もやし屋の私はとうぜんですが、ほぼ毎日もやしを触っています。

発芽したばかりのもやしの熱を測るときや、収穫した時の張りを確かめるために触ります。

2日前、深谷もやしを作るときに触ったもやしに違和感がありました。

「少し水っぽいかもしれない…」

ムロ(栽培室)の室温は変わらず24~26度。遣り水の温度も17.5度で同じです。しかし育つもやしがやや水っぽいとなると答えは一つです。「ムロの湿度が上がってる」ということです。一応ムロには簡単な湿度計がありますが、年間通じて大体60~70%ほどで大きな変化はありません。それでも不思議なことにもやしは変化するわけです。

 私どものムロにはエアコンなどという高尚な設備はありません。じゃあどうすればもやしの水っぽさを減らすことが出来ると思いますか?それは…

「水遣りの回数を減らす」

ことです。昨年の11月に一日5回の水遣りを、2日前から4回にしました。そしてさきほど触ったもやしは早くも効果が出ていてパリッとしていました。これが深谷のもやし屋のもやし作りです。

 一方20年ほど前から、国内もやし用機械メーカーがもやし栽培のデータ化に力をいれ、そして開発されたのが「もやし栽培装置」です。この普及により最近はいちいち触らずとも安定してもやしが作れるようになりました。日量何十トン以上の大量生産が対応できる大手もやし屋さんを中心に導入が進み、今はモニターが映し出す数値だけを見て、あとは各装置のチェックを怠らないことがもやし屋の仕事になっています。

 現在、私のようにもやしを触って、もやしの状態を見てから環境を動かすような作り手はもうごく僅かになっていることでしょう。確かに機械が人の代わりにもやしを見てくれれば、より一層の効率化、品質の安定が図られ、たとえ初期設備投資が莫大でも大量のもやしを捌ける販路が確保できれば、正しい経営手法といえましょう。

 ただ食の多様ゆえ、と申しましょうか私のような触って育てる旧い栽培法も良い部分はあるようで、ここ最近各方面で高い評価を受けているだけでなく、昨年NHKの「うまいッ」という番組で郡山大学で成分を調べた時は、同じ原料のブラックマッペを育てた私どものもやしと他社のそれと比べて、

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    総アミノ酸  グルタミン酸  糖度  アルギニン ギャバ  分枝鎖アミノ酸

他社     100    100      100   100     100     100

深谷もやし  158    254      118   124     833     185

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のように他社を100とした場合の百分率でみると、すべての項目で私どもの深谷もやしが勝っていて、特にギャバに置いては8倍の数値という結果になりました。この数値を知らされた時、どちらが高いかどうかは別として、

「まあそうだろうな」

と納得です。それはこれまで自分の信じてきたことの再確認でしかありませんでした。

 この値の違いは、使っている原料は同じ、もやしに肥料はいらないので、そうなると水か育て方によるものでしょう。私が言いたいのは「ウチのもやしは栄養満点だぞ」と自慢したいのではありません。たとえ原料である種子は同じ畑の作物であっても、

 その栽培地の風土や作り手の感性の影響により、すべてのもやしは同じではない、それこそがもやしの「身の丈」

ということなのです。そしてこれはもやしだけでなく他の農作物にも通じる気がします。自分の生産物を売って生活の糧にしている生産者、それも利益優先に囚われず常に食べる人のことを考えつつ自分の納得する作物を送り出す、そのかなり難しい道を進む生産者ならば感じる感覚であると断言します。

どれもが違う、違うのが当たり前であることが作物の身の丈

 その当たり前に気づいている人は実はとても少ない、というのが私の感じていることですし、この当たり前を尊重せず「どれも同じにしなけならない」というのは生命の蔑視であるような気がするのです。

 私が常日頃、食にもっとも近い生産者の言葉が一番強く、その言葉を基準にしなければならないと言っているのは、生産者は食の「身の丈」を感性で気づいているからなのです。
 これも当たり前ですが、この世で人間だけになったら私達は生きてはいけません。植物や他の動物との共存できなければ私達も存在はできないのです。食の尊重とはズバリ「身の丈」を認めることであり、それを突き詰めれば「命への敬意」になると思います

