税額の計算と、確定申告(還付申告)時の税金の計算。
8月4日の第201号は「65歳以上の在職者の年金停止(基金あり)と、そもそも年金が停止される時はこういう条件を満たす必要がある。」を発行しました。