アメリカ駐在時代に観たのだけど、もう一回観たくなった。

ブログも記録しなかったが、当時はまだ本格的にドラマ・映画レビューを始めていなかったからだ。原作の前川裕は、「イアリー 見えない顔」もドラマ化されている。

 

黒沢清監督は本当に評価が真っ二つに分かれる監督さんだ。

シンプルに好きか、嫌いか。それだけ玄人好みする映画を撮るということだろう。

MATTは作風も画も好きなので、断然黒沢推しだ。

 

高倉幸一役の主演・西島秀俊は、妻・康子役の竹内結子とは「ストロベリーナイト」で、西野雅之役の香川照之とは「MOZU」でがっつりと共演していることから、息のあった演技が見られる。

 

中心人物となる謎多き隣人・西野を演じる香川は、WOWOW連続ドラマ「災(さい)」で、非常に似通った役を演じて、こちらでも不気味な存在感を発揮している。

「いい人」の仮面の裏に潜む、ドロドロした闇をたたえた恐怖を実に見事に表現している。

 

香川照之のいやらしくねちっこい役作りは完璧。

竹内結子の徐々に精神的に支配されていく演技が素晴らしい。

 

物語は序盤のテンポよい展開から、徐々に高倉夫婦が怪しい隣人の闇に取り込まれていくまでが、緊迫感を持って描かれる。

黒沢監督らしい画作り、たとえばガラスに移りこむ怪しい光や、風になびくビニールカーテン、暗い部屋や不安定な空間を強調する闇などは健在。

 

若い川口春奈や東出昌大が好演しているが、MATTが注目するのは前年公開の「ソロモンの偽証」で衝撃的なデビューを飾った、藤野涼子だ。

西野の娘・澪を演じているが、「ソロモンの偽証」に続いて16歳の新人とは思えない演技力で圧倒してくる。

どうして彼女が今もなお、それほどドラマ・映画に起用されないのか不思議でならない。

少なくとも、共演していた川口春奈よりも実力はダントツに上だと思っているが。。。。

藤野涼子。

キャリアのスタートが衝撃的な役ばかりだったから、その後使いづらいのだろうか。。。

 

凶悪で粗暴な殺人者も恐ろしいが、善良で人畜無害に見える隣人が、実は恐ろしい悪人だった、、、という怖さを、黒沢監督はいつものようにひたひたと忍び寄ってくる恐怖として表現、まさに面目躍如である。

 

主な共演者は、笹野高史、戸田昌宏、冒頭のサイコパス殺人犯にまだ若い馬場徹など。

 

本作は黒沢清監督作品の中でも割とエンタメ性が強いので、サスペンスとして気軽に楽しめるだろう。サクッと迫りくる恐怖を楽しみたいならお勧めの作品だ。