食の身の丈を認めないのは、命の蔑視とも言えないでしょうか。

 もう一つ言わせてください。私どものもやし栽培室(ムロ)には沢山の人が見学に訪れます。私は見学者をそのまま入れてしまいます。これは大手量販店や、コンビニの品質管理担当者から見ればとんでもないことでしょう。時には「え?このままでいいんですか?」と驚く方もいます。私は

「別に人が土足で入ったって、触ったって、もやしはダメになりませんよ」

と答えます。さらに「もやしも人と一緒の世界に住んでますから」と付け加えます。見学者の中には「このムロの中は心地よい」と言う人もたくさんいます。それも当たり前で

「もやしが元気に育つ部屋が、同じ世界に居る人にとって居づらいはずはない」

のです。

 いろんなことを取り留めのないほど述べてきましたが、これらはずっと数値ではなく感性でもやしを育ててきた私が気づいたことです。そして肩書きの立派な人が何を言おうが、これは生産者として気づいた正しさであると信じています。

 昨日の「大豆100粒運動を支える会 総会」の特別講演で私、深谷のもやし屋が壇に登りました。
 今回は憧れの辰巳芳子先生もいらっしゃる、ということで(先生は急遽欠席でしたが 泣)、私も非常に気合いが入り、いつもアドリブで話すところを滅多に使わないパワーポイントや、講演の「たたき台」まで用意して臨みました。

 ところがいざ始まるとかなりその場のノリでいつもの調子になってしまいましたが、用意したたたき台に沿った感じで約1時間(本当は30分)お話は出来たと思います。

 これまでの活動を整理するにも役立った今回用意した「たたき台」、この場で公開いたします。

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「在来大豆を使ったもやしで風土に根付いた食を」

講演の主旨:
埼玉県各地の風土に根付いた在来大豆(地大豆)に大きな可能性を抱いた一もやし生産者による在来大豆普及活動。価値の発信だけでは「普及」に至らない。在来大豆に携わる全ての人にとって在来大豆がビジネスとして成り立たせるその可能性を提示したい。

☆もやしと深谷のもやし屋について

●本来もやしとは発芽した種子(豆)を食べる食品の総称。
●深谷のもやし屋とはありのままの味を大切にするあまり時代の流れを逆の方向に舵を切ってしまう。その結果として取引先が離れていき、経営危機に陥る…そんなもやし屋。
● もやし業界の現状は80年代半ばから緑豆太もやしに移行。取引先量販店の増加に伴い設備投資をして生産規模を拡大したが供給過多になる。結果として小売主導型の価格設定に押され低価格競争に。

☆ 埼玉県産在来大豆もやし着手のきっかけ

●埼玉県在来大豆28種
1. 埼玉県農業試験場の元所長渡邊耕造さんを中心に研究員が30年以上かけて県内各地の現地試験に行った先で色や形の変わった大豆を見つけ収集、約3~5年ごとに種を更新して保存活動も行ってきた。
2. 平成16年に渡邊氏が「在来大豆を使い特色ある豆腐づくり」を研究課題に取り上げたことで日の目をみることができた。

3. 平成17年から始まる県を挙げての在来大豆PR活動。この時28種の在来大豆が確定された。

●同時期の深谷のもやし屋
4. 平成20年頃よりいよいよ会社経営が苦しくなった危機感から、自分のもやしのPR活動で、しばしば店頭に立ってもやしの対面販売、試食販売を行う。その活動の中で一部消費者の意見で気づいた外国の豆に対する強い不信感。ならば誰もが納得する、どこへ出しても恥ずかしくないもやしを。地元の豆を使ってもやしを作ることを目指す。それこそが埼玉深谷のもやし屋の在るべき姿じゃないか。そう思うようになる。

