みなさま今年もよろしくお願いします。
もやし組合(工業組合もやし生産者協会)に非加盟の私ですが、それでも時々同業者、関係者より現在の国内のもやし業界事情を聞きます。正直あまり良い知らせはありません。主要原料である中国産緑豆の高騰が常態化し、そこに円安が追い打ちをかけます。電気代も皆様がよく知る理由で昨年上がりました。そして肝心のもやしの卸値ですが、皆様がよく使う200gの小袋で10~15円、業務用で1kgあたり60~90円ほどが現在の相場でしょうか。まったく高コストが売値に転嫁できていない状況です。
そのような価格帯ですと当然
「安い分、量を売って売上高を維持」
せざるを得ないわけで、そこでもやし屋同士の熾烈なシェアの奪い合いが始まります。既存で一袋15円で仕入れているスーパーのもやし売り場をとりたければ当然それ以下の価格を提示しなければなりません。仮に12円と持ちかければ、それならばお宅にしましょう、とスーパーのバイヤーは決して言いません。じゃどうするか?
「今度は現在取引しているもやし屋にその価格を提示して相見積もりを取らせる」
わけです。最近はスーパーも複数のもやし屋さんと取引しているので、3社での競合をはかることもあるでしょう。今もやし売り場にあるあの「19円(それ以下)」はそういう価格なのです。
私の好きな特撮ドラマ、ウルトラセブンの主人公モロボシ・ダン風に言わせてもらえばまさに
「血を吐きながら続ける悲しきマラソン」
から吐き出された価格です。農薬も肥料も使わない正しき生鮮食品、もやしが買いやすい価格であるのは良い事であると思いますが、19円というのはあまりに異常です。20年前の半値ですから。もやしは青果売り場でもおおきなフェイスをとり山積みにされています。お客さんは、その19円もやしをポンポンと買い物かごに放り込みます。私たちはお客様なくては成り立ちませんが、今の私は正直申しますと、何も考えずに安さだけを求めて買っていくお客さんにも怒りと悲しみを覚えます。
「もう少しもやしを作る人のことを考えてくれ」と叫びたくなります。
残念ながらこのような状況下でも、どのもやし屋さんも「なんとかしよう」「この状況を打開しよう」と打って出ていません。耳にするのはもやし屋という商売を捨てる、もしくは潰れるという話ばかりです。現在大半のもやしメーカーを延命させている唯一の希望が「カット野菜」事業ですが、それもさらなる大資本の参入、そして価格競争の道具に使われ、もやしと同じ運命をたどるでしょう。TPPの結果次第では海外の企業によるカット野菜の参入もあるでしょうから。
未来、もやしがその在るべき価値とともに復活することはあるのでしょうか。
もう一度もやしの価値を見直し、私たち業界が生活者にその無限の可能性の理解を促し、適正価格を含めた、日本のもやしは日本国民とともにあるという意識を共有していく、そんな指針を打ち出すしかない気がします。

これは埼玉県産在来大豆「借金なし」をもやしにしたものです。一本一本手収穫しています。現在、新宿伊勢丹様、丸正飯塚様で購入できます。今月より八王子の自然派くらぶ生協様のアイテムに加わります。

これは東京都檜原村の貴重な東京在来大豆「鑾野(すずの)大豆」のもやしです。今月檜原村の学校給食の導入が決まっています。

深谷の「雷文」という居酒屋が「借金なし大豆もやし」をさっくりと揚げてくれました。サクサクふわふわな食感が気持ちよく、最高のおつまみであり、子供のスナックになります。こんなもやし料理もあるのか、と驚きました。


三國シェフの下で修行を積んだ方が開発した、ブラックマッペもやしをつかったデザートです。
もやしがこれほどデザートに向いているとは思いませんでした。足利市のレストラン、パティサリー「ル・クール」でいただけます。

同じく「ル・クール」ではアペリティフ(食前酒)にブラックマッペもやしの酵素ジュースを白ワインで割ったカクテルが供されました。誰も知らないまったく新しい美味しさです。
多くの人がもやしの価値を理解することで、もやし生産者の考えを超えた、新たなもやしの可能性が次々と生まれます。私は、
もやしの未来はもはやここにしかない、
と断言します。