国鉄共済組合の財政逼迫と、年金破綻寸前から復活までの歴史(前半) | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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知れば知るほど奥深い年金制度!
僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

こんにちはー。

年金アドバイザーのhirokiです。
 

今のJRというのは、皆さんにとっては馴染みが深く、とても身近なものですよね。
企業としても優良企業というイメージでしょうか。
 

ところが、今のJRは約40年ほど前ごろは非常に経営が悪化して、特に国鉄職員へ年金を独自に支給していた国鉄共済組合はほぼ破綻していたので、他の年金制度からの多額の支援金により救済されて再建されたという過去を持つ。
 
国鉄は国が運営していたが、昭和62年に民営化されて、平成9年4月に厚生年金に統合されました。
 
様々な問題を抱え、年金支払いが窮地に陥っていた国鉄共済組合の年金の歴史を振り返ります。
 
 
共済組合の歴史の中で、最も歴史の古いものは国鉄共済組合です。
 
明治40年に設立され、大正7年に公務による傷病で退職した人に対して年金の支給を始めるようになりました。
 
 
なんで早々と共済組合が設立されたかというと、当時は職員の中で肉体労働者(雇庸人と呼ばれる)の比率が高くて、危険な労働も多かったのでそういう人達に対する保障が必要だったからです。
 
 
まあ、危険な作業も多いから、万が一が起こっても心配しないで働いてねって事ですね^^
 
 
保障をしてくれるとやる気も出るからですね。
 
 
まさに戦争中にできた厚生年金(昭和17年)の創設時も戦争のために働く人たちの士気を高める目的でもあった。
 
年金制度というのは働く人の老後や、万が一の時の保障をするから安心して働いてもらうという機能を持つ。
 
 
その後、昭和23年に国家公務員共済組合法が出来て、国鉄共済はこの国家公務員共済組合法に基づいた法律となって、昭和31年に日本専売公社(今の日本たばこ産業→JT)、電電公社(今のNTT)とともに、公共企業体の共済組合となって年金給付をし始めました。
 
公共企業体というのは、業務が公的な性質が強いものがそう呼ばれていました。
 
 
さて、戦争で日本が負けた後に、それまで他のアジアの地域に住んでいた日本人が日本に帰ってきたり、兵についていた人がもう武装解除して日本に戻ってきたりしました。
 

約700万人の人が日本に帰ってきたわけです。
 
 
ところが、日本はどこもかしこも焼け野原ですよね^^;
帰ってきたところで日本には何もない。
 
特に都市は散々アメリカ軍に空爆されて多くの非戦闘員である市民が亡くなりました。
 
 
昭和20年3月10日の東京大空襲が有名ですが、東京だけでなくいろんな都市がどこも同じように空爆を受けた。
 
 
戦争というのはこういう市民を狙った攻撃というのは禁止されてるものですが、アメリカは無差別大量虐殺を行った。
原爆なんかはまさに無差別大量虐殺の最たるもの。
 
 
健康な男子は兵士として出払ってる中で、日本に住んでるのは女子、老人、子供が大半なのにそれを承知で攻撃してきた。
 
 
戦争で日本人は270万人が死亡しました(一般人100万人、兵士170万人)。
そして戦後は焼け野原になってしまって日本は何もないのに、700万人の人が帰ってきたところで何しようもないですよね。
 
 
 
だから、このように職にあぶれた人たちを職に就かせるためにも、国鉄に大量採用したわけです。
 
昭和40年頃になると50万人くらいいた職員が、30万人ほどまで減少しました。
 
 
 
なぜ職員が減少していったかというと、自動車が発展していった背景があります。
 
鉄道交通から自動車交通に変化し始めたんですね。
 
 
そうすると鉄道に対する需要が少なくなっていくから、採用を抑えたりして現役職員を減らしていく必要がある。
 
 
しかし、戦後に大量に採用した職員が、昭和40年から昭和50年代にかけて一斉に退職し始めるわけです。
 
 
 
国鉄共済組合の年金受給者は50万人ほどいたのに対して、30万人の職員の保険料で年金給付を行うという歪んだ構造になっていったわけです。
 
 
そうするとどうなるかって事です。
 

 
まだ、昭和40年代とか昭和50年代は、今現在のようにどんな職種であれ国民年金に加入して、すべての加入者で公平な保険料を負担して全員で国民年金制度を支えるような構造ではありません。
 
共済は各自の共済の中のみで年金をやっていた。
 

厚生年金なら厚生年金の加入者(主にサラリーマン)、国民年金なら国民年金の加入者(農業や自営業)、共済は共済の加入者(公務員など)でそれぞれ独立して年金を支給してねって頃です。
 
 
つまり、年金制度はそれぞれ独立した存在であったので、それぞれが保険料を好きに決めて、自分たちに有利な年金を支給するから他人は口出すな!って事ですね。
どこかの制度で年金支払いがピンチになろうと、知ったこっちゃないというのが昭和61年3月までの基本的な制度でした。
 
 
そんな中で、国鉄共済組合は年金受給者を支える現役国鉄職員数よりもはるかに多い年金受給者を抱える事になったんです。
 

昭和51年に保険料などの収入が2300億円くらいあったけど、支出がそれ以上になって90億円ほどの赤字となり、初めて赤字を出すようになった。
翌年昭和52年にはその赤字は360億円に膨らみ、当時国鉄共済が持っていた積立金4000億円を取り崩して年金の支払いに充てる事になった。
 

そうなるとどうしようか?
 
 
対策としては、職員から徴収する保険料を引き上げるか、年金受給者の年金引き下げるか、支給開始年齢を引き上げるかするしかない。
年金制度を保とうとする場合は、大原則としてこの3つの方法しかない。
 
 
その後も、国鉄の経営再建のために職員採用の大幅削減が必要となり(採用される現役職員が少なくなる)、ますます現役職員が少なくなって、逆に年金受給者が増えてくる。
 
 
年金受給者のほうが圧倒的に多い中(受給者50万人の現役職員30万人)で、年金をやりくりしなければならないから、見込みとしては現役職員から保険料を50%くらいは取らないと国鉄の年金受給者には年金払えない状況に陥った。
 
まあ…たとえば50万円の給料支払われたら、その半分の25万円は保険料として徴収される事になるという事ですね^^;
 
さすがに現実的ではないですね(笑)
 
 
このように時代の流れで鉄道に対する需要から自動車に代わってきたからというのも、国鉄の財政のひっ迫の原因ではありますが、国鉄自体の年金の支払い方にもとても問題があった。
 

共済組合っていうのは、そもそも国の年金制度である厚生年金とか国民年金のような給付よりも高く給付をしたいって思うから共済組合を産業ごとに設立したりするんですよ。
昭和の時代は賃金も物価も、退職金運用なんかもアゲアゲだったから、そういう強気になる事が出来た。
 

ところが産業というものは時代とともに斜陽化していく事もよくある。
「今」人気の会社が、ある時の時代も人気とは限らない。
消えてるかもしれない。
 

たとえば昔は石炭産業が花形産業でありましたが、昭和30年頃からは石油が主流になって、石炭業界は消えていきました。
石炭は今はオーストラリアから安く大量に輸入するし、機械も中国なんかの国から安く輸入する。
 

こうなるとその特定の共済組合は財政が悪くなり、独自ではやっていけなくなる。
 
だからこそ年金一元化していく事が課題となって、平成27年10月には厚生年金に共済はすべて統合されたわけです。
 
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