5. 翌年の冬にさいたま市で開かれた食のイベントで埼玉県農林公社のブースに立ち寄る。その時に「在来大豆28種」の存在を知る。以来あちこちで「地元の豆でもやしが作りたい」と触れ回る(笑)。

6. 3年前(平成22年)の3月、噂を聞きつけた渡邊氏の下で在来大豆普及活動を続けてきた当時農林総合研究センター職員、増山氏が在来大豆と共に来社。その豆を使ってもやし作りに着手する。大豆関連商品として「もやし」を参入させることの意義。3月29日に在来大豆もやし栽培に着手、なぜか上手に出来てしまった。

7. 平成22年4月5日に「埼玉県在来大豆によるもやしが完成」(写真7)。在来大豆もやしを初めて食べたとき、その豆の味の凄さに心を奪われた。その瞬間、「これは凄い。こういう良いものは普及させなければならない」との気持が湧き上がり、では「普及させるためにはどうしたらよいか」を念頭に置いて普及活動を進めることを決心する。普及に必要なのはまずは「その価値を知ってもらうことから」であった。『在来大豆もやしでどれだけ儲けようか』ではなく『大豆普及』に舵を切ってしまうあたりが深谷のもやし屋。在来大豆完成に立ち会った朝日新聞上田記者がそのまま取材、4月6日付の朝日新聞に掲載される。
記者からの「どこで販売するか?」「価格は?」の質問に戸惑いつつ、現在の安いもやしの轍を踏まないよう、大豆もやしの適正価格について考える。

8. また5月4日付け毎日新聞にも掲載。

9. 4月8日、市内の農家、倉上さんが最後の「おくまめ」を持ってやってくる。新聞を読んで嬉しくなった倉上さんが農家を辞めるのでどうぞ使ってくれ、と長年栽培してきた「おくまめ」を持ってきたのだった。
地大豆は農家にとっても特別な存在あることを実感。深谷のもやし屋と地元農家が始めて気持で繋がる。農家の想いを受け止めることは農家を味方につけることであった。


☆もやし屋による在来大豆普及活動の開始

10. 平成20年5月7日、熊谷市内の飲食店の協力で9種類の在来大豆もやしの試食会を開催。「自分がやることは県農業のためになる。だから協力してくれ」と地元県議会議員の協力を要請、議員の呼びかけで埼玉県農林部の当時の部長以下多数の職員が参加。(写真その席で「(もやし屋として)県産在来大豆を普及させる」と宣言する。この試食会は朝日新聞、埼玉新聞にとりあげられた。


11. 同年6月、大豆もやしの豆の部分が美味いという意見から、若芽である「発芽大豆」を本格的に販売する。商品名は「彩」。5品種の在来大豆を発芽させて混ぜ合わせたもの。埼玉県の在来大豆品種28種すべてを使えるようになった時が彩の国、さいたまの発芽大豆彩が完成するわけだ。

12. 同年9月、深谷市の産業振興を目指す深谷市産学官連携事業「ゆめ☆たまご」に加入。そこで地元の志ある漬物屋、日本酒の蔵元と意気投合し、大豆もやし商品「大豆もやしの漬物」が生まれる。在来大豆普及という大きな目的を達成するためには志を同じくする他事業者の力を借りることの重要性を実感する。さらに地元行政、深谷市がプレスリリースしたことで新聞にも取り上げられた。

13. 平成23年2月、埼玉県農商工連携フェアに「ゆめ☆たまご」として参加。他の事業者と共に在来大豆がどれだけ多くの食と繋がっていることを知らせる「大豆連携プレー」を実践。場内の話題をさらう。数社の新聞の取材も受ける。消費者に大豆の価値を認識させる目的があった。

☆ カフェNINOKURAとのコラボイベント…当たり前だが豆は食べものである。飲食店と志同じくしてその力を借りる。食べてもらうことで在来大豆の価値を知ってもらう。
14. 「埼玉の豆カフェ&バー」カフェNINOKURAで開催した「在来大豆魅力発信イベント」。

