
ドラマを先に観てしまったので、多田(瑛太)と行天(松田龍平)がなぜ一緒に暮らしながら便利屋をやっているか、という話の流れがわからなかったが、ドラマの前後に公開された映画を観て良く理解できた。
監督は、「さよなら渓谷」「セトウツミ」「MOTHER マザー」などの大森立嗣。
「 まほろ駅前多田便利軒」は、時系列的にはドラマ版の前に位置する。ただ細かな設定に整合性が無いので、ドラマ・映画はパラレルワールドであるという解釈もあるらしい。
この映画で多田と行天が子供時代にある事件をきっかけに、少し気まずい関係になっており、運命の糸に導かれるかのように再会し生活を共にするようになる。
2011年に撮られた本映画は、日本映画あるあるでセリフが聞き取りづらい。「ベイビーわるきゅーれ」でもそれはギャグにされていたが、ボソボソと聞こえづらいので音量を上げたら、突然大声で叫んだりBGMが鳴り響いてびっくりしたり。。。笑
2014年公開の「まほろ駅前狂騒曲」は、その辺は改善されていた。
便利屋業務のさまざまなエピソードを通して、多田と行天が事件以来溝が出来ていたお互いの関係性を、少しずつ近づけていく過程が丁寧に描かれている。多田は幼いわが子を失くした過去を持ち、行天は母親からの愛情を受けずに育った。それぞれが辛い過去を背負って生きている、というのもこの作品で描かれている。真面目で一本気な多田と、一見ちゃらんぽらんだが筋の通っている行天。魅力的なバディはこの映画で誕生した。
出演者はなかなか豪華だ。
片岡礼子と鈴木杏は、自称コロンビア人娼という役柄。演技の上手い二人だから嫌味が無い。
行天の元妻・三峯凪子に 本上まなみ。同性のパートナーがいて、行天は子供が欲しい彼女のために精子を提供したという過去がある。鈴木杏演じるハイシーのストーカーに柄本佑。その母に梅沢昌代。
弁当屋の大森南朋や、松尾スズキらはドラマ版と同じく出演。多田便利軒常連客に、大森南朋の父親の麿赤兒。裏組織のボスの星に高良健吾。まほろ署刑事に岸部一徳と三浦誠己(ドラマ版にも出演)。看板持ちのオジサン役で 宇野祥平が。
ドラマの後日譚の位置づけの「まほろ駅前狂騒曲」は、展開が二転三転し、最後はバスのハイジャックまで起きる大事件に発展するなど、映画らしく楽しめる内容だった。
本上まなみ演じる凪子の娘・はるを多田が預かることで、子供嫌いだった行天の心が少しずつ開いていく様子が描かれ、ほっこりさせられる。心優しい二人の男の活躍が心地よい。
出演者は、「 まほろ駅前多田便利軒」出演者に加えて、ドラマ版で出演した真木よう子のほか、 奈良岡朋子 、新井浩文、古川雄輝、信太昌之、伊佐山ひろ子ら。凪子のパートナーとして、ラスト近くに市川実和子がちょい役で出演。永瀬正敏は新興宗教を率いる怪しい役どころで、さすがの存在感を示していた。
また、木竜麻生は本作に喫茶店のウェイトレス役で女優デビューしたというので楽しみにして観ていたが、なんと、後ろ姿のみで顔が出ず声だけ、、、マジか。。。それでデビュー作というのも可哀そうだ。
瑛太と松田龍平。二人とも決して多弁ではない役者同士だが、それだけにふとしたことで発する一言や、目の表情、沈黙の空気などが、ぶつかり合いながらも心の奥深くでしっかりとつながっているという多田と行天の不思議な関係を自然に演じている。
2014年以降続編が無いが、あれからもう12年。二人とも若者ではなく中年の域に差し掛かってきた。
やはりこのドラマはどこか鬱屈したものを抱えながらも不器用に生きていく若者が演じた方がよい。
もしまたこのドラマをやるのであれば、今の若手俳優で違った色の作品にしてもらいたい。