中共政権は、10月に朝鮮へ石油を供給したことがわかった。

11月28日(火)日経朝刊8面の記事によると、

・10月の北朝鮮向け原油輸出は5万8685トン。前年同月比67.7%増

・単月の輸出量としては今年2番目に多い

・10月のどの時点で朝鮮に供給されたかは不明

・9月の朝鮮への輸出量はゼロだったが、アメリカを除いた中国原油の主要輸入国(日本・インドネシアなど)への輸出もゼロだった

・9月の輸出量全体は前年同月比76.5%減

文脈を考えると、「9月の輸出量全体」は「アメリカ向け輸出」にかなり近そうだ。

さて、そうすると、また考え直しなのだろうか?

それとも、石油輸出再開が核実験の前か後かを捕捉するのが、判断するより先なのだろうか?

よくよく日経朝刊の同じページを見ると、こういう記事もある。

(Quote)
「飢える・撃たれる・凍える」 北朝鮮、国民に覚悟訴え

「銃が弱くて滅んだ国は多くても、飢饉(ききん)になって滅んだ国はない」。北朝鮮の労働党機関紙「労働新聞」あ二十七日、軍事力優先政治をたたえる長文の論説を掲載し、その達成には飢えて死ぬ覚悟など「三大覚悟」が必要だと北朝鮮住民に訴えた。(後略) (Unquote)

まだ、判断するのはやめておこう。

正日くん、確かに「飢饉で滅んだ国」は聞かないな。でも「エネルギー不足で滅亡寸前まで行った国(社会)」なら知ってるぜ。イースター島の先住民社会がそうだ。ジャレド・ダイヤモンドでも読んどいてくれ。(おっと、贅沢品は輸入不可なんだっけ? 今や本も贅沢品だよな?)

「凍える覚悟」が要るのは、石油を安定供給してくれるかどうか分からなくなったからだろう?

「撃たれる覚悟」が要るのは、同盟国が撃ってくるかもしれないからじゃないのか?

経緯を振り返ってみよう。


7月5日: 朝鮮、ミサイル発射実験(発射の事実は確認済み)

8月2日: 人民解放軍瀋陽軍区の部隊が、中朝国境にある長白山(朝鮮名: 白頭山)で軍事演習を実施

8月下旬or9月1日~: 中共、石油の対朝鮮供給を停止(継続中?)

10月9日: 朝鮮、地下核爆発実験実施と発表(爆発の成否は未確認)

10月12日~ : 人民解放軍済南軍区の部隊が軍事演習を実施

10月31日: 朝鮮、米中に6カ国協議再参加への同意を示す(時期は未定)


起こった事柄の表現を変えて並べなおしてみると...

① 朝鮮は弾道ミサイル発射実験を行った。

② 中共は朝鮮のミサイル実験に対して怒った。ミサイル発射から1カ月後に、朝鮮民族のシンボル白頭山を演習地にわざわざ選んで軍事演習を行った。

③ その後石油を禁輸した。(禁輸まで時間がかかっているので、中朝間で非公開のやりとりが色々あったに違いない)

④ 石油が禁輸された後に「核爆発実験を実施した」と朝鮮は発表した。

⑤ 核爆発実験実施の直後に、中共は「朝鮮半島担当」とされている済南軍区の部隊に軍事演習を行わせた。

⑥ 核爆発実験実施を発表した後に、朝鮮は6カ国協議への再参加に同意を示した。


ということは、「朝鮮は、石油を禁輸されたから6カ国協議に再度参加することに同意したわけではない」ということだ。

また、「中共は、核爆発実験に対して怒ったあまり石油を禁輸したわけではない」ということだ。経緯を見ると、中共はミサイル発射実験に対してまず怒ってみせている。

そして朝鮮は、「石油を禁輸してまで怒りを露にした中共を前にして、一度核爆発実験を実施してみせた」ということだ。或は少なくとも「核爆発実験を行ってみせたポーズをとった」というわけだ。

ということは...