埼玉県産在来大豆28種にかけて28種類の在来大豆料理をビュッフェスタイルで提供。NINOKURAだけの調理でなく、深谷市の飲食店、浦和のケーキ店、本庄在住の外国人による豆料理も提供。豆料理の奥行きを知ってもらう。

情報公開こそ人の共感を得られる手段と、提供したほとんどの料理のレシピも公開した。さらに在来大豆に携わる農家、県農業普及員、県農業研究員、事業者、消費者を交えて討論会を開く。

15. 「モンサントの不自然な食べもの×NINOKURAの自然な食べもの 食のツーストーリーズ」遺伝子組み換え作物の特許を持つ米「モンサント社」の実態を描いたドキュメンタリー「モンサントの不自然な食べもの」をカフェNINOKURAイベントホール(2階)で自主上映、同時に1階のカフェでは在来大豆を代表する地元で採れた良質な食材を中心とした料理を提供。蔵を1つの世界に見立て、二つの食の思想があることを知らせる。

TPPが、遺伝子組み換えが、怖いと反対運動をするエネルギーを、もっと身近に在る正しい食、生産者を支えるために使ってもらいたい、そんな意図もあった。

16. 一都六県を代表する在来大豆を集め発芽させて一つにまとめる「いろどりセブン」の開発に着手。各地の在来大豆を探し産地を訪れる。もっとも苦労したのが東京産在来大豆。ようやく探し当てた檜原村の鑾野大豆こそ「風土と人が育んできた在来大豆の原点」といえるものであった。
 そして檜原の人たちはその鑾野大豆を村おこしの貴重なお宝として活用しようとしていることに大きな感銘を受ける。村の風土と人が大豆を育てる。大豆はそこに居る人たちの食資源でもあり、その大豆が在ることが村に価値を与えている。在来大豆はその土地と人にとっての宝である。もちつもたれつ、それこそが風土と人と大豆の理想的な繋がりではないだろうか。

17. 一都六県を代表する在来大豆を集めた「発芽大豆 いろどりセブン」をNINOKURAと共同制作。朝日新聞、毎日新聞、日本農業新聞に取り上げられる。

☆ 現在の在来大豆もやしの状況
18. 3年前には間違いなくこの世に存在していなかった在来大豆もやしという食品。現在は地元の飲食店、給食センター、食品加工会社、産直店を中心にじわじわと広がっている。在来大豆の使用量も2010年の300kg、2011年は倍の600kg、2012年は900kgと増えている。また東京都檜原村では檜原の人たちと共に、学校給食に地元で採れる在来種「鑾野大豆」のもやしを学校給食に導入することで動いている。

 もやし屋は原料として豆を使う商売。そして在来大豆もやしに関しては「安売り」に入らない。現在農家、加工業者、販売者、消費者、それら全ての共通理解の下、「適正価格」で流通している。在来大豆を適正なビジネスとして成り立たせるには、良い作物を実らせるが如く、まずは畑の土壌造りをしなければならない。そのためにやるべきことは…もやし屋による在来大豆普及活動の肝はそこにある。

 深谷のもやし屋の「もやし屋としての大豆普及活動」はまだまだ続く。

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 実際のお話はこんなり理路整然としたものでなく、普通の飲みの席と変わらない調子でした。それでも最後は大きな拍手もいただきました。

 もやし屋にとってもとても楽しく充実した時間でありました。そんな機会を提供してくれた「大豆100粒運動を支える会」の皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。
大豆100粒運動』という活動があります。

 これは映画「天のしずく」でも有名な料理家辰巳芳子氏が強い想いを込めて提唱したものです。
そしてNPO法人「大豆100粒運動を支える会」によって運営されています。

5月26日(日)、東京都千代田区麹町の岐部ホールにおいて

大豆100粒運動を支える会の総会

が開催されるのですが、その席で私、深谷のもやし屋が特別講演をすることになりました。講演のタイトル

「在来大豆を使ったもやしで風土に根付いた食を」

です。

 2010年より着手した埼玉県産在来大豆もやし。初めて食したとき、その味の良さはもちろんのこと、食としての正当性に心を打たれ

「これはすごい食材だ。こういう良いものは普及させねばならない」

と誓いを立てて、まず
在来大豆という貴重な種を残しておきたければ農家さんを支えなければならず、そのためには在来大豆を活かした持続可能な経済活動を目指さなければならない、と意識を持ってここまでやってきました。

