
この秋ドラマは、民放ではこれと、「小さい頃は、神様がいて」だけ見る、と決めていた。(後者はまだ観れていないが)
最近の民放キー局のドラマの劣化がひどいからだ。
だからもう、NHKのドラマ以外の民放地上波は、ほんとに面白そうなドラマしか見ないことにした。
タイトルのインパクトに加え、夏帆と竹内涼真のカップルというのが、ドラママニアにはそそる。
また、彼がこんなにコメディのセンスがあるとわかったのは収穫だった。
昭和気質の堅物の変人、長身でイケメン。
あの名作ドラマ「結婚しない男」を思い出すではないか。
阿部寛演じる桑野信介が、竹内涼真演じる海老原勝男とかぶる。
阿部ちゃんがあのドラマで役者人生の大転換を遂げたように、竹内涼真にとってこのドラマが大きな飛躍のきっかけになったらいいな、と思う。
夏帆は年齢を重ねるごとに、演技の深みが増してきた。
彼女が演じる山岸鮎美の実在感がリアルすぎて、もはやそういう女性が本当にいるようにしか見えない。それほど鮎美というどこにでもいそうな普通の女の子、という役の作りこみが素晴らしかった。今まで彼女の演技をたくさん見てきた身からすると、途中から夏帆に見えなくなって、鮎美という女性が演技しているのを見ているように思えたほどだ。
海老原勝男という、亭主関白をヨシとする特異さや、その両親(菅原大吉と池津祥子が、また味があって。。。)らの時代錯誤な昭和な夫婦のキャラの立ちっぷりが物語を面白おかしくしていて、昨今の昭和ブームに乗っかった形だが、このドラマの本質は実はそこではない。
9話でよりを戻した勝男と鮎美が、最終話ではお互いの感覚が少しずつずれていくことに気づく。この展開の前に、杏花演じる勝男の後輩・南川がミナト(青木柚)に「海老原さん見てると、人間って変われるんだなって思った」というシーンがある。
これが伏線、それも逆貼りの伏線になっていて、すっかり騙されてしまう。
人間ってそんなにすぐには変わらない。
いや、変わったらいけないのだ。
変わってしまったら、そもそもその人ではなくなってしまう。
勝男も鮎美も、お互いの関係性においては変わったことを自覚しつつも、人間としての本質の部分は変わっていないことに気づく。
だから、笑って別れようと言えたのだ。
だがそれは決してネガティブなものではなく、変わらない自分という人間を受け入れたからこそ。本当の自分をさらけ出して生きることの大切さを知ったから。
今は一緒にいても、以前と同じ互いの感覚にGAPを感じて、お互いに苦しくなる。
別々にお互いの道を歩み始めたのも、またもしいつか、二人が一緒にいて幸せを感じることができる日が来たら、その時に新しい人生を始めればよい、と。
これまでの民放ドラマだと、薄っぺらく終わってしまうところを、よくもまあこんなアクロバティックなエンディングにしたな、とちょっと嬉しかった。いい脚本だったと思う。
共演者では、南川役の杏花がとてもよい。
彼女は生方美久のドラマの常連だが、今回はちょい役ではなくしっかりとした役をもらった。
注目していたが、キュートさと意地悪さが同居した雰囲気は彼女ならでは。

杏花。
小動物系の可愛らしさに隠れた気の強さみたいなものが魅力。
平原テツ、前原瑞樹、中条あやみ、サーヤら個性派が脇を固める。
また、勝男の兄弟も、塚本高史に深水元基と個性豊か。西原亜希、知花くらら、しゅはまはるみ、草村礼子、菊池亜希子、星田英利といった面々も。
芋生悠が、ミナトと遊んでいるちゃらい役で出ていて、こんな役もやるんだと新鮮だった。
カップル、夫婦ものでは「結婚しない男」、「1122(いいふうふ)」が考えさせられるなあ、と思っていたが、この作品も仲間入り。
昭和カルチャーのGAPの面白さに隠れて、人間って、男と女って、と色々考えるきっかけになる、良作だと思う。
最後に。
このドラマ、一貫して料理がお話の真ん中にあった。
タイトルにもあるように日々、女が作る料理への男の経緯の無さがテーマにもなっている。
そこでふと、MATTが敬愛する土井義晴先生の教えを思い出した。
「お母さんは毎日品数豊富にしなくていい。もっと楽をしていいのです。ごはん、お味噌汁、香の物があればそれでいい。」
料理研究家が言うからこその金言。故人だが小林カツ代もそう言っていた。
主婦はもっと楽をしていい。そう思う。