先日、我が家の屋外でちょっとしたバーベキューパーティを開きました。

 

 七輪を中央に据え、参加者が持ち込んだ肉やマグロのカマなどを炭火で焼いて食べました。

参加者の一人の農家さんが自分のとこで採れた野菜のスープを沢山作ってきてくれました。

それを見てハッと思い立って、私はもやしの栽培室に育っているもやしを一掴み持ってきて、スープにどさっと投入しました。せっかくもやし屋でバーベキューやってるのだから。

もやしは5秒も茹でれば食べられるのですが、今回はしばらく(1分ほど)煮込んで、食べてみました。

 

「あっ…美味い」

 

 私は感動して皆に「ちょっと食べてみて。すげー美味しいから。びっくりするよ!」と強要しました(笑)。

「毎日もやしを見てるくせに、散々もやしの味を話してるくせに何を今更興奮してるんだ?」と皆に思われたかもしれないです。でも、私は我を忘れて興奮したのは事実です。

 

 なぜ、あれほど美味く感じたのか? あの時、もやしを美味しくするいろいろな条件が重なったのか?謎は深まるばかりです。解ったのは、まだまだ私はもやしを伝えきれていない、さらに「もやしのことを全然知らない」ということです。

 おかげさまで飯塚商店のもやしは「美味しいもやし」という評判を頂いています。

ただ…もちろん私は自分のところのもやしは美味しいと思っていますが、万人にとって「美味しいもやし」かどうかは少々違和感を持っていました。美味しい、不味いはあくまでの個人の嗜好によるものだからです。

 

 じゃあ飯塚商店のもやしはどこが違うのか?とお客様や取引先、取材などで聞かれることもあります。

 

 最近ふと気づいたことなのですが、例えば深谷もやしを他の野菜と一緒に炒めても、中華の五目煮にしても、ラーメンに載せても、肉と蒸して食べても、がっつりもやしの味が前面に感じられます。それはある意味、料理人泣かせのもやしかもしれません。自分の思ったとおりの味じゃなくなるわけですから。

 

 なので、どこが違うのか?と聞かれたら、今はうちのもやしは「他のもやしより強い」と答えようと思っています。豆が発芽したものを食べるもやしはまさに生命力の野菜です。ならば「強いもやし」はもやしへの最大の賛辞ではないでしょうか。

 

 

 

 もやしの見学にいらした野菜ソムリエのたしろゆきこ様が飯塚商店の「ありのままのもやし栽培キット」を使ってもやしを栽培しています。

 

 緑豆もやしも育てたのですが、ここでたしろさんから写真と共に質問がありました。

「発芽してから5日目あたり、豆の部分がピンク色になってきました。原因は何でしょう?」

との、ご質問がありました。

 

 この豆が色づくのは緑豆の特性です。病気ではありません。不思議なこと豆の産地(品種も?)の違いでにこの色が出るときと出ない時があります。冬場、気温が低くてもやしの生育が遅れているときによく現れます。ここで私もよく確かめたいのでたしろさんに仕込みの浸け込み時間を12時間から18時間に伸ばしてみたら?と提案してみました。

 

たしろさんが試してみましたが、やはり3日目からピンク色になってきました。発芽とは関係ないのかもしれません。そこでもう3日様子をみてもらいました。

 6日目、もう十分食べられる長さですが、まだ少し豆の部分が赤いです。豆の大きさを見て、もう一日様子を見てくださいとお願いしました。

 そして7日目、もやしは細く長く伸びましたが豆は小さくなって色は消えてきました。

やはりこの緑豆の生長段階の変化なのでしょう。私どもも通常の生育状況であれば発芽から1週間で収穫します。緑豆もやしにとって発芽して7日は必要な生育期間なのでしょう。

 たしろさんはその後ももやしを伸ばしていてくれて、これは8日目です。

まだ食べられますけど、ここまで緑豆もやしを細長くしちゃうと、一般の緑豆もやしと違い過ぎてさすがにスーパーでは売れないでしょう(笑)。

 

 一般に緑豆もやしは8日から10日、さらに12日かけて育てる、という生産者もいるようです。上記の生長だと考えられない生育日数ですが、やはり今の日本のもやし事情では生長を抑え、もやしを太くする植物ホルモンエチレンはまだまだ必要とされているのでしょう。

 3月22日、本日のもやしを収穫したとき

「ああ。今日はもやしが光っているな」

と思いました。そんな日は生産者の満足感で充たされます。

 もやしが白い、じゃなくて光る、ていうのは不思議な表現のようか気がしますが、2年前、もやしの栽培にエチレンの使用を完全にやめてから明らかにもやしが輝いてきました。つまりこの輝きはもやし本来の輝きといっても良いでしょう。

 

 もちろんもやしは毎回顔が違うものです。その時その時の環境(生育条件)によって大きく変わってきます。それは栽培室の室温や水温だけでなく、外気、湿度、生育期間、水やり回数、畑(栽培コンテナ)の位置も関係してきます。おっと原料であるブラックマッペの発芽率もですね。もやし本来の生長とこれらの細かい条件がピッタリ重なった時、もやしは光り輝くのでしょう。

 

 何度も言うように光るもやしは毎回ではありません。でも、できることならずっと光るもやしを作っていきたい。そのために私はもやし生産者として日々、考えながら少しずつ着実に歩を進めていきます。

 12月21日(土)、この日は横浜高島屋で深谷もやしの量り売りイベントでした。私と妻が生産者として午後から売り場に立ちました。この売り場では今回が2回目です。ただ用意したもやしの量が200kg。とんでもない量です。200kgと言えば深谷市全体の学校給食で使うもやしより多いくらいですから。それをこの1店舗だけの販売です。

 

 「とても信じられない。本当にそこまでもやしが売れるのか?」

 

 私たちは行きの電車内でそんなことを話しながら、午後2時にお店に入りました。その時すでに90kgが売れていました。『えっ。これは本当に売れちゃうかもしれないな…』そしてエプロンを着けて売り場に立ちました。私たちの役割は決まっていて、妻が試食を薦めてお客様ともやしのこと、お勧めレシピのことを話します。私がせっせとその場でもやしを量り、もちろんときどきお客様と話します。さすが高島屋の中でも人気のお店です。ひっきりなしにお客様が私たちのもやしを購入してくださいます。2回目ですけど、もうリピーターになってる方もいました。

 

 そして午後5時半、約5kgほど残して、あとは青果のスタッフに任せて私たちの量り売り販売は終了となりました。おそらく200kgはその日のうちに完売したことでしょう。一つの売り場でもやしが200kg、それも価格は298円(500g)で、です。

 

 『こんなもやしじゃ売れない、ましてや高いもやしなんかもっと売れない』

 

 …なんて青果仕入れ担当者から直接言われるくらいにうちのもやしが嫌われていたなんて嘘のようです。まだ10年ちょっと前の話です。

 

 帰る時、青果の主任さんから『来年1月11日(土)にやる次回は250kgやりましょう』なんて注文を受けました。まったく未知の数量ですが絶対に無理、ということではありません。

 

 この日の200kgはこれまでの多くの方々のご理解、協力の積み重ねの200kgです。

これは書き出すとかなり長くなりそうです。話し出すと私の息が詰まってしまうかもしれません。

 

 帰りの電車内は、私と妻はどっと疲れていましたが心から笑っていました。