「核爆発実験を実施した時点で、『6カ国協議には再度参加するポーズを少なくとも見せよう』という意思決定を朝鮮がすでにしていた可能性が高い」とmattは思う。

朝鮮が核爆発実験を実施したと発表することにこだわっていたこともわかる。エネルギー枯渇ぎりぎりまでの危険を冒しているからだ。

こういったことを考えてくると、「週刊アカシックレコード」の佐々木敏氏が述べているように、mattには「この核爆発実験発表は中共向け」と思える。(mattの論点は佐々木氏のそれとはずれているかもしれないが)

「何らか中共に対して不安を覚えなければならない理由」が金正日にはあるように思えてならない。

「中共が朝鮮に介入して傀儡政権を樹立する計画を立てているのでは?」という疑いは、例えばこういうところから出てきている。

前回書いた仮説が正しいかどうか、まだmattには分からない。

最も注目するのは、「石油と穀物の対朝鮮供給」だ。これで情勢の大半が決まる。

今のところ穀物の禁輸は中共はやっていない。石油の禁輸だけをやっている。

この石油の禁輸が続くかどうか、が第一の注目点だ。

第二の注目点は、穀物の供給量の更なる削減があるかどうか、だ。

この2つに注目していれば、中共が金正日をどう思っているか見当がつく。中共が何を発言したかに着目するより、どういう行動をとっているかに着目するほうが、ずっとよく分かる。

いずれにせよ、今のところは事態を観察し続けるしかない。

前回書いた仮説がもし正しいとすると、中共が朝鮮を占領した場合、日本としては懸念が増える。

難民ではない。難民の流出は全力を挙げて中共が抑えてくれるとmattは考える。

日本にとっての懸念は、中共が日本海に面する港湾を確保することだ。

清津に潜水艦基地を建設することができるようになる。

中共の「考えていること・やろうとしていること・すでにやりつつあること」はこういうことではないか、とmattは仮説を立てている。

[仮説]

(1) 中共の管理下にない核兵器を開発する隣国がこれ以上増えるのは中共にとって危険である。朝鮮の核兵器を自己の管理下に置きたい(或いは廃棄処分させたい)。

(2) 難民が無秩序にマンチュリアに流出することは避けたい。

(3) 2006年7月のミサイル実験をきっかけに、中共は朝鮮占領計画を実行に移そうと決意した。

(4) 占領計画の第一段階として、石油を禁輸することにした。これを継続し、金正日政権下の朝鮮経済が動かなくなり、朝鮮人が政権に反抗するのを待つ。

(5) 第二段階として、「住民の反乱対策を相談したい」と称して金正日を北京へ招待し、北京へ来たところで軟禁する。

(6) 第三段階として、誰か手ごろな朝鮮人を人民解放軍の護衛付きで平壌へ送り込み、傀儡政権を成立させる。(朝鮮軍は燃料が無いので、抵抗できない)

(7) 傀儡政権成立後は、石油と食料の供給を今年7月のミサイル発射実験前の水準に戻す。人民解放軍は朝鮮半島に駐留し続ける。核兵器は人民解放軍が接収する。

「誰か手ごろな朝鮮人」の候補としては、金正男が最有力だと思う。

前回、「中共軍が朝鮮半島北部を占領し軍政を敷く可能性」があることについて述べた。

この可能性の延長線上には、「中共軍が介入し、金正日政権に代わって中共寄りを鮮明にする朝鮮人をトップに頂く傀儡政権を成立させる」という可能性もある。

中共はそこまでやるだろうか?

やるかもしれない。

やらないと断言する理由は見当たらない。

1979年を思い出そう。「同じ共産主義政権」たる隣国ベトナムを中共は攻撃した。

いま朝鮮半島北部を中共が攻撃しても、別に不思議ではない。mattから見れば、「ああ、またやってるぜ」って感じで思うだろう。

ただ、シナ人の心理を考慮し例によって「面子」を重視するなら、

・2007年冬季アジア大会@吉林省長春
・2008年オリンピック@北京
・2010年万国博覧会@上海

が終わってからにしたいところだ。国威発揚行事をボイコットする国が出てくるのは困る。面子を喪ってしまう。

それでは、あと4年間放置するだろうか?

もう一度1979年を思い出してみよう。

1979年にソ連がアフガニスタンに軍事介入した後、アメリカや日本など西側諸国の多くが1980年のモスクワ五輪をボイコットした。

・1979年時点のソ連にとってのアフガニスタン
・2006年時点の中共政権にとっての朝鮮金正日政権

と、世界の他の国々にとって同じ扱いだろうか?

27年前には、アフガニスタンへのソ連の軍事侵攻を容認しない国はたくさんあった。

先月朝鮮に対する制裁措置が国連という場で打ち出されたが、それを見ても、「朝鮮のやっていることは容認できない」という意志表示を(例え表面的なものにせよ)している国が多いという事実は動かしがたい。(イランですら核実験に反対している)

そうすると、中共政権が軍事介入することに反対する勢力が金正日政権以外に出てこない可能性がある。アメリカが容認しさえすれば、中共政権が朝鮮半島北部に軍事介入しても、世界の大半の国々(韓国も含めて)はそれを容認する可能性がある。

