
ヒトリシズカ という不思議な雰囲気をまとうタイトル。
日本、東アジアに分布している多年草の一種で、花言葉は「静謐」「隠された美」だそう。
「ストロベリーナイト」などの誉田哲也原作で、2012年のWOWOWドラマ。
この頃のWOWOWは今のNETFLIXのような、良い作品を多数作っていた。
このドラマも良質なサスペンスとして仕上がっている。
当時21歳の夏帆が13歳の少女から31歳の女性までを演じているが、その演技力に感服する。ただ単に年齢に合わせて化粧は衣装を変えているだけではない。
セーラー服の夏帆は、その表情やセリフの言い回しまで中学生に見えるし、31歳の夏帆は34歳となった今と変わらぬ少し愁いを帯びた表情で、20歳の年の幅を完璧に演じ分けている。
10代の頃は天使のような美少女ぶりで人気だったが、そのまま大人になっていたら女優としては息詰まっていただろう。年を重ねるとともに外見的な美と内面の美を丁寧に育んできた結果が、女優としての夏帆となって存在している。
この作品では夏帆がどれだけ「演じる」ということに真摯に向き合っているか、20代の頃からしっかりと一歩ずつ役者として足跡を残してきたのだということがよくわかる。
今の夏帆はこの頃からそこにいたのだ。
物語は1990年代半ばから2000年代半ばまでの10年間を、夏帆演じる伊東静加という一人の女性の人生を通して全6話で描かれる。
中盤で靜加が、刑事である伊東考俊(岸部一徳)とその妻・深雪(黒沢あすか)の間の子ではなく、深雪の連れ子で本当の父親は別にいることがわかる。
本当の父親はヤクザ物で、母親に暴力をふるう家庭で育つという過酷な少女時代を過ごしてきた。
静加が失踪したところから物語は始まるが、名前と住む場所を転々と変えていくなかで、自ら手を下さず人を殺めていく様が、実に不気味だ。
美しい外見には似つかわしくない冷酷な心を持って残酷な所業を繰り返していく靜加。
そしてなぜ、そのきっかけになる事件は5話で明らかになるのだが、意外にあっさりと靜加の残虐性が両親に明かされてしまうので、そこに至る過程をもう少し深く触れて描写してほしかった。原作では描かれているのだろうか。
一方で人の心を持たない残虐非道な女かと思わせておいて、最終話ではまったく違う一面を見せる。それは3-4話で暴力団である本当の父親の娘、自分の腹違いの妹の澪を助けて、一緒に逃亡する展開で、深い姉妹愛で必死に澪を守り抜こうとする靜加の姿が感動を呼ぶ。
最悪な幼少期を過ごした靜加だったが、母親を救ってくれた義父の考俊など、周囲には温かい人たちがいて決して孤独ではなかったはず。
だが、彼女の中の何かがそうした人の優しさを徹底的に拒絶するようになってしまう。
流れ者ばかり住むアパートの管理人・浜西タツ(緑魔子)によって靜加と澪は守られる。そのタツから違法に戸籍を譲り受けた澪は、成人し結婚して娘を産むが夫とは別居し寂しい生活を送っていた。
その成人した澪を演じているのが、なんと当時20歳の門脇麦。
現在ほど女優として尖がっておらず、どこにでもいそうな雰囲気の若い女性という趣。
今や演技派としてならす二人が姉妹役というのは、なんとも豪華である。
ラストシーンで、澪の娘を救って交通事故で命を落とす靜加と澪の深い愛が涙を誘う。
澪に素性を明かさないまま逝ってしまった靜加。
人を殺したことを告白した13歳の靜加が、両親に冷たく言い放った言葉。
「自分が何なのかわからない」。
彼女が求めていたものは与えられる愛情ではなく、自らが愛情を注ぐ相手だったのかもしれない。
人を殺すと罰が下される。被害者感情を考えると極刑は当然である。
その意見に異論はない。だが殺人者を死刑にしただけですべて丸く収まるのだろうか。
被害者やその遺族は本当にそれだけで心が休まるものなのだろうか。
殺人を犯すに至った過程をきちんと検証することで、将来の犯罪の芽を摘むことも大事だと思うのだが、現在の日本では期待すべくもない。
出演者
1話
木崎信吾(国分寺署地域課 巡査部長) - 高橋一生
大村和己(国分寺署地域課、巡査部長、木崎の先輩) - 村上淳
青木久則(私立探偵) - 長塚圭史
村井(清林大学法医学教室) - 滝藤賢一
平田(警視庁機動捜査隊) - 渋川清彦
沖田(警視庁捜査一課) - テイ龍進
森園(警視庁捜査一課管理官) - 菅原大吉
2話
山岸潤哉(足立署生活安全課防犯係) - 新井浩文
加賀誠(元暴走族) - 玉置玲央
尾関(足立署刑事課強行犯係長) - 三浦誠己
3/4話
鮎川五郎(警視庁捜査四課) - 松重豊
矢部充(西麻布署刑事課) - 温水洋一
南原義男(天洲会麻布代表) - 池田成志
南原悦子(南原の妻) - 内田慈
南原澪(南原の娘) - 内田愛
樋口(警視庁捜査一課係長) - 柳憂怜
警視庁捜査一課管理官 - 井上肇
5話
山川浩(静加の隣室の住人) - 山中崇
唐沢秀也 - 赤堀雅秋
松井晋平 - 森下能幸
吉住(西東京署刑事課係長) - 徳井優
最終話
藤岡巧(入谷署刑事組織犯罪対策課主任) - 二階堂智
浜西タツ(春菜荘大家) - 緑魔子
佐川真琴 - 門脇麦
佐川秀幸(真琴の別居中の夫) - 趙珉和
島倉(入谷署刑事組織犯罪対策課課長) - 木下ほうか
立原(入谷署刑事組織犯罪対策課) - 裴ジョンミョン
山瀬(入谷署地域課) - つまみ枝豆
多彩な役者が出ていて面白い。ベテランからバイプレイヤーまでドラマファンには顔なじみの面々だ。
若い高橋一生や長塚圭史(ほんとオヤジさんそっくり)、また滝藤賢一や渋川清彦、山中崇、松重豊などは当時、まだそれほど有名ではなかった。
新井浩文は好きな役者だったが、最近復帰報道が出ていたので配信系で活躍を期待。
気になったのは静加の少女時代を演じた、小林里乃。
キリっとした目が印象的な美少女だが、現在24歳。さぞ美形に成長していると思って見たらそのまま美人さんに成長。あまり活躍できていないのが残念。。。。