「夜ドラ」の名作排出が止まらない。

4人の30代女性が再会することで大人になって忘れていた、キラキラとした「あの頃の夢」をもう一度追いかけるという物語。

これ、民放が作ると陳腐なドラマになってしまいがちだが、そこはNHK。

作り手の想いがストレートに制作につながり、キャスティングも適切だから、良質な作品となる。今回はNHK大阪放送局制作。主人公の一人が途中で亡くなるなど、悲しい展開があるものの湿っぽくせず、泣いても笑い泣きにしてしまうあたり、関西らしい作りになっていると思う。

 

「夢」というと、管理職試験前の研修を受けた時に講師から言われた言葉が今でも心に残っている。

「最近のH社さんの社員さんから、夢という言葉を聞けなくなって残念」

本田宗一郎は常に「夢」を大事にしていた。夢こそが生きる原動力であり、良い仕事をするために欠かせないのだと。

 

ストレートに夢を追い求める姿は、人々の心を素直に震わせる。

このドラマの主人公である望月飛鳥(木竜麻生)と日比野ひかり(森田望智)が13年ぶりに再会することから、高校時代に天文部の仲間4人で追いかけていた夢にもう一度チャレンジしようと、水原周(片山友希)、木内晴子(伊藤万理華)を説得し、人工衛星を飛ばすプロジェクトを(無謀にも)スタートさせる。

 

個人的には、推しの4人の女優が集まること自体奇跡だったので、このドラマはまずキャストを知って観るのを決めた。

彼女らの役名はみんな空/宇宙を想起させることばが使われている。

鳥、ひかり、周、晴。

奥平大兼演じる宇宙工学を学ぶ大学生の金澤彗もそうだ。

ちなみに金澤がアルバイトをしていレトロなレストランの名前は「ロメット」。ロゴが「コメット」に線を一本足したようになっているのも、やはり。。。と思わせる。

 

また彼女らの高校時代を若手女優たちが、それぞれ自分の演じるキャストたちの特徴をよく捉えて演技している。飛鳥を田牧そら、ひかりを上坂樹里という、実力派の二人が熱演(上坂樹里は、森田望智の特徴をよく捉えていて素晴らしい)、周を白倉碧空、晴子を山下桐里という無名ながら、魅力的な女優さんが演じている。

 

物語自体はそれほど外連味はない。

4人の仕事や家庭を持つ女性が、ただ流れていく日常を過ごす人生から少し離れて、かつて青春時代に見た夢を、もう一度追いかけようというストーリー。

ここに物語のキーマンであるひかりの突然の死を軸に、登場人物それぞれの人生に大きな影響を与えていくことになる。

そこにはNHKらしい、分厚いキャスティングがあってこそのドラマ作りが見られる。

 

まず、森田望智の演技力の高さがいかんなく発揮されている。

自分の命の時間を知り、友とともに最後まで夢を追いかけられないことに対する無念さを余すことなく全身で表現する力や、涙をためて話す時の間合いなどは天性のものだろうか。

ひかりの人生を森田は完全に演じ切っている。

 

そして木竜麻生だ。彼女はもっと評価されてもいい女優さんだが、NHKはちゃんと主役に抜擢した。彼女は森田ほどは動かない。

ただ黒目がちな大きな潤んだ瞳が彼女の最大の魅力であり、この作品でも彼女の眼の演技がとてもよかった。まっすぐに宙を見上げる眼差しは、飛鳥という女性を生きていると感じさせるものだった。

 

木竜麻生と森田望智。

二人の実力派女優の演技に泣かされる。

 

伊藤万理華と片山友希の二人は関西弁がナチュラルでよかった。片山は京都出身、伊藤は幼少時代を大阪で過ごしたというから関西弁ネイティブである。

飛鳥とひかりをつなげる周と晴子の存在は重要であり、個性的なキャラでありながら出過ぎずさりとて個性を忘れずといったバランスの良い演技ができるのは、やはり実力ある女優さんだからだ。

 

奥平大兼はさすがである。

ボソボソしゃべってもしっかり聞き取れるセリフ回しや、テンションが低い役が多いけれども、このドラマで演じた金澤のように、内に秘めた熱いものを持つという演技はいつ見ても巧い。

飛鳥、ひかりについで3人目の主人公と言ってもいい重要な役をしっかり務めている。

人工衛星プロジェクトは、飛鳥がスキッパ―、ひかりは精神的支柱、金澤はエンジン(それも強力な)という役割だからだ。

何度も壁にぶち当たり、喧嘩をし、躓きながらも夢に向かって突き進んでいく4人を見て、金澤は自分の人生に足りなかった何かを見つけることができた。その成長譚もまたひとつの見どころである。

 

ひかりが亡くなるシーンや、ラストで人工衛星からの音声を聞いている最中に、突然ひかりの声を聴くシーンなどは、森田望智の演技に涙してしまうが、それでも全編を通して明るく前向きな作りが明日からの仕事も頑張るぞという気分にさせてくれる。

天の声を担当した柄本佑の力の抜けた語りも、その空気に大いに貢献していたろう。

 

共演者は飛鳥たちのプロジェクトを応援する大学教授・和泉季子に鈴木杏、ちょいちょい出てくるタクシー運転手(ラストでまさかの告白があるが)に生瀬勝久など実力者がそろう。

またひかりの母親に河合美智子。

そしてゲストで飛鳥の人生に影響を与えるベンチャー企業社員に藤谷理子。渋いキャスティングだ。

 

ロケは主に大阪、大阪近郊で行われて、MATTが昔よく通った大阪市立科学館(昔は四ツ橋筋にあった大阪市立電気科学館、今は中之島に移転)のプラネタリウムもロケに使われたとか。子供の頃、母とよく通ってプラネタリウムを見たのが懐かしい。

またいつか行ってみたい。

 

ちなみに劇中で出てくるアポロ11号の話の中で、月面に人類最初の一歩を残したニール・アームストロングは、オハイオ州のワパコネタという小さな街で生まれた。

ここはよく取引先へ行くのに通ったし、彼の名を冠した博物館もあるのは知っていたが一度も足を運ぶことはなかた。この間の駐在時に行っておけばよかった。。。

 

 吉澤嘉代子が歌う主題歌、「うさぎのひかり」はドラマの世界観にぴったり合って、NHKらしい忖度ない選曲が光る。