上記の3つの行事もボイコットされない可能性が高いのではないだろうか。

とうとう中共が石油の対朝輸出を止めたそうだ。今朝の日経8面(※)に載っている。

石油を止めるのは食料を止めるのと同じくらい非常に過酷な措置だ。

すべてが止まる。なにしろ、人工的に "Peak-out of Oil" と "Petrocollapse" を起こさせるわけだから。

端的に言うと、食料を運搬する交通機関が止まる。停電がはなはだしくなれば、最後は上水道のポンプも止まる。

農村は自給できる可能性があるという意味では多少はましかもしれないが、とにかく昔のソ連式機械化集団農法はとれない。灌漑用ポンプも耕運機も収穫機も動かない。低い生産性で満足しなければならない。

肥料や農薬も手に入らないはずだ。仮に原料を調達して工場で製造できたとしても、燃料が無ければ農村まで運べない。

軍隊も困っているはずだ。100万人の地上部隊がいるそうだが、兵士が本当に飢えたら、どんなにすばらしい兵器を持っていても戦力にならなくなってしまう。

燃料がなければ、兵士がどんなに優秀で士気が高くても、近代的な軍事作戦の役には立たない。

朝鮮は中共を明らかに怒らせている。中共がどこまで我慢するか観察していたが、石油を止めたという報道が出たので、かなり「来ている」ことがわかる。

もう少し観察し続ける必要があるが、仮にこの禁輸が続くとすると、個人的な見解だが、

・中共軍が朝鮮半島北部を占領し軍政を敷く可能性

・中共政権と韓国が共同で朝鮮半島北部を管理する可能性

を頭に入れておく必要がありそうだ。

ことわっておくが、これでも、「朝鮮よりイランの方が重要」というmattの現状認識に変わりはない。

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※ 当初「6面」と記載していたが、「8面」が正しいので、投稿後に訂正した。

クーデターに成功した永楽帝はしばらく南京に滞在していたが、南京に従前からいた臣下達の批判が強いのを嫌って首都を北平に移した。都市名も北京と改称した。

南京で批判が強かったのは、彼があからさまに「正統な君主から位を暴力で奪い取った」からだ。

儒教には建前がある。「王者は徳を以って統治する」という建前だ。

今の日本語では意味が変わっているが、元々儒教では、暴力(実力)で権力を掌握して統治する者は「覇者」と呼ばれる。儒教では「覇者」は正統な君主ではないことになっている。

だから、革命(王朝の交代)に成功して政権を新たに取った者は、「前の王朝は徳を喪った。新君主には徳がある」と主張することになる。

或いは、前の王朝から「徳がある者に支配権を譲り渡す」という建前の「禅譲」をするのが望ましい、ということになる。

永楽帝の場合、あからさまなクーデターだったので、どうしても批判が出てきてしまう。

しかし、北京に遷都するということは、農耕社会の政治の中心を牧畜社会との境界線付近に置くことを意味する。

これ以後、明朝は安全保障上重大な問題を抱えることになった。

http://ameblo.jp/mattmicky/entry-10010845704.html#cbox

ここのコメント欄にあるように、実験は失敗したわけだが、3日前に University of Queensland から失敗の原因について報告があったそうだ。

日経産業新聞 10月17日(火) 10面:
“...(前略)... ロケット先端のカバーを外す窒素ガスの供給バルブが、バッテリーの充電不足で機能しなかったという。 (後略)”

めげずに研究を進めて欲しい。

読んでくださっている皆さんは、当然朝鮮の核実験報道に関心をお持ちだろうと思う。

同時に、「このmattって奴は、シナねたは書くくせに、朝鮮の核実験は書かんのか!?」とお思いかもしれない。

mattは「朝鮮は大勢に影響ない」と思っている。

もっとも、「将来シナ対策に使える同盟国の軍事に疎い国民の目を覚まさせる効果」くらいはあるとアメリカ人は思っているだろう。

注目しているのはイランだ。

アメリカによる朝鮮空爆は無いと思うが、イラン空爆はあり得ると想定している。

その後20年以上は、モンゴル政権と明との間にさしたる衝突は無かった。

明側は防衛一方で、北方に対しては交易を統制するようになった。自由に交易することを認めず許可制とするようになった。(註)

20年以上経過した1398年、明の建国者(太祖)は死亡した。

その孫(皇太孫)が即位し(建文帝)、北方の各地に分封されていた叔父たち(建国者太祖の息子たち)との間に緊張が高まった。

1402年、北平に駐屯していた太祖の四男は兵を挙げ首都南京を攻撃、建文帝を倒して帝位を奪った(永楽帝)。

クーデターだ。

クーデター側の部隊には、北方騎馬民出身者が少なからず混じっていたらしい。

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註: これは海上貿易も同様