もやし生産者協会が訴えた
のニュースを受けてか、もしくは昨年発売された拙著「闘うもやし」
の影響なのか、ここのところしばしばメディアに紹介されています。うちのように経営の苦しい零細もやし生産者にとってメディアで広げてもらうのは本当にありがたいことです。
来月も2つの番組に弊社が紹介される予定ですが、実際は撮影する絵も、インタビューされても話すことはいつも同じ内容です。ただ一つだけ、これは放送されるかどうかわかりませんが、気になる質問を受けました。それが
「もやし栽培でもっとも気をつけていることは?」
でした。これは「ハッ」としました。以前ならば「きちんともやしの生長を見守ること」と答えるのですが、この5~6年で意識がかなり変化していることに気づいたからです。
そして私は少し考えた後
「慢心」
と答えました。
この5~6年…つまり深谷もやしという概念が生まれてから、私はもやしを太くする植物ホルモン「エチレン」の使用量を少しずつ減らしてきました。現在はもう10年前の1/10くらいになっています。もやし本来の姿、ノンエチレンもやしは私の理想でもあります。
もやしの収穫の際、もやしの形状は毎回違うのですが、エチレンを減らすと不思議なことにその日々の違いがより大きくなってきました。つまりエチレンを減らすことでもやしの生育を安定させることがさらに難しくなってきているのです。
設備の故障によるトラブルは別として、これまでの経験則から
『多分これならもやしは大丈夫だろう』
が今は無くなってしまいました。
もやしの微妙な変化に気づかない…そんな油断が命取りになることを今痛感しています。私は仕事でもやしを見続けて35年になりますが、現実にはまだまだ何もわかっちゃいないのです。
もっともそれはもやしに限らず、生きている物に向き合う仕事の宿命なのだろうと思います。
なんでもわかった気でいる『慢心』が、実は一番気を付けなくてはいけないことなのです。