 当初は徒手空拳による大豆普及活動に精一杯でこのような「大豆100粒運動」など知る由もなかったのです。今回縁あってこのような機会をいただいたこと、まるで双方からトンネルを掘り進んで繋がったような気持です。

 講演では深谷のもやし屋といういち零細事業者の立場で実践してきた数々の普及活動を(今回はパワーポイントを使い)順を追ってお話し、解説する形になります。お金はないけど「熱を読む」ことに長けているのがもやし屋です。もやし屋だけではどうにもならない普及活動を、長年在来大豆に携わった県の職員さんたち、深谷市の産学官連携プロジェクト、豆農家さん、
地元の飲食店、食品加工業者さん、理解をしてくれたメディア、そして志同じくする友、といった方々と「熱で繋がり」、それが大きな力となってここまで歩んできました。まさに大豆熱で繋がる連携プレーです。

 また安さだけが注目されるもやしという食材ですが、在来大豆を原料にした在来大豆もやしは誰にも負担をかけない「適正な価格」での流通を実現し、少しずつその生産量も増えてきてます。在来大豆の持つ正しさは、行き過ぎた低価格競争に喘ぐもやし業界にも希望をもたらしているのです。

 当日はそんな希望のもやし、神奈川の津久井在来発芽大豆と埼玉の妻沼茶豆発芽大豆を一緒に試食していただこうと思います。


 全国の大豆普及に携わる会員さんにとって、ここまでのもやし屋の活動が何らかの気づきになっていただければ幸いです。


 5月4日(土)、朝9時半頃から「花園ショッピングセンター 食品館ハーズ」において、

「もやし収穫イベント」

を開催します。私が直接ハーズの駐車場へ普段配達用に使っている冷蔵コンテナ車で乗り付け、そのコンテナがそのままもやし収穫スペースにします。まったく手間も費用もかかりません。お金をかけなくてもイベントは出来ます(笑)。

…もやしの収穫、私達もやし屋は元々収穫という概念がなく「ムロ(栽培室)から出す」「洗う」が収穫と同義語になります。しかし持ち出し可能なコンテナでもやしを育て、

当日「屋外の暗室」に設置すれば、そのもやしを掴みどる収穫体験は可能です。当たり前のことですが畑で採れる野菜はその畑へ行かねば収穫はできません。しかし土の要らないもやしならば、畑そのものを持ち出すことも出来るのです。それこそがもやしが持つ大きな特徴です。

 もやしを収穫する…それは単にお店の野菜売り場でもやしを買うよりも、お客様にとって刺激的で楽しい体験になるでしょう。もやしは全国的に認知されている野菜ですが、そのもやしを収穫した人はほとんどいないでしょうから。

私はすでに昨年深谷市の産業祭会場の一角に

もやし屋敷

という施設をつくりもやしの収穫体験を実践しました。収穫を終わり、もやしを袋一杯詰め込んでどうだとばかりにもやしを掲げて見せたあの時のお客様たちの笑顔が忘れません。

 中国のもやしの原料(緑豆)価格が高止まりしているところに、円安が影響してさらに価格が跳ね上がることは必至です。そのような逆風に置かれているもやし屋が今為すべきは

「(企業努力という名目で)人に負担を強いて無理やり価格を下げ、それで他のもやし屋さんのシェアを分捕ることではないはずです」。

それよりも簡単で負担もかからず徐々に効果を発揮するのは

「もやしの魅力をまずは“食べる人”に知ってもらう活動をする」

ことです。

 そのために、もやし屋でなければ言えない情報を発信すべきでしょう。もやしの栄養価がどうとか“誰でも言える”情報ではありません。「もやし屋でしか表現できないもやしの情報こそが沢山の人を響かせる」ものだとこれまでの経験で確信をしています。

