深谷のもやし屋、飯塚商店はミャンマー産のブラックマッペをもやしの原料にしていますが、今年の1月の半ばごろでしょうか、もやしが成長、品質が安定しなくなりました。それはミャンマー産の新豆を使いだした頃とほぼ一致しています。しかし常に品質の良いミャンマー産ブラックマッペ、これまで豆が新豆に代わったくらいでここまで変わってくることはありませんでした。

 

 そこから日々試行錯誤の連続、ようやく今回の豆の適正温度がつかめました。それは、昨年までと比べて栽培室の温度が3℃違うということです。もっとはっきり言うと昨年までは26℃設定温度でもやしが良く出来たのが、今年は29℃にしないとできない、ということです。

 

 適正温度の発見に半年も費やしたのは、これまでの経験から「この時期、そんな高いはずはない」と思い込んでいたことでした。基本「もやしの栽培にこれ、というマニュアルはない」のです。それぞれの生産者がその地に合った栽培法を見つけなければなりません。収穫年度が代われば当然豆の性質も変わるのです。私はこれまで「もやしの生育を見て栽培を変える」、と話してきました。

 

ならばこれまでの経験なんてなんの意味もなかったのです。その時、その時のもやしに答えはあったのですから。

 久しぶりのブログです。コロナ禍に入ってから朝ドラを観るようになって、現在放映中の「カムカムエヴリバディ」で美味しい餡子をつくるおまじないで「小豆の声を聴け」というフレーズがありました。確かにどんなものでも、そういうのってあると思いました。

 

 今年、令和4年の1月10日あたりからそれまで問題なかったもやしの生育が安定しなくなってきました。確かに毎年の冬から春への変わりかけの頃は気を遣う時期でもあるのですが、今年は特に難しかったと思っています。まだ進行形ですが。いつも思うのですが、もやしの栽培に関しては寒いのはずっと寒い方が、またはずっと暑いほうが生産者としては楽なのです。が、日本は四季の変化がある国、今年は早くから暖かくなったり、でも朝は妙に寒かったり、なんともつかみどころのない日々が続き、生産者も、もやしも、迷ったのでしょう。

 

 ただこんな時…トライ&エラー連続の日々でも、見えたことはあります。それは人間が先走って温度やらやり水やらを調整してはいけないのです。あくまでも、もやしの生育の観察→考察→必要とあらば調整、の流れで行うことが大事です。今回はもう暖かくなる頃だろう、と勝手に思い込んで、もやしより先に人間が動いて、2か月もの袋小路に入ってしまった感があります。私は「もやしの声」を聴く前に動いてしまったのでしょう。これは親として失格です。

 これは昨日(3月11日収穫)のもやし。どれも同じ栽培コンテナで育ったものです。

このもやしからもやしの声を聴いてみます。

 

まずひとつの箱の中でも温度にムラがあります。それはここ最近の大きな寒暖差によるものかもしれないです。

きれいな根から、室温、水温、やり水の回数は今のままで良い感じです。

ただ、種子の大きさから判断して、まだまだ収穫するには早い、あと半日くらい寝かしておきたいです。

 

以上が私が聴いたもやしの声。これがちゃんと聴けてたかどうかは一週間後のもやしを見てわかるわけです。

 

 先日、我が家の屋外でちょっとしたバーベキューパーティを開きました。

 

 七輪を中央に据え、参加者が持ち込んだ肉やマグロのカマなどを炭火で焼いて食べました。

参加者の一人の農家さんが自分のとこで採れた野菜のスープを沢山作ってきてくれました。

それを見てハッと思い立って、私はもやしの栽培室に育っているもやしを一掴み持ってきて、スープにどさっと投入しました。せっかくもやし屋でバーベキューやってるのだから。

もやしは5秒も茹でれば食べられるのですが、今回はしばらく(1分ほど)煮込んで、食べてみました。

 

「あっ…美味い」

 

 私は感動して皆に「ちょっと食べてみて。すげー美味しいから。びっくりするよ!」と強要しました(笑)。

「毎日もやしを見てるくせに、散々もやしの味を話してるくせに何を今更興奮してるんだ?」と皆に思われたかもしれないです。でも、私は我を忘れて興奮したのは事実です。

 

 なぜ、あれほど美味く感じたのか? あの時、もやしを美味しくするいろいろな条件が重なったのか?謎は深まるばかりです。解ったのは、まだまだ私はもやしを伝えきれていない、さらに「もやしのことを全然知らない」ということです。

 おかげさまで飯塚商店のもやしは「美味しいもやし」という評判を頂いています。

ただ…もちろん私は自分のところのもやしは美味しいと思っていますが、万人にとって「美味しいもやし」かどうかは少々違和感を持っていました。美味しい、不味いはあくまでの個人の嗜好によるものだからです。

 

 じゃあ飯塚商店のもやしはどこが違うのか?とお客様や取引先、取材などで聞かれることもあります。

 

 最近ふと気づいたことなのですが、例えば深谷もやしを他の野菜と一緒に炒めても、中華の五目煮にしても、ラーメンに載せても、肉と蒸して食べても、がっつりもやしの味が前面に感じられます。それはある意味、料理人泣かせのもやしかもしれません。自分の思ったとおりの味じゃなくなるわけですから。

 

 なので、どこが違うのか?と聞かれたら、今はうちのもやしは「他のもやしより強い」と答えようと思っています。豆が発芽したものを食べるもやしはまさに生命力の野菜です。ならば「強いもやし」はもやしへの最大の賛辞ではないでしょうか。

 

 

 

 もやしの見学にいらした野菜ソムリエのたしろゆきこ様が飯塚商店の「ありのままのもやし栽培キット」を使ってもやしを栽培しています。

 

 緑豆もやしも育てたのですが、ここでたしろさんから写真と共に質問がありました。

「発芽してから5日目あたり、豆の部分がピンク色になってきました。原因は何でしょう?」

との、ご質問がありました。

 

 この豆が色づくのは緑豆の特性です。病気ではありません。不思議なこと豆の産地(品種も?)の違いでにこの色が出るときと出ない時があります。冬場、気温が低くてもやしの生育が遅れているときによく現れます。ここで私もよく確かめたいのでたしろさんに仕込みの浸け込み時間を12時間から18時間に伸ばしてみたら?と提案してみました。

 

たしろさんが試してみましたが、やはり3日目からピンク色になってきました。発芽とは関係ないのかもしれません。そこでもう3日様子をみてもらいました。

 6日目、もう十分食べられる長さですが、まだ少し豆の部分が赤いです。豆の大きさを見て、もう一日様子を見てくださいとお願いしました。

 そして7日目、もやしは細く長く伸びましたが豆は小さくなって色は消えてきました。

やはりこの緑豆の生長段階の変化なのでしょう。私どもも通常の生育状況であれば発芽から1週間で収穫します。緑豆もやしにとって発芽して7日は必要な生育期間なのでしょう。

 たしろさんはその後ももやしを伸ばしていてくれて、これは8日目です。

まだ食べられますけど、ここまで緑豆もやしを細長くしちゃうと、一般の緑豆もやしと違い過ぎてさすがにスーパーでは売れないでしょう(笑)。

 

 一般に緑豆もやしは8日から10日、さらに12日かけて育てる、という生産者もいるようです。上記の生長だと考えられない生育日数ですが、やはり今の日本のもやし事情では生長を抑え、もやしを太くする植物ホルモンエチレンはまだまだ必要とされているのでしょう。