 生きているもやしをご自身で触れていただく、「もやしの収穫体験」はもやし屋が出来るもやしを無理なく正しく知ってもらう最適な手段だと思うのです。

「よこぜ、いこーぜ!」を合言葉に、4月21日(日)、今年も埼玉県最北端の旧き酒蔵、丸山酒造を舞台に酒と地元風土に根付いた食文化の魅力発信イベント、

金大星蔵びらき】(きんたいぼしくらびらき)

を開催します。昨年同様主催は丸山酒造、私が代表を務める風土飲食研究会が企画に協力をしています。まずは風土飲食研究会報道担当の小林が作成したプレスリリース用文書をご覧ください。

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第二回 「金大星
蔵びらき」は前回のスタイルをさらにおし進めた「ここにあるもので  ここの人々がつくる  ここだけで感じられる~〈のみたべ〉まつり」です。

「よこぜ、いこーぜ」を合言葉に、深谷市横瀬で昨年春に第1回が行われた「金大星
蔵びらき」。今年は前回とスタイルは同じながらより多くの共感者を加え、しかもおたがいのライバル心を燃え上がらせつつ、さらにバージョンアップします。

主催者、企画協力、出店者が話し合って再確認したテーマは、

「ここにあるものでここの人々がつくるここだけで感じられる〈のみたべ〉まつり」

このテーマを理解するには、そもそも第一回の「金大星
蔵びらき」が、どのような点でほかの日本酒、食のイベントと違っていたかを思い出さねばなりません。

 1)「在」(いなか、農村部)のまつり

会場の深谷市横瀬、中心となる丸山酒造は埼玉最北の酒蔵。
市の中心中山道から七キロほど離れた「在」(いなか)、農村部にあります。両となりの真言宗寺院「華蔵寺」、フラワー&グリーン「リーフ」といっしょのテーマ分散・カントリーサイド型のまつりは、街中に偏重しがちな最近のイベントに疑問を投げかける開催でした。

2)「子どもやお酒の飲めない人にもうれしい」酒のまつり*

企画の中心である丸山酒造杜氏が抱いていた思いは、三十年前は酒類の王様だった日本酒の復権。それには日本酒ファン、のんべえだけに訴えるだけでは意味がないと杜氏は考えました。

内陸部の魚「どぜうつかみどり」や、酒を使ったお菓子、パフォーマンスで酒文化に迫る料理ショーなどで酒を飲めない子どもにもアピール。古来から続く酒文化を子どもたちから遠ざけようとする昨今の風潮をもう一度考えさせる、地元の売れないマンガ家・俳優による紙芝居も上演されました。


3)「近くを掘り下げる」食のまつり*

地域の「酒・食・歴史・花」文化を伝えよう―文化の伝承者を自認する主催・協力者がもっとも考えたのは、深谷横瀬のまわり、近くにあるもののよさを再発見して、近くの、または日本酒に惹かれてやって来る遠くの人々に提案しようという試みでした。

この三点は、そのまま第二回のテーマとして再確認されています。

予想以上の来場者があり、ひとまずは成功と思う第一回の最大の反省。五月第二週の開催の在での開催のため、コバエが多くて「漬物BAR」などいくつかの催しを中止せざるをえなかった開催期をハエはまだの四月に移し、さらに多くの<食の表現者>がこの時期、埼玉県北ならでのまつりにしようとわざと考えをしぼりました。

 だから、

「ここにあるものでここの人々がつくるここだけで感じられる〈のみたべ〉まつり」*
今年も春、だいたいひと月早まった「よこぜ、いこーぜ」。

おいしい・楽しいがいっぱいの北の「在=いなか」が、ワサワサしてご来場をお待ちしています。

 ●日時:4月21日(日)
午前10時から午後4時
●会場:丸山酒造、リーフ、華蔵寺

 ●主催:「金大星蔵びらき」事務局

丸山酒造内 深谷市横瀬1323
電話
048-587-2144
●企画協力:風土飲食研究会

●後援:深谷市

【近くのおいしい21出店】

1)丸山酒店(横瀬)
「酒、飲料、食品販売、日本酒のみくらべ(ノミクラーベ)」
2)深谷のもやし屋飯塚商店(新井)「深谷もやしのつかみどり、深谷もやしナムル、発芽大豆の塩茹で、もやし栽培キット販売」
3)マルツ食品(岡部)「漬物バー、究極の漬物茶漬け、たけうめチュッチュ」
4)うどん茶屋三男坊*(宿根)「筍と野蒜、もやしの天ぷら、どじょうや沢がにの活き揚げ、手打ちうどん実演販売」
5)天之美禄(熊谷)「丸山酒造の日本酒を使ったオリジナルカクテルバー」
6)とうふ工房(大谷)「在来大豆で作った豆腐、金大星の酒粕に漬けた豆腐の粕漬け、豆腐だけでこねた白玉団子」
7)富士屋(仲町)
「サンドウィッチ、創作パン」
8)パンチャ・ピエーナ(宿根)
「Fukaya-Italianoの漬物アンチパストミスト(前菜)、酒粕グラタン、金大星ゼリー」
9)宝屋(戸森)「宝屋特製、子豚の金大星丸焼き」
10)やまだ家(田谷)
「酒の味を活かした創作和食惣菜」
11)スタンド割烹三善(西島)「ネギ串カツ、たけのこご飯」
12)深谷4H
「深谷の若手農家による軽トラ野菜販売」
13)荻野農園(横瀬) 「やきそば、野菜販売」
14)グッドラック(新戒)
「革製品販売、レザークラフト体験」
15)酒蔵いさむ(下手計)
「たこやき」
16)澤田園(深谷)「抹茶と和菓子のセットで野点、最中アイス販売」
17)栗田農園(横瀬)「野菜販売」
18)Sプロジェクト 「民芸品」(東京日本橋)
19)風布にじます釣り堀センター(寄居)「つかみどり、塩焼き&から揚げ、金大星の酒粕を使った粕漬け販売、借金なし大豆もやしと粕漬けを使ったチャンチャ
ン焼き販売」
20)cafe  NINOKURA(本庄)「仕込水コーヒー〈金大星スペシャル〉、茹で塩豆、大豆おにぎり、酒粕お菓子、蕗など季節のおつまみ、〈いらず〉いらず小市」
21)利根川HAN-RUN軍(本部江原)
「掘り立てたけのこ直火焼き販売」

 【近くの楽しい10パフォーマンス】

1)*ミルクおやじ*(東方)「即興ライブ」、
2)*ミック入来*
(川崎からのゲスト)「野菜ロックのライブ」、
3)*こたつじゃっく*(埼玉県北)「アコースティックライブ」
4)*こまどり社*(東方)「即興パフォーマンス」
5)*深谷書道ガルボイズ*「食をテーマに書道パフォーマンス」
6)*埼玉工業大学*
(普済寺)「フレアーバーテンディング」
7)*丸山酒造*(横瀬)「酒蔵見学、どじょうつかみどり、がらがら抽選会」
8)*鶴田健次*(岡部)「わさび漬け実演」
9)*風布にじます釣り堀センター*「にじます解体ショー&にじます刺身サービス」
10)*飛び入り酔客*「日本酒へのラブレター」(日本酒を語る言論コンテスト。参加者は当日受付)

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…いかがでしょうか。各出店者の出し物をみても既存の食のイベントとはかなり趣が異なります。

どれだけ美味しいか、

どれだけ儲かるか

どれだけ人を集められるか

とは別に、各出店者が「金大星蔵びらき」で伝えたいものは何なのか。当日会場で感じ取っていただければ幸いです。私はそれが今一番大事なものでないかと思ってます。